ティーンエイジ・ラプソディーズ /第五回
原作/関根友実
脚本/広瀬弥生
演出/森脇義次
作画/かすみゆう
出 演
坂本夏樹
…橋詰優子
坂本孝太郎
…藤崎健一郎
坂本月太郎
…赤江珠緒
三宅玲子
…加藤明子
藤本卓也
…清水次郎
竹下智哉
…上田剛彦
町田慎吾
…堀江政生
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テーマ音楽。
夏樹
「(独白)私、坂本夏樹。聖林高校一年生で、野球部のマネージャー。毎日毎日部活が忙しいけど、あいつのおかげで私の弟、月ちゃんが出場する弁論大会に応援に行けることになった。あいつ、常盤翔太、野球部の新人投手で同級生。自己中でメッチャ、ヤな奴と思てたけど、ちょっとはええところがあるらしい。認めるのは、すっごくくやしいねんけど……」
野球部の練習風景。
夏樹
「藤本監督、三宅先生、そろそろ、私、試合の申し込みに行ってきます」
藤本
「お、もう行くか」
玲子
「あ、坂本さん、ちょっと、待って。はい、これが暁星高校に持っていってもらう資料と手紙よ。集合時間とかロッカールームの場所とか書いてあるからなくさないでね」
夏樹
「はい」
藤本
「向こうの監督さんに、くれぐれも失礼のないようにな」
夏樹
「はい」
玲子
「暁星の町田監督って、藤本先生が選手として甲子園に出場した時の恩師だった方なのよ」
夏樹
「へえ、そうなんですか」
藤本
「う、いや、恩師というか、監督としては、僕らを甲子園に連れてってくれたんだから、優秀な人だったんだけど……。とにかく厳格な人だったな」
夏樹
「げんかく?」
藤本
「ウム。上下関係とか、規律とかにとっても厳しいんだ。甘えや妥協はいっさい許されない。だから、悩みとかを打ち明けられるタイプの監督ではなかったね」
玲子
「あら、高校野球の監督って本来そういうものなんじゃないの?」
藤本
「(ムッとして)それはそうかも知れないけど……。でも、町田監督の厳しさは、氷のように冷たい厳しさなんですよ」
玲子
「へえ、私、会議とかで町田監督には何度かお会いしたことがあるけど、そうは見えなかったけどなあ。素敵な方だったわよ。ダンディーで」
藤本
「み、み、み、三宅先生は、ああいう年上の男がお好みなんですか!?」
玲子
「失礼ね! 率直な感想を言っただけでしょ!」
夏樹
「ちょ、ちょっと、監督! 先生!」
藤本
「う……。ああ、また熱くなっちゃったな。すまんすまん」
玲子
「私も。ごめんなさいね」
藤本
「とにかく、向こうの監督さんは厳格な人だから。くれぐれも失礼のないようにな」
玲子
「坂本さん、頼んだわよ」
夏樹
「はい! じゃあ、行ってきます!」
夏樹
「(独白)そんなわけで、私は暁星高校へ練習試合の申し込みに行った。この役を指名してくれたんが常盤翔太。そして、暁星高校のすぐ近くに月ちゃんの弁論大会の会場となっている宝船会館がある。早く用事済ませて、応援に行かな。それにしても、他の高校に入るって、ちょっと緊張するんよね……」
野球部の練習風景。
夏樹
「すんません。野球部の町田監督はどちらにいらっしゃるでしょうか……」
智哉
「あれ?」
夏樹
「え?」
智哉
「夏樹? 坂本夏樹とちゃうか!?」
夏樹
「あっ! もしかして竹下智哉君?」
智哉
「久しぶりやなぁ……。何年ぶりや?」
夏樹
「小学校卒業して以来……やんね。うわー、智哉くん、おっきくなったね」
智哉
「夏樹こそ……。変わったな」
夏樹
「そお? きれいになった?」
智哉
「あほ。そういうとこは全然変ってへんな」
夏樹
「智哉君、野球すごいんやてな、噂に聞いてるよ」
智哉
「いやいや。暁星は層が厚いしレベルが高いから、なかなか大変や。せやけど、何で、お前がここにおるのん? うちの監督に何の用事や?」
夏樹
「うん、実はね……」
町田
「こらあ! 竹下! 何、ぐずぐずしとるんだ! さっさと練習に参加せんか!」
智哉
「あ! 監督、すんません。実は、この子が監督のこと探してて……」
夏樹
「あ、始めまして。私、聖林高校野球部マネージャーの坂本夏樹いいます。練習試合の申し込みに参りました」
