ティーンエイジ・ラプソディーズ /第十八回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう
出 演
坂本夏樹
…橋詰優子
常盤翔太
…長嶋賢一朗
竹下智哉
…上田剛彦
中野ユリ子
…高野直子
美川 健
…浦川泰幸
中園靖子
…中村智子
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テーマ音楽。
夏樹
「(独白)私、坂本夏樹、十九歳。高校時代好きだった野球部の元エース、常盤翔太とのファースト・キスは、薄暗いホストクラブの中で、苦いブランデーの味がした。無理やり唇を奪われたショックで逃げ帰った私に、もう一度店を訪ねる勇気は残っていなかった。常盤にいったい何があったのか? そればかり考えて、上の空の日々を送る私に、幼馴染の竹下智哉君から呼び出しの電話がかかった」
喫茶店の風景。
店員
「いらっしゃいませ」
夏樹
「智也君、ごめん。待った?」
智也
「よお! 夏樹」
店員
「ご注文は何にいたしましょうか?」
夏樹
「あ、じゃあ、アイスレモンティーください」
智哉
「あ、俺もコーヒーおかわりください」
店員
「かしこまりました」
夏樹
「どうしたの? 急に電話なんかくれて……」
智也
「ああ……。その……夏樹が元気がないって聞いて……。一度、お茶でも飲んで話さなあかんなって思てたんや」
夏樹
「……美咲やな」
智也
「まあ、そんなとこや」
夏樹
「元気……ね。確かに、これっぽっちもないかも……」
智也
「常盤が……ホストクラブにおってんて?」
夏樹
「うん……」
智哉
「会えたんか?」
夏樹
「うん……」
智哉
「いやなとこ、見たんか?」
夏樹
「……う……ん」
智也
「夏樹、何て顔してるんや。これには、きっと深い訳があるんや」
夏樹
「私だって、そう思いたいけど……」
智也
「夏樹、俺はあいつやからこそ、お前を諦めたんやで。他の誰でもない、常盤翔太やからやぞ」
店員
「お待たせいたしました。アイスレモンティーにホットコーヒーでございます」
智哉
「……あ、ありがとう」
店員
「ごゆっくりどうぞ」
智哉
「……あいつが、試合に負けたからってだけで失踪して、ホストになったとはどうしても考えられへん。あいつはそんな弱い男と違う」
夏樹
「せやけど……」
智也
「あほ、そんな顔するな。前にも言うたやろ? 俺はお前が笑ってる顔を見るのが一番好きなんや。常盤のことは、時間をかけて話せば、きっと元に戻ってくれるはずや」
夏樹
「智也君……」
智哉
「頑張るんや、夏樹。皆、あいつのこと心配してるけど、今、あいつと心底話せるのはお前しかいないと思う」
夏樹
「……解った。高校時代の部活思い出して、もうちょっと頑張ってみる。なんか少しやけど、元気出てきたな(笑い)」
智也
「よっしゃ、その笑顔や」
夏樹
「(独白)智也君の言葉に励まされ、私は、再び、常盤のいるホストクラブ『ルパン』を訪れた」
ホストクラブのざわめき。
美川
「いらっしゃいませ。あら! あなた、一週間ぶりじゃない?」
夏樹
「この前はどうも……」
美川
「こちらこそ。ショウが何か失礼なことしたみたいで。二度と来ていただけないかと思ってたわ」
夏樹
「いえ、そんな……」
美川
「もうショウなんてやめときなさい。うちの店には、他にもいい子がたくさんいるのよ。アキラは若手のホープだしぃ、タケルはこの世界には珍しく……」
夏樹
「いえ、今夜もショウさんを指名させてもらいます」
美川
「ええ!? いいの? でも、ショウは、今夜も他の指名が入ってるから、お待たせすることになるけど……」
夏樹
「結構です」
美川
「ショウばっかり何でモテるんだろうねぇ(苦笑い)。あ、そういえば、今夜は、もう一人、ショウの知り合いだっていうお客様が待ってるわ。彼女も時々、ショウに会いに来るのよ」
夏樹
「え? どこですか?」
美川
「えっと、あ、ほら、あの奥に座ってる彼女よ」
夏樹
「え? ……あ! 中野さん!」
