05/02/05、05/02/08〜05/02/12 放送 バックナンバー
引越しの季節、敷金トラブルに御用心!
ゲスト:きづがわ共同法律事務所弁護士・増田 尚さん
全額戻ってくるはずの"敷金"が戻ってこない!?
普通に暮らして汚れた部分は"敷引き"ではなく、家賃で賄え!
家具でフローリングがへこんでも"普通の暮らし"の範囲内
家主の情に訴えても問題は解決しない
借り手の強〜い味方『消費者契約法』
 春からの新生活を前に、今"引越し"を考えている方も多いのではないでしょうか。今週のテーマは、そんな方にピッタリです。最近、賃貸住宅を退去する時に、借りる側に責任がなくても、部屋の修繕費用を必要以上に敷金から差し引かれるトラブルが相次いでいます。今週は、これまであまり知られていない『借りる側の主張できる権利』について、敷金問題研究会の弁護士・増田 尚さんに伺います。
■全額戻ってくるはずの"敷金"が戻ってこない!?
 『敷金問題研究会』はどういう活動をしているのですか?


 「『敷金問題研究会』は2002年7月に設立されました。弁護士や司法書士等の法律の専門家が中心になって、あと不動産業者の方の御協力も得ながら、借りている側の皆さんの敷金や原状回復の問題、あるいは賃借人の方から賃貸人に支払っている礼金や更新料、敷引きといった一時金の問題、こうした借主の皆さんのトラブルについて相談を受け付け答える活動をしています。
 メンバーは、大阪、関西だけをとりますと、50〜60名位ですね。この2年余りになりますけれど、2400件近くの相談を受け付けています。
引越しシーズンで、出られてから暫くして敷金が戻ってくると思っていたのに、『これだけ直しますよ』という明細が送られてきて全く戻ってこないというケース等、引越しシーズン直後とかに相談件数が多いですね」




 "敷金"というのは、元々戻ってこないお金なのですか?


 「そういうわけではありません。敷金というのは預けているお金ですので、本来返ってくるというのが前提になっているんです。
 何の為に預けるかと言いますと、例えば借りている方が家賃を払わなかったり、何らかの不始末で建物を壊してしまった場合の損害賠償ですとか、そういったものの担保として預けているわけです。ですから不始末が無ければ、本来は全額返されるべきであるというのが敷金なんですね。
 しかし、原状回復という名目で差し引かれる費用というのが増えてきて、場合によっては預けている敷金よりも多い金額を請求されて『足りない、まだ払え』と言われるケースも見受けられますね。
 借りている方からすると、そんなに汚しているつもりはないのに、全部綺麗にしてもらわなければ困ると。クリーニングだとか、リフォームだとかの費用も負担してくれと家主から言われると。ここのギャップですよね、両者の違いというのでトラブルが増えていると思います。
 今までは、そういう風に家主の方から言われると、そのまま聞いてしまうと言うか泣き寝入りしてしまうケースが多かったんですが、この数年間、私達の活動もそうですし、国土交通省等で定めているガイドラインというのが普及してきまして、本来負担しなくて良いものまで負担させられているという事が解りまして、借りている側も黙っていられないという形で、権利を主張される方が増えてきました。こういう事がありまして、相談件数ですとか、トラブル件数が増えてきていると思います」
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■普通に暮らして汚れた部分は"敷引き"ではなく、家賃で賄え!
 敷金トラブルにはどんな事例が多いのですか?


 「1つは原状回復の問題です。もう1つは、大阪や神戸等で見られる敷引きですとか、京都にある更新料等の一時金のトラブルというのも多く寄せられています」




 原状回復というのは『元通りに戻す』という意味なんですか?


 「そうです。しかし、元通りの範囲がどこまでなのかというのが問題なんです。
例えば新築で借りた場合に5年経って原状回復しなさいと言われた時に、新築のピカピカの状態にしなきゃいけないのかと。こういう風に勘違いされている方、特に家主の方には『そういうものだ』と言って、クリーニングだとかリフォームの費用も借りている側に負担させる、こういう風に考えている方がいますが、これはそうではありません。
 国土交通省が原状回復についてガイドラインというものを定めていますが、そこでは原状回復は、賃借人が住む事によって発生した建物の汚れですとか磨り減ったりする部分、あるいは普通に暮らしていて生じるような経年劣化、こういったものを除外して、借りた側が故意又は過失、不注意ですね、こういった事によって、普通に使っていて生じる汚れあるいは破損を超えた部分を元に戻しなさい、修復しなさいというのが原状回復ですよと定義付けています。
 普通に暮らしていて生じる部分については、本来は家主の側が、毎月の家賃で賄うというのが国土交通省の考え方です。
 大半は、契約書自体には、普通に『原状に回復する』としか書いてないのに、通常に使っていて生じる汚れを超える部分も負担させていると。こういう事によってトラブルが生じています」
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■家具でフローリングがへこんでも"普通の暮らし"の範囲内
 実際にどの程度の傷やシミがトラブルになっているのですか?