智哉
「(呟くように)え? 夏樹が野球部の……」
町田
「女子マネージャーだって……。(吐き捨てるように)甘えた奴だな。あいつも」
夏樹
「は? あいつって藤本監督のことですか?」
町田
「野球は男のスポーツだ。グラウンドに女が立ってても、百害あって一利なし!」
夏樹
「ちょっとぉ!」
智哉
「待て! 夏樹!」
町田
「竹下! 何をしとるんだ、お前は! とっとと練習に戻らんか!」
智哉
「はい。……失礼します!」
町田
「まったく! 女子が来るとすぐこれだ。選手は練習に集中せん。だいたい甲子園のベンチに女子マネージャーが座ることが許されてから、軽い気持ちで入部する女子マネージャーが増えたんだ」
夏樹
「わ、私はそんなつもりじゃありません!」
町田
「ほう、それじゃあ、お嬢さんはどうして野球部に入ったのかな?」
夏樹
「そ、それは……友達に誘われて……」
町田
「野球部に入るからには、さぞや野球のルールやセオリーにも詳しいんだろうね?」
夏樹
「うっ……そんなに詳しくは……」
町田
「ルールも知らないで、野球というスポーツに対して失礼だとは思わんのかね?」
夏樹
「……」
町田
「まあ、いい。試合、楽しみにしてるって、藤本に伝えといてくれ」
夏樹
「……負けませんから」
町田
「ん?」
夏樹
「うちのチームは負けませんから! 失礼します!!」
町田
「おい! 待ちなさい!」
夏樹
「(独白)悔しかった。一方的で、女子にチャンスすら与えようとしない言い方に腹が立った。最初からできる子なんて、最初から解ってる子なんておれへんやんか! 悔しくて、悔しくて、涙が出てきた……」
ざわつく弁論大会会場。
孝太郎
「全国弁論大会ジュニアの部、近畿地区予選……ここやがな、月太郎の晴れ舞台は。大きなホールやな。お、あっこに座っとるんは夏樹やな。夏樹! 夏樹!」
夏樹
「(あわてて涙を拭きながら)お父ちゃん! なんでここに? 店はどないしたんよ?」
孝太郎
「臨時休業や! 夏樹が応援に行くって言った時、月太郎、めちゃめちゃ嬉しそうな顔しとったやろ? それ見て、お父ちゃんも行ったらなあかんって、思たんや」
夏樹
「お父ちゃんったら……」
アナウンス
「続いての弁論は、エントリーナンバー二十三番、頓堀小学校六年生、坂本月太郎君です」
夏樹
「あ、月ちゃんや!」
孝太郎
「おおっ、月太郎!! 月太郎―!! いけ!! いてこましたれー!!!」
夏樹
「ちょ、ちょっと! お父ちゃん!」
商店街の雰囲気。
夏樹
「良かったなあ、月ちゃん。審査員特別賞やて。やっぱり月ちゃんはただもんやないね」
月太郎
「僕かて、最初からうまくできたわけやない。僕なりに頑張って努力したんやで」
孝太郎
「せやな、月太郎は、毎晩遅うまで弁論の練習しとったもんな」
夏樹
「努力かぁ……」
月太郎
「目標があるんや。そのための努力や。……いつの日か、最高裁判所の大法廷に立てたら、と思てる」
孝太郎
「え、裁判所? 月太郎、何か悪いことしでかす気ィか? 人様にご迷惑だけは……」
夏樹
「あほやね、お父ちゃん、月ちゃんの夢は弁護士になることやないの」
孝太郎
「べ、弁護士かいな。ああ、ビックリした。せやけど……そしたら店は、どないなるねんな」
月太郎
「陽太郎兄ちゃんがおるがな」
孝太郎
「う……陽太郎なぁ……」
夏樹
「それにしても今日は月ちゃんを見れて、ほんまに良かった」
月太郎
「何もかも常盤さんのおかげやね」
孝太郎
「親子三人で、こうして街歩くのも久しぶりやしな」
夏樹
「(独白)月ちゃんに教えられた気がした。野球のこと解らへんのやったら、解るように努力しよう。ルールも勉強しよう。運動生理学の本も読もう。選手のことも、もっと解るようにしよう。最初からできる子なんておれへん。せやけど、女の子でも野球に参加できるということを、あの監督に見せてやりたい。ふっと常盤翔太の笑顔が浮かんだ。彼に頑張って欲しいと思った。暁星高校との練習試合に絶対に勝って欲しいと思った」
つづく
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