夏樹
「(独白)奥の席には中野ユリ子の姿があった。かつて、同じように常盤翔太を思い、恋のライバルだった中野ユリ子。彼女と目が合った瞬間、この人も私と同じ気持ちなのだと直感した」
ユリ子
「久しぶりなのに、とんでもない所で、お会いしてしまったわね」
夏樹
「中野さん、どうしてここに?」
ユリ子
「実は、このお店、祖父の会社が経営しているの。それで、いろいろ情報が入ってきて……。翔太君のことを知ったの……」
夏樹
「いつ頃のことなの?」
ユリ子
「三ヶ月ほど前……。その時のショックは忘れられない……。翔太君……あまりにも変わっていて……」
夏樹
「私もや……」
ユリ子
「この三ヶ月間、今度こそ私が翔太君の力になる、私の力で元の翔太君にするんだって思って頑張ったけど……駄目ね……。翔太君は話もろくに聞いてくれないのよ……」
夏樹
「中野さん……」
ユリ子
「翔太君、あなたには、ちゃんと話すの?」
夏樹
「ううん。同じやわ。いくらこっちが真剣に話をしようとしてもあかん……」
ユリ子
「そう……あなたでも駄目なんだ。……何か私達、変よね。高校時代は、ライバルで、あんなにあなたが憎らしかったのに……」
夏樹
「正直言うと……私もや(苦笑い)」
ユリ子
「なのに、今は同じね……。翔太君のことで苦しんでる……」
夏樹
「同志……みたいやね」
ユリ子
「ホントよねぇ……」
中園
「あの、お話し中、ごめんなさい。ちょっとお席、御一緒させていただいてよろしいかしら?」
ユリ子
「はい?」
中園
「あなた達もあのホストを待ってるの? ショウとかいう」
夏樹
「え? ……ええ、そうですけど」
中園
「あなた達、ホストクラブに通うタイプに見えないんだけど、訳あり? あの彼とどういう関係なのかしら?」
ユリ子
「ちょっと、急に来て、失礼じゃありません? あなた、一体どなたなんですか?」
中園
「あ、失礼。怒らないでね。実は、私、こういう者なんだけど」
ユリ子
「曙新聞、中園靖子……新聞記者なんですか? でも、新聞記者の人が、どうして?」
中園
「あのショウとかいう彼に興味があるのよ。……ていうか、彼だけじゃなくて、彼と彼の父親に興味があるのよねぇ」
夏樹
「父親!? じゃ、もしかして野球の八百長疑惑のことで」
中園
「あなた、何か知ってるの!? 彼が……」
夏樹
「常盤は関係ないです。常盤は、野球を汚す事は絶対しません!」
中園
「ふぅ〜ん。……面白いわねえ。ぜひともあなたに、じっくり話を聞きたいわ」
夏樹
「嫌です!!」
女の悲鳴。
男
「おい! ここにショウとかいう奴おらんか!?」
美川
「お、お客様、ここは女性の方専用の社交場となっておりまして……男性の方は、ご遠慮いただ……」
男
「やかましい!! グダグダ言うとらんと、ショウとかいうのをさっさと出さんかい!」
グラス割れる音。
美川
「な、何するんですか! 乱暴は止めて……」
翔太
「俺がショウやけど、あんたら、俺に何か用か?」
男
「ほぉ、お前がショウか。お前、何か色々うちの組のこと、嗅ぎまわっとるらしいけど、痛い目にあわんうちに手ぇ引きや。ええな、俺らは一度は忠告したで。この忠告無視したら、どないなるか……。よう覚えときや!! ほな、邪魔して悪かったな」
扉が閉まる。
夏樹
「常盤! 一体、あの人達は誰やの?」
翔太
「お前には関係ない!」
夏樹
「でも!」
翔太
「はよ帰れ。ユリ子、お前もや」
ユリ子
「翔太君!」
夏樹
「(独白)一体常盤の身に何が起こっているのだろう? あの中園とかいう記者は常盤の何を調べているのだろう? そして常盤も、たった一人で、闇の世界の住人相手に、いったい何を調べ回っているのだろう? 不気味なブラックホールに常盤が沈んでいくような気がした。でもその謎を解かなければ、永遠に常盤は戻って来ない気がした。それならば……。私の中で、ある決意が生まれていた」
つづく
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