人間界に竜が現れ、世界の均衡が崩れるという世界観。
冒頭、2匹の竜が共食いを始める。つかみの演出はド派手。
しかし、多くのジブリ・ファンはここでつぶやいた。
「やっぱり息子やから絵はヘタやなあ」
そこから主人公アレンの苦悩へと移っていく。
追いつめられ、逃げ場の無くなった彼は、こともあろうに、国王である
父の懐に飛び込み、刃をつきつけた。論議を巻き起こした「父殺し」だ。
ここで再びジブリ・ファンはつぶやいた。
「監督はやっぱりお父さんのことが嫌いなんやろか?」
年老いたゲドが旅を続けている。偉大な魔法使いみたいだが、今は半分
隠居しているような感じで、これといって活躍する様子もない。
悩めるアレンと同行することになるが、悟りの境地に達しているゲドは
あれこれ指示するわけでもなく、若者を見守っているよう。
やたら食事するシーンが多いのが印象的。が、その道中をしばらく
見守っていたジブリ・ファンもそろそろしびれをきらしてきた。
「じいさんばっかりで、全然かわいくないぃぃ」
まっくろくろすけを期待していたんなら、その期待は完全に裏切られる。
当然、総じての印象・感想はこうなってくる。
「これ、ジブリとちゃうやん、息子が看板を利用してるだけとちゃうの」
実際、ジブリの看板もあって大ヒットしている。
ただ、携帯ストラップにぶらさげられるようなキャラクターがないだけに、
ジブリのキャラクターグッズ部門の売り上げは期待できそうにないだろう。
思うに、大衆がスタジオジブリに期待しているものって何なんだろう?
かわいいキャラ、感動、主人公の成長、美少女・・・
いずれにせよブランドが大きくなりすぎたために求められる要素は
多岐に渡っているんだが、今回の賛否まっぷたつの作品評はその人が
「ジブリの新作」に何を期待しているか、によって分かれるところ
ではないだろうか。
私は、あえて、何も求めなかった。
気になったのは鈴木敏夫プロデューサーが次世代を育成するにあたって
一番話題性のある、一番現実味のある人線を選んできたという点。
作品というよりはむしろビジネスプラン的な見地で、その判断がどうだったか、
が興味の対象だった。原作もよく知らないし、どこをどう省略したか、
気になることはない。そう思って観るとこの映画、なかなか面白く思った。
素人監督だからこそ、あえて直球勝負、ストレートにメッセージを
伝えようとする姿勢は最近のジブリ作品に欠けている新鮮さだろう。
私は、あえて、好意的にフォローしたい。
「絵がヘタやなあ」は、ヘタなのではなく、昔風、それこそ父・駿が
若き日に手掛けた懐かしの東映動画時代のテイストではないか。
そして、随所に散りばめられた駿テイストのシーン。
カリオストロのラストまんまのシーンが出たときには声をあげてしまった。
父がある関係者に「あいつはこんなにまでオレの作品を観ていたのか」と
漏らしたそうだが、それが父にとって一番の驚きだったことだろう。
息子は知らず知らずのうちに父親の背中をみて育つ・・・
これは息子・吾朗が「父殺し」ではなく「父への愛」を込めて作った
メッセージではないだろうか。
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