| 聞き手 |
もう(文楽の世界に)入られて40年。 |
| 勘十郎 |
あっという間でしたね。 |
| 聞き手 |
40年間が早いなと思うということは一所懸命楽しくやられたんでしょうけど、何ですかその惹き付けた文楽の魅力って? |
| 勘十郎 |
最初の頃思うたのは、ヒーローになれる... |
| 聞き手 |
ヒーロー? |
| 勘十郎 |
ヒーローになれるんです、なろうと思うたら。義経になろうと思うたらなれる、弁慶になろうと思うたらなれる、そういう子供の頃の憧れがありますね。『鉄人28号』とか、マンガの世界、空想の世界ですけども、それに近いものでね、一つ僕の中では魅力なんです。よく役になり切れと言われますけど、それが出来るんですね。しかし人形というのは面白いもんで、太夫さんも一字一句、江戸時代から本がビシッと決まっています。勝手に変えることは出来ないで、また崩れてしまっては困るんですけど、この義太夫節の中で人形がどない芝居しようがかなり自由なんですよ。決まってるようで決まってない。 |
| 聞き手 |
ほぉ〜、裁量はわりにあるんですね。 |
| 勘十郎 |
ま、無茶苦茶してしもうたらダメなんですけども、度を外さないと言いましょうかね、浄瑠璃が描こうとしているところからはみ出なかったら、自分でどない工夫してもかまわないというのが人形の世界なんです。これまた魅力なんです。そこまで自分の工夫が舞台で出来ればの話しですが... |
| 米朝 |
いやそれはやってもらわないかんわけですけど、お客が変わったというの感じますか? |
| 勘十郎 |
お客さんも変わってきてますね。ずいぶん若くなったというのもあります。外国の方が増えたというのもありますし。昔は女性ばっかりの時があったんです。それも若い人やなしにある程度お年を召した女性の方が多かったんです。最近は若い男性のお客さんが増えた。これは嬉しいです。男の人にもっと見て欲しいなというのがあって...。これは劇場側も金曜日だけちょっと時間を遅くしたりといろいろ工夫をしてるんですけど。若い男の人が来るというのが変わってきたところですかね。 |
| 米朝 |
あ〜、それは大きなことかもしれん。 |
| 聞き手 |
また、学校にも教えに行ってはるんですものね。 |
| 勘十郎 |
そうですね、高津小学校というところに6年ほど教えに行かせてもらってます。 |
| 聞き手 |
子供にさせるんですか? |
| 勘十郎 |
実際にやってもらうんです、人形の班、太夫の班、三味線の班と。6年生だけなんですけどね。春から始めて11月に発表会みたいなのをして、卒業までに5年生に自分らの習ったことを伝えて卒業していくと言う。 |
| 米朝 |
手応えがありまっしゃろな。 |
| 勘十郎 |
そうですね、子供ですからね、こっちが勉強になることもありますし、教えられることもありまして。大人が分からない可能性をいっぱい秘めてると思います。親御さんもビックリしはる、先生もビックリしはる、「え、うちの子、こんなん出来んの」新たな発見があったりね。で自信が無かった子が文楽の授業でえらい自信がついて、勉強成績もようなったりという子が沢山いてて、嬉しいです。 |
| 聞き手 |
一人、プロの太夫になった子がいるんですよね。 |
| 勘十郎 |
これが嬉しかって、もう... |
| 聞き手 |
咲大夫さんとこにお弟子になって... |
| 勘十郎 |
最初に教えた『牛若丸』をね、五条橋で語った子なんですけども、この子が「太夫になりたい」と言うて。で、入門して中学、高校へ行きながらずっと勉強をして、もう初舞台も踏んでますし... |
| 米朝 |
へぇ〜 |
| 勘十郎 |
豊竹咲寿大夫(とよたけさきじゅだゆう)と名前をつけて頂いて。人形遣いも是非プロがでて欲しいんですけどね〜。 |
| 聞き手 |
そうですね。是非勘十郎さん、目を付けて頂いて、彼がええとか、この子がええと思ったら、一回おうどんご馳走するとかね(笑) |
| 米朝 |
(笑) |
| 勘十郎 |
アンケートをとるとやっぱり大阪ですね。お笑い芸人というのがものすご多いんですよ。これは他のとこではないんちゃうかなと思いますけどね。 |
| 聞き手 |
可能性ありますよ。舞台に立とうという気があるわけですから。 |
| 勘十郎 |
だから何かをして人に喜んでもらいたいというね、同じですから私たちと。だからそういう意味ではね、ちょっとこう...(笑)方向を変えて人形遣いになりなさいとうまくね、何とかいってくれないかと... |
| 米朝 |
やらしたら面白さが分かってくるんやけどな。ちょっとやらしたらね。 |
| 勘十郎 |
子供は古くからあるものも、今ぱっと出来たもんも感覚は一緒なんです。目の前に面白いもんがあったら...。だから「古くさいもんや」というのは大人の考えで、難しさも分かりませんからまだ。そういう時にパッと見てもろうたり、聞いてもろうたり、なるべくしてもらうように、あちこち幼稚園とか回ってますんですけどね。 |
| 聞き手 |
やっぱりみてもらわないとね。 |
| 米朝 |
そうそう、体験するとね、やっぱり触れてみると面白さの分かり方が違いますからな。 |
| 勘十郎 |
そうですね。特殊なもんやないと言う、誰でも出来るということをね、皆さんに認識して頂いて...。ただ難しいこともいっぱいありますけども(笑) |
| 米朝 |
言葉がわからんだけのことでね。 |
| 勘十郎 |
そういうことをもっと若い人に広めたいですね。 |
| 聞き手 |
若い人に見に来て頂いて、せっかく大阪の芸ですからね。 |
| 米朝 |
手軽に見られるんやからな。それが案外手軽に見られると思わないですから... |
| 聞き手 |
そうですね。益々頑張って頂いて。本当に今日はありがとうございました。 |
| 勘十郎 |
ありがとうございました。 |