| ざこば |
僕いつも思うんやけどな、旅ネタな、「ようよう上がりました、私(わたくし)が」やろ、俺人生の中で、15(歳)でこの世界入ったやろ、「わたくしが」言うのんだけしか言葉、使うたことがない。「ようよう上がりました」をどこで使う?15歳で意味も分からへん。「ようよう上がりました私(わたくし)が初席(しょせき)一番草(いちばんそう)でございます」なんやねん、これは!? |
| 米朝 |
(笑) |
| ざこば |
こんなん憶え、言うねんで。無茶苦茶やで。 |
| 小米 |
憶えないかん思うから、あたりまえや思うてるから憶えるんです。 |
| 米朝 |
そやけど、憶えとったさかい、未だに残っとるんや。 |
| ざこば |
ま、そうですけどね(笑)これ憶えるんやったら他にも憶えるもんはあった!!
ま、それは冗談ですけどね(笑) |
| 小米 |
僕は一つ目の『宿屋町』にね、8ヶ月ぐらいかかってるんですよ。 |
| ざこば |
うぉ〜 |
| 米朝 |
へぇ〜 |
| 小米 |
言葉の訛りを直さないかんし、憶えるのやらなんやらで。結局そのネタやったんが、4月に入門して、12月なんです。その後は3ヶ月もあれば上がってたんですが。 |
| ざこば |
そういう意味ではな、タテベン(旅もの)は難しいな。会話は「今日は」言うたら次だいたい「こっちお入り」や |
| 小米 |
それは今やさかい言えますけど、その時は分かりませんわ。 |
| ざこば |
普通の人はよう「あんなんよう憶えますな」言うけど、憶えられるよな。 |
| 小米 |
こっちは商売ですからな。 |
| ざこば |
これからは「難しいんです。憶えにくいんです」と言おう。 |
| 米朝 |
(笑) |
| 小米 |
「大変でっせって。8ヶ月かかりまんねんで」言うてね。 |
| ざこば |
そうそう。 |
| 聞き手 |
でもそういう意味が分からへんというのは消えていってもおかしくないような噺ですよね。 |
| 米朝 |
『上方噺』なんて活字になって載ってるけどね、あれを憶えようてなもんが次々現れてくるとは思わなんだね、私は。 |
| 聞き手 |
でも後継者もこうしていらっしゃいますしね... |
| 小米 |
(笑) |
| 聞き手 |
そんな笑うてる場合じゃないでしょ。 |
| 小米 |
あの、だから、その、『発端』の「ようよう上がりました」でもね、ちょっとずつ人間が変わったらね、リズムとか、間が変わってくるんやないかなと思うんやけど、だいたい一緒ですね。 |
| ざこば |
お経みたいなもんや。 |
| 聞き手 |
よく師匠が『口さばき』で間の取り方をと仰ってましたけど... |
| 米朝 |
あれはやっぱりやった方がええと思いますな。お客の前でやる、やらんは別として、あれを稽古するということ絶対プラスになる。世間の人はあんなもん憶えたってな、何の役にもたたへんけど(笑) |
| 小米 |
あんなんね、普通の家では稽古出来ないですよ。やかましい言われて。 |
| ざこば |
このリズム、ドラマーでも難しいんやて。(実演) |
| 小米 |
我々これ1ヶ月でやりまんのにね〜 |
| 米朝 |
無理なリズムかも分からんな。妙なこと稽古させられたもんやな(笑)うちの(米團治)師匠はこんなこと毎日のようにやらされて、「アホか」と思うたんやて。 |
| 小米 |
(笑)50年以上前でもそう思ったんですな〜 |
| 米朝 |
50年やあらへんで。 |
| 小米 |
もっと前ですね。 |
| ざこば |
米團治師匠の若いときやから7〜80年前かもしらん。それを教えるお師匠はんがいてて、百年前から叩いてたんやな。アホやな(笑) |
| 一同 |
(大笑) |
| 米朝 |
そんなん聴く客、5人に1人もおらへんで。 |
| 小米 |
まだまだこれから誰かが受け継いでずっといかないかんのやけどね。 |
| 米朝 |
いや、それをまた受け継ぐというアホがまだおる。 |
| 小米 |
兄さんのお弟子さんには? |
| ざこば |
都丸には『発端』やったな。それはなんでか言うたら、師匠に教えてもろうた方で教えだしてるやん。この頃は僕も商売人になってきたから、「『叩き』憶えるより『子ほめ』先憶え。すぐ使えるぞ」と。そういうふうになってしもうた。 |
| 聞き手 |
小米さんの所にも「教えてくれ」という若い人が来はるんですか? |
| 小米 |
たまに稽古するんですけどね、今、師匠のビデオとかありますからね、それで憶えてきてくれと。僕は出来ないけれど、言うことは出来るからと。そんな稽古ですね。 |
| 聞き手 |
教える方はしんどいんですよね。 |
| 米朝 |
しんどい、しんどい。 |
| ざこば |
しんどいですけどね、それは、師匠もやってきはったんやから僕もやっていかないかんと思うから。例えば『崇徳院』教えてくださいと。ほんなら昔師匠に、「『崇徳院』教えてやってもいいですか」と言ったら「わし、しんどいからお前教えてやれ。最後わしが聴いてもいいし」ということやったから、来たら僕、教えてやろうと思うけど、春團治師匠の『お玉牛』はキチッと直して自分流に変えてる。それを教えてくれと言うから僕は「それはあかん。僕が三代目師匠に“教えてやっていいですか”とは言いにくい。あんたが三代目師匠に“教えてください”と言いなさい。それでなんか言われた場合、“ざこば兄さんに教えてもろうてよろしいか”」と聞いて、来る分には良いけど。そういうのは断りますね。そのうち勝手に憶えてやってはる人いてるけど、少しそういうマナーと言うか礼儀みたいなんは僕も師匠に習うてますからね。 |
| 聞き手 |
大元がいてはるのやったらいっぺんそこでちゃんと習って、後は自分の工夫と言うか... |
| 米朝 |
もうなかなかそれだけの余裕がないんか、世間がせわしないんか... |
| ざこば |
間、例えば20なら20。年数が何年かたてば師匠はお手本なしで、師匠の耳学問でこしらえてきはったのは、基本があったからと思うんで、ある程度基本が...。『ある程度』というのは難しいですけどね。頑張って自分流にやっていかな仕方がないと思う所もありますね。 |
| 米朝 |
結局はそうや。また自分の工夫とか、やり方とかなかったら嘘やし。 |
| 小米 |
師匠はネタに「一カ所でもええから、自分のええ物を残せ」と言うようなことをおっしゃいますね。 |
| 米朝 |
それはうちの師匠がそう言うてたんや。 |
| 聞き手 |
でも『叩き』がなんでやねんとか、工夫とか米團治師匠は非常に賢い方ですね。 |
| 米朝 |
理論を入れた人やね。それまで全然なかった、上方落語にね。書いてるもんなんか読んでも大変な理論家や。 |