 「通常暮らしていて生じる汚れは修復しなくても良いとお話しましたが、ではどこまでが"通常"なのかという事ですよね。それが非常に悩ましい所なんです。
 例えば、カーペットに食べ物をこぼしてしまうと。それでシミになってしまうというのがありますよね。どれだけ注意していてもソースだとかこぼれてしまう、カーペットが汚れてしまう。こういうのは、どうしても避けられないと思うんですね。
 国土交通省が定めているガイドラインでも、食べ物をこぼす事自体は通常の生活としてもあり得るという風に考えています。
 ただその後、こぼしちゃった所をそのまま放ったらかしにしてしまうと、それでシミが拡大したりだとか、カビになっちゃうと。これは通常の範囲を超えていると、借りている方で直してくださいねと、こういう風に言っていますね。
 あと、よく問題になるのが、タバコのヤニなんですよね。これでクロスが汚れてしまうと。タバコを吸う事自体は普通の範囲だと考えていますが、あまりにもひどい汚れ、クリーニングでも除去しきれないヤニについては通常の範囲外じゃないかと国土交通省では考えているようですね。
 退去する時に、そういった汚れの部分については、家主の側の業者と借りている方と2人で立ち会って、通常の範囲かそうでないのかをよく協議するというのが大事になるかなと思います。
 傷の中でよくあるのは、家具を置いてフローリングがへこんでしまうと。でもこれ自体は、家具を置くなというわけにはいきませんので、それは通常の範囲だと考えています。
 傷も、不注意でドアの角ですとかをボコッと当ててしまうという事はよくありますので、その程度であれば通常の範囲という形で処理されるのが多いんじゃないかなと思います。 
 が、重い物を引きずる場合には床に新聞ですとかダンボールを敷いて運ぶとかによって防ぐ事が可能であるというので、通常の範囲を超える場合もあり得るんじゃないかなと現場では考えている事が多いですね」
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■家主の情に訴えても問題は解決しない
 トラブルにならない為には、どこに気を付けたらいいのですか?


 「まず契約をする時、注意すべきポイントは、契約書の中身がどうなっているかという事ですよね。
 特に明け渡しの時の原状回復が、必要以上に借りている方に負担させられていないかですとか、あるいは一時金の問題ですね。よく解らない敷引きだとか礼金とかという事で払わされている、こういう費用がどれくらいになるのか見る必要があると思うんです。
 残念ながら、借り手の側が『原状回復についての契約の中身が気に入らないから、書き換えてくれ』と言って換えさせるだけの力は無いわけですよね。借りようとしている人がそういう風に言うと、『それやったら借りてもらわんで結構です』という事で、普通書き換える家主の人、不動産業者はいないわけですよね。借り手の側、消費者の側は、そういう物件を借りるか、気に入らなければ借りないかという選択肢しか残されていない、そういう限界があると思います。
 それはそれとしても、借りる時に必要以上に細かく原状回復の中身を規定しておいて、借りている側にほとんど負担させるというような契約書になっているものについては、要注意じゃないかなと思っています」




 不動産業者で出される"重要事項説明書"はどんなものですか?


 「"重要事項説明書"は宅建業法で決められていて、(原状回復等の)中身について説明しなさいという事になっています。大体説明する事項については同じなんですね。
 ただ、契約書の中身、特に原状回復に関連する条項というものが、場合によっては特定の業者が準備している書類というのは、借りている側にとって不利な内容になっているものもあります」




 チェーン展開している業者だったら、別の営業所に行っても、同じ書類を突きつけられる事もあるわけですね?


 「そういうのもありますね」
 家主との人間関係を良くしておけば、有利になる事はありますか?
 「残念ながら『契約書に書いてあるじゃないか。それにサインしてハンコを押したじゃないか』という事で、どうしても契約書の中身が問題になってきますね」




 『もう5年も住んだのだから』と、家主さんの情に訴えるというのは通用しませんか?


 「そうですね。家主の方によっては契約書を盾に、そういう話はいっさい受け付けないという方もいますね」

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■借り手の強〜い味方『消費者契約法』
 借り手を守る法律はないのですか?


 「『消費者契約法』というのが平成13年4月から施行されています。この法律の中に、10条というのがありまして、これは民法や商法等の契約の基本的なルールよりも消費者に不利な条項については無効であると定めています。
 原状回復の問題については、民法の賃貸借という所で定めてあります。これは毎月の家賃で通常の汚れについては家主が賄いますと、退去する時にする原状回復の中には通常の汚れというものは含まれていませんよという事が民法では書いてあるわけですね。
 ですから、これを超える修復、原状回復を借主に負担させる契約というのは、民法の賃貸借よりも消費者である借主に不利になっているという事で無効とされています。
 昨年末と今年1月に、そういった判断が大阪高等裁判所で示されていまして、借り手側の大きな武器になっています。
 特に消費者というのは、自分が契約で交渉して、契約の中身を変えたりですとか、自分で決めたりとかができません。最初から家主側が決めた契約書にサインするかしないか、こういう選択の余地しかないわけですね。そういう消費者の為に不利な契約を結ばされないように、契約の内容を規制したのが、この消費者契約法の10条という事になります。
 今問題になっている敷引きですとか更新料等の一時金についても本当に支払う必要があるのか、消費者契約法という観点から見つめ直していく事が必要になるんじゃないかなと考えています」




 敷金問題研究会にはどうやって相談したら良いのですか?


 「お悩みや御相談はファックスでお寄せ頂けると幸いです。ファックス番号は、06-6633-0494です」




 相談は有料ですか?


 「相談料については、30分5000円というのが1つの標準になるかと思います。
お寄せ頂いたファックスで、御連絡先をお書き頂ければ、その方の近くの司法書士や弁護士を御紹介します。そちらの方から御連絡をとらせて頂きます。
御相談の内容によって、交渉ですとか裁判が必要であるという事になれば、またその弁護士なり司法書士に依頼して頂いて、その場合は別途その為の費用がかかりますけれども、それは御相談の上で決めて頂くという事になります」
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