ティーンエイジ・ラプソディーズ /第十一回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう




出 演
坂本夏樹…橋詰優子
結城美咲…山本モナ
常盤翔太…長嶋賢一朗
菊池善夫…柴田 博
竹下智哉…上田剛彦
中野ユリ子…高野直子
老婆…赤江珠緒
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テーマ音楽。

夏樹「(独白)私、坂本夏樹、聖林高校一年生で野球部のマネージャー。我が聖林野球部は、甲子園めざして、海に近い小さな町のスポーツセンターで合宿を行っていた。その合宿も中盤を迎えたある晩、町では夏祭りがにぎやかに催された」



花火の音。

美咲「うわー、花火、きっれーい!!」

夏樹「美咲、合宿と夏祭りが重なるなんて、めっちゃラッキーやね」

美咲「ほんま、合宿の疲れがとれるなぁ……。あ、夏樹、また上がったで! たっまや〜!」

夏樹「あれ? 藤本監督と三宅先生も花火見てるわ。久しぶりの自由行動やもんね。皆楽しんでるんやわ」

美咲「ぐさっ。夏樹ぃ〜。藤本監督との恋に破れた乙女のハートに塩を塗る気ぃ〜?」

夏樹「あ、いや、ごめんごめん。あの、美咲、ほら夜店も出てるで。こっちこっち。この神社の参道沿いにようけ並んでるわ。な、な、あの綿飴食べへんか?」

夜店のざわめき。

老婆「いらっしゃい」

夏樹「お婆ちゃん、綿飴二つ」

美咲「一つは大盛りにしといてな」

老婆「はいはい、おまけしといたげるよ」

夏樹「お婆ちゃん、それにしてもたくさんの人ですね」

老婆「ああ、毎年この時期は、あっちこっちの高校の野球部がこの辺りに合宿にやってくるからのう。町の人口が倍くらいになるんじゃ。はい、綿飴二つ」

美咲「ありがとう、お婆ちゃん」

老婆「あんたらも野球部じゃないのかね?」

夏樹「はい、聖林高校です」

老婆「若い人たちが来てくれると、町に活気がでてええ。じゃが、中には羽目をはずしすぎて、ため池に飛び込んだりして怒られる人もおるんじゃ」

夏樹「えー!? そうなんですかぁ?」

老婆「危ないからのう。あんたらも気ぃ付けなさいよ」

美咲「お婆ちゃん、私たちは大丈夫やて」

老婆「そうかそうか。ところで、あんたらも甲子園とやらをめざしておるんかいの?」

夏樹「はい!」

老婆「若い時分に目標があるっちゅうのは、ええことじゃ。がんばんなさいよ」

神社参道のざわめき。

善夫「お、結城と坂本やないか」

夏樹「あ、菊池君」

善夫「綿飴なんか買って……。太るでぇ」

美咲「うるさいわ! もう太ったってええねん、ヤケ食いや!」

善夫「いや、そのゴメン……」

夏樹「まあまあ、今夜は祭りやし、みんなで楽しも! あれ? いつも一緒の常盤はどうしたん?」

善夫「うん、なんかな、合宿所に電話がかかってきて、今夜は別行動するって言ってた」

夏樹「別行動?」

善夫「まあ、監督から自由時間もろたわけやから、どう使ってもいいもんなあ」

夏樹「ふ〜ん」

美咲「謎の行動か……。常盤君ってなんかミステリアスなところがあるよね。そこが女の子にはたまらないのかも。な、夏樹」

夏樹「な、何よ、美咲。何で私を見るのよ」

善夫「ところでさ、この先の神社の境内でフォークダンスやってるんだって。知ってたか?」

美咲「フォークダンス?」

善夫「うん。盆踊りには早いけど、せっかくあちこちから高校生が集まってるんやから、ダンス踊って交流深めようやないかって、町の青年会が毎年開いてるんやて」

夏樹「へえ……」

善夫「女子も結構来るらしいから……」

美咲「はは〜ん。菊池君はそれが目当てやな」

善夫「違う、違う! 自分らも行けへんかな思って誘ってるんやんか」

