ティーンエイジ・ラプソディーズ /第二十二回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう
出 演
坂本夏樹
…橋詰優子
常盤翔太
…長嶋賢一朗
美川 健
…浦川泰幸
西条
…小縣裕介
男
…岡元 昇
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街のざわめき、携帯電話の呼出し音。
翔太
「はい、常盤です」
美川
「(電話の声以下同じ)もしもし、ショウ! 大変よ! 大変なのよ!」
翔太
「店長! どうかしたんですか?」
美川
「な、夏樹ちゃんが、夏樹ちゃんがあいつらに誘拐されたのよ!」
翔太
「ええ! 何ですって!?」
美川
「あいつらよ! 西条の仲間よ! さっき電話がかかってきて、夏樹ちゃんを帰して欲しかったらショウに迎えに来させろって。組事務所で待ってるからって。あんたがいろいろ調べてた暴力団の事務所のことよ!」
翔太
「くっそぉ!」
テーマ音楽。
夏樹
「(独白)私、坂本夏樹、十九歳。常盤翔太のお父さんの八百長疑惑を調べていた私は、ついに事件の鍵を握る人物にたどりついた。それは、常盤が働くホストクラブ・ルパンの店長だった。店長の証言によって常盤のお父さんの無実がはっきりしたけれど、私は、八百長事件を仕組んだ野球賭博グループに誘拐されてしまった……」
男
「……そうなんですよ。ショウの奴を見張ってたら、このソファーでのびてる女が一緒にいましてね。なんか訳アリ風やったから、一人になった隙狙って、とりあえずさらってきたんですわ。ショウをおびき寄せる餌になるかな思って」
西条
「相変わらず強引な奴やな」
男
「へへへ……。まずかったですかね?」
西条
「いいや。これで、ワシらが本気やと、あの兄ちゃんにもよお解るやろ。……何か嗅がせたんか?」
男
「クロロフォルムをちょこっと。じき効き目が切れる頃ですわ」
夏樹
「……う……ん」
男
「お、気が付いたか」
夏樹
「……頭痛い。私……どないしたんやろ……。(ハッとして)こ、ここはどこや……?」
男
「よぉ、姉ちゃん。目ぇ覚めたか?」
夏樹
「あ、あんた……いつかルパンに怒鳴り込んできた……」
男
「嬉しいな。覚えてくれとったんかい」
西条
「そのおっかない顔は一度見たら忘れられへんもんな(笑い)」
夏樹
「……あ! あんたの方は……西条!!」
夏樹
「(独白)写真の男がいた! ルパンの店長を脅し、八百長事件に引きずり込んだ張本人、西条が目の前にいた!体中が震え出しそうになる恐怖と、私は懸命に闘っていた」
西条
「ほう。ワシの顔と名前を知ってるとは、姉ちゃん、ひょっとしてワシのファンとちゃうか? どや、この際、ワシの女にならへんか? ええ思いさせたるでぇ(下卑た笑い)」
夏樹
「ここはどこなんですか? 何で私、ここにいるんですか? 説明してください!」
西条
「お、えらい気の強い姉ちゃんやな。よっしゃ、まずあんたの立場を説明しといたろ。ここはな、ワシらの事務所や。ワシらはある事業をしとる。ところが、その事業の邪魔をしよる奴がおる。それが、ショウとかいうチンピラや」
夏樹
「常盤はチンピラなんかじゃありません!」
西条
「せやのう。姉ちゃんのええ男やもんな」
夏樹
「いえ、……それは違いますけど」
男
「違うことあるかい! でたらめ言うとると、タメにならんぞ!」
西条
「まあまあ……。とにかく姉ちゃんには、ショウに、もうワシらの仕事の邪魔をせんよう、言うてきかせてやって欲しいんや」
夏樹
「……そんなこと、私、できません!」
西条
「できへん? できへんかったらエラいことになるでぇ。そのかわいい顔に疵つけたくないやろ」
夏樹
「お、脅かすんですか?」
男
「ナメた口きいとるんやないぞ! ワシらやる言うたらマジでやってもうたるからな!」
内線電話が鳴る。
西条
「(受話器を取る)おお、ワシや。来たか。よし、この部屋に通せ(受話器を置く)。……ナイトがお姫さんを助けに来よったで。たった一人でなぁ」
夏樹
「えっ?」
西条
「姉ちゃんのええ男やがな。度胸あるっちゅうか、好きなオナゴのために我を忘れたっちゅうか……。ま、さっきの話、よろしく頼むで」
ドアの開く音。
西条
「歓迎するで、兄ちゃん」
夏樹
「常盤!!」
翔太
「(息を切らし)坂本! お前、大丈夫か!? 何もされてへんか?」
夏樹
