ティーンエイジ・ラプソディーズ /第二十回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう
出 演
坂本夏樹
…橋詰優子
坂本孝太郎
…藤崎健一郎
中園靖子
…中村智子
中野ユリ子
…高野直子
美川 健
…浦川泰幸
タケル
…島田 大
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テーマ音楽。
夏樹
「(独白)私、坂本夏樹、十九歳。常盤翔太のお父さんの八百長疑惑を調べ始めた私は、十年前のある試合をめぐって野球賭博グループと大阪キングスの選手が繋がっているという通報があったこと、そして、八百長の疑いをかけられた常盤のお父さんがチームを追われたことを知った。しかも、そのキングスの親会社は、かつての恋のライバル中野ユリ子のお祖父さんが経営する会社だった。私が彼女に話を聞くため出かける直前、うちの店に、予期せぬ訪問者がやってきた」
お好み焼き屋のざわめき。
孝太郎
「へい、モダン焼き二丁、お待ちどう! いらっしゃいませ!」
中園
「こんにちは。あの、坂本……夏樹さん、いらっしゃいますか?」
孝太郎
「夏樹ですか? ええ、じき出かけるみたいやけど、まだ家におりま。夏樹! お〜い、夏樹! お客さんやで! 店の方に来てはるんや!」
夏樹
「なんやの、お父ちゃん。私、もう行かな……あっ! あなた……あの時の……」
中園
「この前はどうも」
夏樹
「あ〜、あのちょっと、どうぞお上がりください。私の部屋に。さ、どうぞ」
中園
「ありがとう。じゃ、失礼します」
孝太郎
「(ヒソヒソと)おい、夏樹、どなたやねん? なんか、こう……インテリアっぽい美人やないか?」
夏樹
「それ言うならインテリやろ。もう、お父ちゃんには関係ない話やねんから、上がって来んといてよ!」
夏樹
「(独白)それは、常盤が働くホストクラブ『ルパン』で出会った曙新聞の記者、中園靖子だった」
夏樹
「どうして家が判ったんですか!?」
中園
「調べるのが私の仕事だもの(笑い)。種明かしするとね、聖林高校の卒業アルバムと名簿が手に入ったのよ」
夏樹
「困ります。急に家に来られても……。ホストクラブに通ってることは、父には内緒なんですから……絶対、黙っといてください!」
中園
「(笑い)解ったわ。言う通りにする。その代わり、この前ゆっくりお話できなかった分、じっくり聞かせてね」
夏樹
「何を聞きたいんですか?」
中園
「常盤翔太君のこと」
夏樹
「常盤の? 一体、あなた、常盤の何を追い回してるんですか?」
中園
「彼の父親が疑われた八百長事件。そういえば、彼も野球選手だったんだってね。甲子園まであと一歩というところで涙を飲んだ悲劇のエース……」
夏樹
「八百長選手の父親にホストの息子って面白可笑しく書きたてようとしてるんじゃないでしょうね?」
中園
「違うわよ。私は真実を追っているの」
夏樹
「真実?」
中園
「常盤君のお父さんは無実の罪を着せられたと思うのよ」
夏樹
「(独白)中園記者の話は驚くべきものだった。十年前に摘発された野球賭博グループが、その後も生き延び、今も大阪キングスの試合で八百長を仕組んでいる疑いがあると言うのだ。つまり八百長選手は別にいたのではないかと」
中園
「十年前、私達は八百長疑惑を報道したわ。でも証拠がなかった……。結果的に、無実の人を葬ってしまった可能性が高いのよ。……申し訳ないと思ってる。だから、今度こそ本当に、悪い奴を捕まえたいのよ」
夏樹
「私も! 私も、常盤のお父さんの無実を信じたい!」
中園
「じゃあ、取材に協力してくれる?」
夏樹
「(独白)私は、今までのいきさつを全て話した。大阪大会決勝直前、常盤のお父さんの八百長疑惑が暴露されたこと、その後、常盤が失踪しホストになっていたこと、常盤のお母さんに聞いた話、全てを話した」
中園
「(溜息)常盤君……随分傷ついたのね。そういえば、二年前の暴露事件もうちの運動部の記者が追っかけてるわ」
夏樹
「え?」
中園
「だって、あまりにも悪質じゃない。試合直前にああいう張り紙をするのは。もう少しで誰がやったか尻尾を掴めるって言ってたわ」