美咲「夏樹、どうする? 面白そうやんか」

夏樹「うん……」

善夫「良かったらおいでぇな。星野も坪井ももう行ってるから、俺、先行くわ。ほな、またな」

美咲「うん! あとでな! ……よし! なんかまたファイト湧いてきたでぇ! ひょっとしたら、新しい運命の出会いが待ってるかも知れん!」

夏樹「美咲ったら……。むちゃくちゃ立ち直りが早いなぁ……」



智哉「夏樹! 夏樹やないか!」

夏樹「智哉君!」

美咲「智哉君やんか! どうしたの? こんなところで会うなんて」

智哉「お、美咲ちゃんも一緒かぁ。いやな、毎年、暁星高校もこの近くで合宿するんや。うれしいなあ、夏祭りやったら、夏樹と会えるかも知れんって思ってたけど、ほんまに会えるなんてな」

夏樹「あ……う、うん、そうやねぇ」

智哉「合宿、どんな具合?」

夏樹「うん。日差しは暑いし、洗濯物は臭いし、もうたいへんやわ」

美咲「智哉君の方はどうなんよ?」

智哉「うちか? そりゃ、練習きついで〜。この前、聖林高校と練習試合したやろ。あのあと、うちの町田監督、また厳しなって。聖林高校は想像以上に強敵やった、甲子園めざすためにはもっとレベル上げないかん言うて、そりゃもうハードやで」

夏樹「聖林が、あの鬼監督に認めてもらえたってことやね」

友人「竹下ぁー! 何してんねん? そろそろ行くでー!」

智哉「お、おう! ……じゃあ、夏樹、残念だけど、もう行くわ。また会おうな(去る)」

美咲「……ちょっと、夏樹。智哉くんのこと、どうすんのよ」

夏樹「うん……」

美咲「付き合って欲しいって告白されたんやろ?」

夏樹「う……ん」

美咲「夏樹……。もしかして、常盤君のことが気になってるんとちゃう?」

夏樹「ち、違うわよ! なんであいつのことなんか……」

夏樹「(独白)嘘だった。常盤への思いは、親友の美咲にも、まだ言えないでいた。本当は、せっかくのお祭りに、あいつはどこで何してるんだろうって、そればかりを考えていた」

ユリ子「あらあ、お二人おそろいで。今夜はとってもすてきな夜よねぇ」

美咲「げ! 中野ユリ子!」

翔太「よお」

夏樹「常盤!!」

美咲「常盤君も一緒に! あんたらここで何してんのよ! 二人して!?」

ユリ子「決まってるじゃない、デートよ、デート。ね、翔太君」

翔太「やめろや、中野。そんなんとちゃうやろ」

ユリ子「またまた照れちゃって、ふふふ。実はね、すぐ近くにうちの別荘があるのよ。練習で疲れてる翔太君にくつろいでもらおうと思って、迎えに来たのよ。そうだ、お二人も、ぜひ今度遊びにいらしてね。歓迎するわ」

美咲「結構です!!」

ユリ子「あら、残念ねぇ。それじゃ、私たちはお邪魔みたいだから、これで失礼するわ。行きましょ、翔太君」

翔太「ああ……(去る)」

美咲「何あれ? 超むかつく! あれ? 夏樹、顔色が悪いよ」

夏樹「美咲……。ゴメン、私、ちょっと……」

美咲「夏樹、どこへ行くの? 夏樹!」

夏樹「(独白)私は、何をしようとしてるんだろう? 二人が人ごみに消えていく所を見て、衝動的に後を追ってしまった。夏空を彩る花火が揺らめいて見える。頬を涙が伝っていた。その時、不意に、誰かに腕をつかまれた」



智哉「夏樹!」

夏樹「智哉君」

智哉「一人でどこにいくんや?」

夏樹「ごめん、離して」

智哉「夏樹」

夏樹「いやっ」

夏樹「(独白)強い力で腕を引かれ、私は智哉君の腕の中にいた」

智哉「この前の……電話の答えを聞かせてくれ」

花火の音。

智哉「夏樹、俺のことを……俺のことだけを……見ていてくれへんか」

激しく花火の音。
つづく



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