| 聞き手 |
誠に素直な、的を射た御意見で...。それで天狗にもならずね...。先週ちょっとお芝居の話で、『地獄八景』の話をしましたけども、大阪で1回上演されたんですね。 |
| 吉弥 |
12月26日に...去年の年末に、天満天神繁昌亭でネタおろしでやらして頂きました。1時間10分ぐらい... |
| 米朝 |
普通にやったらそんなもんやな。 |
| 聞き手 |
お稽古は付けてもらったんですか、米朝師匠に? |
| 吉弥 |
いや、「米朝師匠、やらして頂きます」ということで...はい。 |
| 米朝 |
あんなもん、稽古なんてつけられへん。 |
| 吉弥 |
(笑)でまぁ、米朝師匠とか、うちの師匠、吉朝のを参考にさせて頂いて。 |
| 聞き手 |
師匠の吉朝さんの『地獄』で一番印象的なのは、芸づくしのところのね、閻魔大王に何か芸を披露したら極楽へ、というとこに、吉朝師匠は、噺家の出の物真似を... |
| 米朝 |
そうそうそう |
| 聞き手 |
僕らでは考えつかないような... |
| 米朝 |
一々三味線弾かしてな |
| 聞き手 |
出囃子をこう... |
| 吉弥 |
『昼飯』ならして枝雀師匠の真似で出てきて、『三下り鞨鼓』で米朝師匠で出てくると言う。 |
| 聞き手 |
『野崎』で三代目春團治師匠とかね。あれはよう出来た芸ですよね。 |
| 米朝 |
お客が、手、叩くんやてな、あれ。 |
| 聞き手 |
あれはやっぱり、あそこだけ見てても「ほぉ〜」と感心しますよね。器用なお方でしたね。 |
| 米朝 |
あれはいいアイデアやったね。そういうことうまかったからね。 |
| 聞き手 |
で、吉弥さんは米朝師匠の生の『地獄』もご覧になってますね? |
| 吉弥 |
いや、米朝師匠の生は見てないですね。 |
| 聞き手 |
あ、そうですか。で、ご自分ではどういう演出で。ここが吉弥の『地獄』やというのは? |
| 吉弥 |
僕がまず考えたのが、吉朝がやってた通りにやらしてもらおうと。うちの師匠は亡くなって、いないので、僕はおこがましいかも分かりませんけど、吉朝という、こんなやつがおったんやというのをお客に聞いてもらいたいんですよね。 |
| 米朝 |
う〜ん |
| 吉弥 |
つまり見てんのは吉弥やけど、「こいつの師匠誰や、ああなるほど吉朝か」と。そんなやつがおったんやということを、思ってもらいたいというのがあったので、今回の『地獄』もうちの師匠の演出にほぼ近づけて。で、うちの師匠に米朝師匠が言うてはんのを横で聞いてたので、何度か『地獄』をやってる時のアドバイスとして、米朝師匠が言うてはったのは、「いろんな枝葉が出てもかめへんけども、これという幹を通してるのは、吉朝の『地獄』や」と。やっぱりその幹がしっかりしないと、ということを聞いていたので、それを評価してもらった吉朝の型でやらしてもらおうと。それで落語家の出のところですけど、ごっつう期待されたんですよ。 |
| 聞き手 |
(笑) |
| 米朝 |
(笑) |
| 吉弥 |
吉朝さんがやってたので、吉弥もやるやろうと、期待されたので...。僕ね、出来るかもしれませんけど、あないに似ては出来ませんわ。三代目師匠みたいに高座上がる前にお辞儀してとかね...。それで何しようかと考えまして、ちょうどと言うたらおかしいですけど、内山田洋とクールファイブの内山田さんが去年お亡くなりになっているので、唄歌おうと。 |
| 聞き手 |
ほぉ〜 |
| 吉弥 |
で、僕は結構歌が好きなもんですから、『長崎は今日も雨だった』を替え歌にしまして、閻魔大王様に「唄歌わしてください」「お前は誰や」「内山田洋です」「おう、その方も来たところやな。ほな歌うか」「準備がありますんで」言うて下がって、これ反則なんですけど暗転にしまして... |
| 聞き手 |
うわっちゃ〜 |
| 吉弥 |
内山田洋の『長崎は今日も雨だった』のカラオケを放送局から録ってきてもらって... |
| 聞き手 |
聞きました。「なんか知らんかったんやけれども、カラオケ作ってくれと頼まれたんや」と言うておりました。この番組のディレクターが。 |
| 吉弥 |
で、それを大ボリュームでかけて、ピンスポットで歌ったんです。『長生きはどうも亀だった』という替え歌で... |
| 聞き手 |
(大笑) |
| 米朝 |
(笑)万年やからな。 |
| 吉弥 |
ええ、鶴と亀とを比べたら「ああ、長生きは、どうも亀だった」と歌いました。 |
| 聞き手 |
シャレてますよ。 |
| 米朝 |
ウケたやろな。 |
| 吉弥 |
ウケましたね(笑)暗転にしてスポットライトでムード歌謡流したとたんにウケましたね。つまり吉朝の真似をするんやないかとか、文我兄さんやったら浄瑠璃で「犬のおまわりさん」を歌ったりとか、都丸師匠やったら相撲甚句やとか... |
| 聞き手 |
それは吉弥さんのオリジナルですもんね。どうでした1時間10分通してやった感想は? |
| 吉弥 |
やっぱりしんどくなってくるのは4人の亡者が熱湯の釜に放り込まれたり、針の山へ上がったり。人呑鬼のお腹の中での、くしゃみしたり、笑ったり、あそこが1時間やった上でそこのシーンが来る...しんどいですね〜。 |
| 米朝 |
そうや。あれがしんどい。 |
| 聞き手 |
米朝師匠もそうですか? |
| 米朝 |
初めてやった時なんかもう夢中やからな、そんな思うてへんけども、いろんなことを考えてくるとやっぱりね、人呑鬼がしんどい。あんな噺を故人が残してくれたと、それはえらいもんやと思いますよ。最も五代目(笑福亭松鶴)なんかもね、今日はここの部分、今日はここの部分と、そんなもん全部通してやった人はあんまりなかったと思うな。 |
| 聞き手 |
戦前はなかったですか? |
| 米朝 |
ええ。五代目かて、どこか端折ったり、飛ばしたり。そうせんとやれんわな。 |