ティーンエイジ・ラプソディーズ /第十二回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう







出 演
坂本夏樹…橋詰優子
坂本陽太郎…清水貴之
坂本月太郎…赤江珠緒
結城美咲…山本モナ
常盤翔太…長嶋賢一朗
菊池善夫…柴田 博
竹下智哉…上田剛彦
中野ユリ子…高野直子
MediaPlayerで聴く
RealPlayerで聴く
シナリオを読む

※RealPlayerでお聴きの場合は、下記の絵が自動的に表示されます。



夏樹「(独白)私、坂本夏樹、聖林高校一年生で野球部のマネージャー。チームが合宿して いる町の夏祭りの夜、私たちはつかの間のオフを楽しんだ。そう、中野ユリ子と常盤翔太の二人連れに出会うまでは。衝動的に二人の後を追った私の腕を、幼なじみの智哉君がつかんだ。そして、抱きすくめられた」

花火の音。

智哉「夏樹のこと、小さい頃からずっと思ってた……」

夏樹「智哉君……」

智哉「夏樹に見てもらいたかったから、俺、野球も頑張ったんや。甲子園のマウンドに立つ時、夏樹にはスタンドで俺のことだけを応援しててほしいんや……」

夏樹「智哉君……放して」

智哉「いやや」

夏樹「私は暁星高校の応援はできへん」

智哉「それは、マネージャーやからか?」

夏樹「それだけじゃない」

智哉「え?」

夏樹「聖林高校に、好きな人がいるから……」

智哉「え……好きな人が?」

夏樹「うん」

智哉「それは……もしかして、常盤か? 常盤翔太のことなんか?」

夏樹「……」

智哉「夏樹……あいつと付き合ってるんか?」

夏樹「ううん、単なる片思い。……だけど、あいつのことが好きやねん。ごめん……」

智哉「そうなんか……常盤のことを……」

夏樹「智哉君……本当にごめんね……」

智哉「で、あ、あいつはどうやねん? 夏樹のこと、どう思ってるんや?」

夏樹「今は……野球のことで頭がいっぱいみたい……。それに……」

夏樹「(独白)中野ユリ子のことが頭に浮かんだ。常盤は、今夜、何で中野と一緒だったんだろう? 彼女のこと、どない思ってるんやろ?」

智哉「それに?」

夏樹「え? いや……何でもない……」

智哉「……うまく言えへんけど、今の夏樹、すっごい辛そうや。夏樹にはいつも笑顔でいて欲しいんや……」

夏樹「智哉君……ありがとう」

智哉「俺、あきらめないからな。常盤にも負けるつもりはないから。野球も、夏樹のことも……。引き留めてごめんな」

夏樹「智哉君……。お互い合宿頑張ろうね」

智哉「おう! じゃあな」

夏樹「(独白)いつのまにか花火は終わっていた。智哉君と別れて、私は夏祭りの人ごみの中にあいつの姿を探した。あいつ、常盤翔太の姿を……」

フォークダンスの音楽。

善夫「え!? 坂本が迷子になったって?」

美咲「うん。さっき常盤君と中野ユリ子が一緒におるのに会うてな。その後を追うように、いなくなってしもうたきりやねん」

善夫「このフォークダンスの会場には来てへんで。見かけてないもんなぁ」

美咲「どこ行ってしもうたんやろ……」

善夫「あっちの方にため池があって、フォークダンスで盛り上がったカップルが、そのほとりによう行くって聞いたけど、もしかしたら……」

静かに虫の声。



ユリ子「きれいな星空……。広い宇宙で翔太君と二人っきりみたいで、うれしい……」

翔太「中野、くっついてくるなよ」

ユリ子「何よ。人気のない所でって言ったのは翔太君の方でしょ。それで、私に話って何?」

翔太「ああ。前から、言わなあかんって思っててんけど……」

ユリ子「な……に?」

翔太「お前……俺はやめとけ……きついようやけど、はよ、よそに目を向けた方がええ」

ユリ子「翔太君!!」

翔太「俺は、お前のこと、いい奴やと思てる。……でも、それは、多分、好きって気持ちとは違う。そんな気持ちが変わることもないと思う」

ユリ子「いやっ! ……そんな、そんなこと言わないで!」

翔太「聞いてくれ。俺ん家は、お前んとこの援助でなんとかやっていけるようになった。親父と別れたお袋が、女一人でいままでやってこれたのは、中野家のおかげやと思ってる。感謝してる。……けど、正直言うてそれだけやねん。お前に対する俺の気持ちは……」