夏樹
「本当ですか?」
中園
「本当よ。判ったら、すぐに知らせるから。常盤君の名誉を挽回しなくちゃね」
夏樹
「ありがとうございます」
中園
「最後にもう一つ聞きたいんだけど、この男に見覚えないかしら?」
夏樹
「(独白)中園記者が取り出した一枚の写真には、見たこともない一人の目つきの鋭い中年男性が写っていた」
中園
「八百長事件の鍵を握る人物よ。西条と呼ばれてるの。野球賭博グループの一員で、十年前、大阪キングスのある選手と接点があったと通報された人物なの」
夏樹
「(独白)次の取材に行くと言う中園記者と別れた私は、中野ユリ子と待ち合わせた喫茶店に急いだ」
喫茶店の風景。
夏樹
「ごめんな、遅くなって」
ユリ子
「いいのよ。こっちも頼まれてたこと調べるのに時間がかかってたから」
夏樹
「で、どうやった?」
ユリ子
「うん。坂本さんには言いづらいことなんだけど…。八百長疑惑を持たれた時、球団では、試合に関わった選手全員の調査をしたんだけど、結局証拠が見つからなくてウヤムヤになってしまったの。でも世間の疑惑の目に何らかのケジメをつけなきゃ球団がもたないっていう役員会に押し切られて……翔太君のお父さんに辞めてもらうことになったそうよ……」
夏樹
「……ひどい。常盤のお父さんはスケープゴートにされたんやんか……」
ユリ子
「ごめんなさい。私も初めて知って……ショックなのよ。……お祖父様も、とっても申し訳なく思って、個人的に常盤家へ援助するようになったんですって」
夏樹
「そうやったの……」
ユリ子
「でね、一つ気になることが出てきたの。役員会で翔太君のお父さんを辞めさせろって主張した人達は、皆、当時の球団副社長の派閥だったのよ」
夏樹
「え? どういうこと?」
ユリ子
「つまり、ある特定の人達が翔太君のお父さんを辞めさせたがっていた……。そして、その時の球団副社長は、今、球団社長になってるのよ」
夏樹
「それは……ひょっとして、とんでもないことと繋がってるかも知れへんな……」
夏樹
「(独白)私は、今も大阪キングスの試合で八百長が仕組まれている疑いがあるという中園記者の話を伝えた」
ユリ子
「そんな! 本当だったら大変なことだわ……。お祖父様に言ってみる。今度こそ、徹底的に調べてもらってみる!」
夏樹
「あ、それから、この写真の人物を見たことないかしら?これも中園さんから聞いてんけど、その人、選手と付き合いのあった野球賭博グループのメンバーなんやて」
ユリ子
「……見たことある!」
夏樹
「ええ!?」
ユリ子
「どこでだったかなぁ……、ええっと……。思い出した! ルパンだわ! ルパンで、この人を見かけたことある!」
夏樹
「(独白)中野ユリ子の一言で、私達は早速、ルパンに向かった」
ホストクラブの風景。
タケル
「いらっしゃいませ。ああ、あなた達か。今夜もお目当てはショウかい?」
夏樹
「ええ……まあ……」
タケル
「ショウはまだ来てないなぁ。今晩あたり茜さんと同伴出勤かも知れしれないよ。なあ、たまには僕らのことも指名してよ。たっぷりサービスするからさぁ(下品な笑い)」
ユリ子
「あの、このお店、お客さんは女の人だけですよね?」
タケル
「まあ、だいたいそうだけど……」
ユリ子
「じゃ、この写真、見てもらえませんか? ここに映ってる人、このお店のホストですか? 誰なんですか? 私、この店で見かけたことあるんですけど、教えてください!」
タケル
「ええ!? 何だよ突然……。どれどれ……。あ、これ、西条さんだよ」
夏樹
「知ってるんですか!?」
タケル
「店長の友達。ホストじゃないけどね。時々、この店に遊びに来るんだ」
美川
「ただいま」
タケル
「あ、店長。お帰りなさい」
美川
「あら、お嬢さん達、いらっしゃい。今夜は、二人そろって来てくれたのね、嬉しいわ」
夏樹
「(独白)事件の鍵を握る人物、常盤の父親を陥れた張本人と親しい人物がこんな所にいたなんて……。私は、あまりの衝撃と恐怖に立ちすくんでいた」
つづく
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