「大丈夫や。せやけど、常盤、何で来たんよ……何でわざわざ危ない目に……」
翔太
「アホ! 放っとかれへんやないか!」
夏樹
「ゴメン……やっぱり、私、足手まといになってしもうた……」
翔太
「お前ら! その子は関係ない! 放したれ! 指一本触れるんやないぞ!」
男
「このガキィ! 口のきき方教えたろか!」
西条
「……兄ちゃん、ええか。うちの事務所には気ぃ短い奴が多いさかい、一度しか言わんから、よう聞きや。お前、ワシらの仕事のことをいろいろ嗅ぎまわっとるそうやけど、もう止めて欲しいんや。営業妨害や。迷惑なんや」
翔太
「……いやや言うたら?」
西条
「辛いことになるなぁ。まず、この姉ちゃんが事故に遭うかも知れん。あんたもただではすまんかも知れんなぁ。そんなこと、この姉ちゃんも望んでへんやろ」
夏樹
「私のことは気にせんといて! 常盤、早よ逃げて!」
西条
「健気やなぁ。あんたのこと思ってくれてるねんで。大切にせないかんのとちゃうか?」
翔太
「……卑怯者!! そうやって大阪キングスの選手達も脅して、八百長試合に引っ張りこんだんやな!!」
西条
「何やと?」
翔太
「最初は金目の物や女の人をあてがって手なずけ、いざとなったら今みたいに脅して言うことをきかす。お前ら、プロ野球を食い物にするダニや!!」
西条
「店長の奴、喋りよったな……」
翔太
「そうや、話してくれた。お前らのやり口を、何もかもな!」
西条
「……お前、何者やねん? ただのホストやないな? いったい何が目的やねん?」
翔太
「俺は、十年前、お前らの仕組んだ八百長試合の罪を着せられチームを追われた常盤茂雄の息子、常盤翔太や!」
男
「何ぃ!?」
西条
「常盤茂雄! あの男の……」
翔太
「俺は、この二年間、親父の無実を証明するためにいろいろ調べ回ってたんや。店長は言うてくれた。親父は無実やったって。今度はお前らの番や。お前らから八百長事件の真相を聞き出す番や!!」
夏樹
「……常盤!」
西条
「(哄笑)……おもろいこと言う兄ちゃんやで。ワシらから話聞き出すて。ドあほ!!(今までにない凄み)ワレ、自分の立場、解ってるんか?」
翔太
「な、何を!」
西条
「ワレを見くびとったわ。ワシらの仕事横取りしよるチンピラとばっかり思てた。せやから、ちょっと痛い目あわせて脅しとくだけのつもりやったけど、こうなったら、そうもいかん。おい! ドス持って来い!」
翔太
「……な、何する気ぃや?」
西条
「ワレ、どこまで知ってるんや? 話聞かせてもらうんはこっちの方やで。ドスにかけてもなぁ……」
男
「西条さん、持って来ました!」
西条
「おう」
夏樹
「(独白)西条が白木の鞘から抜き放った刃物は不気味に青白く光っていた。屈強な男達が三、四人、あっという間に常盤を取り囲み、彼の腕や肩や腰を押さえ込んだ。常盤は立ったままの姿勢で身じろぎもできなくなった」
翔太
「くそっ! 放せ! 放さんかい!」
西条
「知ってるでぇ。常盤翔太いうたら、親父に似て、ええピッチャーやったらしいなぁ。あと一歩で甲子園いうところで負けてしもたけど。……野球でやり残したこともあるやろに、一生野球のできへん体になりたいか? そいつの右腕をしっかり押さえとけよ!」
翔太
「よせ! 止めろ!」
夏樹
「止めてー!! 常盤の右腕に触らないで! 常盤の右腕は大切なんだから!」
男
「このアマ! 邪魔するな!」
翔太
「坂本!」
夏樹
「いや! 放して!」
男
「あっちいってろ!」
翔太
「止めろ! その子に手ぇ出すな!」
西条
「さあ、兄ちゃん、どこまでワシらのこと知ってるんや? 喋らんと、その大切な右腕にブスッといくで」
翔太
「誰が……誰がお前らの言いなりになるかい!」
西条
「何ぃー!?」
夏樹
「(独白)西条の目の色が変わった。私は、一瞬の隙を突いて、私を掴んでいた男の手を振り払った。刃物を構えた西条が、常盤の右腕に向かって突進した瞬間、私は二人の間に飛び込んだ」
夏樹
「翔太―!!」
ドスが刺さる音。
夏樹
「(一瞬呻き声)」
翔太
「夏樹!!」
西条
「しもた! ……女、刺してもた!」
夏樹
「……翔太の……翔太の右腕は……大切なんだから……。わ、私の……大切な……宝物なんだから……。だから……」
パトカーのサイレン次第に大きくなる。
翔太
「夏樹ぃー!!!」
つづく
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