ユリ子「じゃ、じゃあ、坂本さんのことは? あの人のことはどう思ってるの?」

翔太「なんでそこに坂本が出てくんねん」

ユリ子「聞いてるのよ! 坂本さんはどうなの?」

翔太「あいつは……大事な仲間やな。甲子園に向かって、本気で一緒に走れる数少ない仲間や」

ユリ子「そんなの……答えになってない!」

急に虫の音が止む。

翔太「ん? ……誰かいるのか? そこにいるのは誰や!」

夏樹「あの、その、近くを通りかかったもんやから……」

ユリ子「坂本さん!」

翔太「坂本……」

ユリ子「……今の話、聞いてたの? 聞いてたのね! 話を聞いて、私のことを笑ってるんでしょう!」

夏樹「わ、私は何も……」

ユリ子「最低よ、立ち聞きなんて!」

翔太「中野! 止めろ!」

夏樹「ごめんなさい……。でも私、本当に何も聞いてないから!」

夏樹「(独白)常盤を探していた。中野とは何でもないことを確かめたかった。でも、偶然見つけた二人は……。いたたまれなくなって、私はその場から逃げ出した」

翔太「待て! 坂本、行くな! その先はため池や! 危ない!」

夏樹「(独白)月が蔭って真っ暗になった。その時、闇に踏み出した私の足が宙を泳いで……」

夏樹「きゃっ!!!」

池に落ちる音、溺れる夏樹。



翔太「坂本!!」

ユリ子「誰か、誰か助けて!!」

翔太「坂本! 今行くぞ!!」

池に飛び込む音。

善夫「どうした! 何事や!? あー!!」

美咲「きゃあ! 誰か溺れてる!!」

ユリ子「翔太君と、坂本さんが……」

善夫「何やて! た、助けるもん、何かないか!? 浮輪は! ロープは!」

美咲「あるわけないやんか!」

善夫「くそー! 翔太! 翔太! 頑張れ! 今、人、呼んでくるからな!」

翔太「うぉーい! 善夫かぁー!」

善夫「お、おう」

翔太「俺たちは大丈夫や。この池、めっちゃ浅い。足、立つわ」

善夫「はぁ〜」

美咲・ユリ子「良かったぁ〜」

善夫「力、抜けるがな……」

翔太「ほれ、坂本、岸まで歩けるか?」

夏樹「(水を飲んでいてむせる)」

翔太「ずぶ濡れになってしもうたな」

夏樹「ごめん……私のために……」

翔太「ええんや。せやけど、ボールに当たりそうになったり、池にはまったり、ほんまにお前は危なっかしいやつやな」

夏樹「(くしゃみ)」

翔太「お、風邪ひいてしもたかもしれんな。早く合宿所帰って、風呂入ろ」

夏樹「……うん。……なあ、常盤、ひとつ聞いてもいい?」

翔太「何や?」

夏樹「中野さんと何しゃべってたの?」

翔太「ああ……たいしたことと違う」

夏樹「何やの?」

翔太「何でか解れへんけど、お前のことを聞かれた」

夏樹「え? ……で、何て?」

翔太「甲子園って夢を追いかける仲間やって、言っといた」

夏樹「仲間?」

翔太「行こうな、甲子園」

夏樹「う、うん」

夏樹「(独白)溺れてしがみついた常盤の腕が逞しかった。岸まで私の肩を抱いてくれた常盤の体が暖かかった。……その晩遅く、私は人生始まって以来の高熱にうなされ、合宿所から家に、先に帰らされることになった」

陽太郎「あれ? 月太郎、お前、姉ちゃんの部屋の前で何してんねん?」

月太郎「あ、兄ちゃん。姉ちゃんがな、熱出て辛いはずなのに笑ってて……ほら」

夏樹「(独白)身体は辛かったけど、今は苦しさよりも、常盤があたしを仲間と認めてくれたことが嬉しかった。一緒に甲子園に行く…常盤と心をひとつにできることが嬉しかった。熱にうなされながらも、アルプススタンドの大歓声が聞こえるような気がした」
つづく



| abc1008.comTOP | アナパラ〜Oh!ラフィーキTOP〜 | アナウンス部TOP |