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シネマライナー

ゲド戦記   06/07/29 放送

人間界に竜が現れ、世界の均衡が崩れるという世界観。
冒頭、2匹の竜が共食いを始める。つかみの演出はド派手。
しかし、多くのジブリ・ファンはここでつぶやいた。
「やっぱり息子やから絵はヘタやなあ」
そこから主人公アレンの苦悩へと移っていく。
追いつめられ、逃げ場の無くなった彼は、こともあろうに、国王である
父の懐に飛び込み、刃をつきつけた。論議を巻き起こした「父殺し」だ。
ここで再びジブリ・ファンはつぶやいた。
「監督はやっぱりお父さんのことが嫌いなんやろか?」
年老いたゲドが旅を続けている。偉大な魔法使いみたいだが、今は半分
隠居しているような感じで、これといって活躍する様子もない。
悩めるアレンと同行することになるが、悟りの境地に達しているゲドは
あれこれ指示するわけでもなく、若者を見守っているよう。
やたら食事するシーンが多いのが印象的。が、その道中をしばらく
見守っていたジブリ・ファンもそろそろしびれをきらしてきた。
「じいさんばっかりで、全然かわいくないぃぃ」
まっくろくろすけを期待していたんなら、その期待は完全に裏切られる。
当然、総じての印象・感想はこうなってくる。
「これ、ジブリとちゃうやん、息子が看板を利用してるだけとちゃうの」
実際、ジブリの看板もあって大ヒットしている。
ただ、携帯ストラップにぶらさげられるようなキャラクターがないだけに、
ジブリのキャラクターグッズ部門の売り上げは期待できそうにないだろう。

思うに、大衆がスタジオジブリに期待しているものって何なんだろう?
かわいいキャラ、感動、主人公の成長、美少女・・・
いずれにせよブランドが大きくなりすぎたために求められる要素は
多岐に渡っているんだが、今回の賛否まっぷたつの作品評はその人が
「ジブリの新作」に何を期待しているか、によって分かれるところ
ではないだろうか。

私は、あえて、何も求めなかった。
気になったのは鈴木敏夫プロデューサーが次世代を育成するにあたって
一番話題性のある、一番現実味のある人線を選んできたという点。
作品というよりはむしろビジネスプラン的な見地で、その判断がどうだったか、
が興味の対象だった。原作もよく知らないし、どこをどう省略したか、
気になることはない。そう思って観るとこの映画、なかなか面白く思った。
素人監督だからこそ、あえて直球勝負、ストレートにメッセージを
伝えようとする姿勢は最近のジブリ作品に欠けている新鮮さだろう。

私は、あえて、好意的にフォローしたい。
「絵がヘタやなあ」は、ヘタなのではなく、昔風、それこそ父・駿が
若き日に手掛けた懐かしの東映動画時代のテイストではないか。
そして、随所に散りばめられた駿テイストのシーン。
カリオストロのラストまんまのシーンが出たときには声をあげてしまった。
父がある関係者に「あいつはこんなにまでオレの作品を観ていたのか」と
漏らしたそうだが、それが父にとって一番の驚きだったことだろう。
息子は知らず知らずのうちに父親の背中をみて育つ・・・
これは息子・吾朗が「父殺し」ではなく「父への愛」を込めて作った
メッセージではないだろうか。




時をかける少女   06/07/29 放送

スタジオジブリの次世代として白羽の矢が立てられ、
実際『ハウルの動く城』の監督として動き出していた人物。
しかし、御大が「オレの方がもっと面白い映画を作れる」と
言ったかどうかは定かではないが、とにかく宮崎駿が“動いた”ため
その計画が空中分解し、結果的に個人として創作活動を続けていくことに
なった人物・・・・・・・・それがこの映画の監督、細田守氏だ。

分かる、なぜ次世代の白羽の矢が立てられたか、よく分かる。
登場人物の何でもない動き、日常の風景描写に「吸引力」があるのは確か。
とくにヒロイン真琴の存在感は、厳然と残る原田知世の存在感を肯定も
否定もせず、観客を新たな領域に引き込むだけの力を持ち合わせている。
そしてあの躍動感!
これは宮崎アニメとは似て非なるもので、細田ブランドの象徴となりうる
可能性を感じさせるところだ。
(宮崎アニメの場合、静と動の“動”は大塚康夫によるところが大きいのだが)
そしてタイムワープという概念が明らかになってきた頃からこの映画は
俄然、輝きを増してくる。コンビニ感覚でできる時間移動。それに伴い
時制が複雑になってくるが、見事に構成された脚本が理解度をカバーする。
うまい。気持ちいい。
この手のタイプの映画は「アニメでなくても実写でエエやん」と言われる
ことが多いが、本作は「アニメでしかできない」映画ではないだろうか。

後日、細田監督にインタビューした。
CGの進化によって実写がアニメの方向に向かうことができるようになり、
逆にアニメは実写の方向に移行してきている、という話は興味深かった。
インタビュー時間以外でなんとなく意気投合。
もちろん、ジブリ話も聞きたかったが、なかなか語ろうとしてくれないと
いう噂。それでも何とかがんばってジブリ話、宮崎アニメ論を展開しようと
努力したんだが、みなさんには伝わっただろうか?
まぁ、これだけはさすがに、口が裂けても言えなかったけどね・・・。
「監督がもしタイムワープできるなら、どこの時点に戻りたいですか?
えっ、やっぱりハウルの企画に関わるちょっと前あたりですか?」