05/11/01〜05/11/05 放送 バックナンバー
正社員になれない若者達。景気回復の影の労働市場
ゲスト:アルバイト・派遣・パート関西労働組合・内藤進夫さん
低賃金・有期雇用に泣く非正社員の駆け込み寺、神戸にも誕生!
『フリーター・非正社員版サバイバル講座』って何だ?
実態は日雇い! 『ワンコール・ワーカー』という名の派遣契約
若者に、まともに働く気が無いからフリーターが増えるのか?
国は履歴書の書き方を教えるだけじゃダメ! 若者も権利を知ろう!
 今年発表された労働経済白書によると、大学生の就職率は改善傾向にあるとはいえ、2004年3月の就職率は卒業者の55.8%で、91年の81.3%に比べ25ポイント以上低くなっています。就職できたとしても、派遣など正社員ではない形が増えており、大卒就職者で3年以内にその会社を辞めてしまう人も35%と高い水準になっています。今、若者が働く環境はどうなっているのか? 今週は、正社員でない労働者のための相談所を神戸にも開いたアルバイト・派遣・パート関西労働組合の内藤進夫さんに伺います。
■低賃金・有期雇用に泣く非正社員の駆け込み寺、神戸にも誕生!
 3月にも御出演いただきましたが、当時は大阪で活動されていましたよね?

 「そうですね」


 神戸に転勤されたのはいつですか?

 「10月1日に引越ししまして、それから荷物を入れる等色々な準備をし、それから地元で協力してくれる人との相談等で今日に至っています。まだ準備が全部終わっていない状態なんですが、さっそく相談が2〜3件入っています。実際に事務所を開く前からですね」


 何故神戸なんですか?

 「元々、京阪神中心に、非正社員や有期雇用契約の特に女性や若者の支援をしていこうという事で、組合を立ち上げました。それで、実際大阪で1年半やってきて、相談者数の比率で言えば、やはり大阪が多かったんですが、次に多いのが兵庫でして。神戸に限らず兵庫県内。地理的にも広いですし。で、こういった運動を広げるためには、あるいは私達の活動を社会的に認知してもらうためには、地元でやる必要があると思って、神戸に事務所を開く事を決めました。
 私自身も明石に住んでいますから、私にとっては肉体的にも地理的にも非常に良い条件なんですけど」


 勝手知ったる自分の庭みたいな?

 「それほどはありませんが、そういう事はありますね(笑い)」


 11月4日(金)〜6日(日)に神戸事務所で初の無料相談をするんですね?

 「元々労働相談は無料なんです。弁護士とか司法書士とかに相談する場合は有料ですけども、そういう事を知らない人が多いので、敢えて無料という事を大きく言っているんです」


 既に相談が来ているという事ですが、どんな内容?

 「解雇です。請負で仕事にいっていて、『思ったほど仕事ができない』とか言われて、本人はそんな覚えはないけれど解雇されて、『何とかしてくれ』という事で来られました。
 他には、20代の若者ですが、前働いていた神戸の医療関係の店で、1年位前になるらしいんですが、時間外手当をいっさい貰っていなかった。1日3時間ほどね、オーバーして働いて貰っていなかった」

 神戸事務所の電話番号は078-360-0450です。これは常設電話ですので、上記相談期間以外でも受け付けていますので、御利用ください。

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■『フリーター・非正社員版サバイバル講座』って何だ?
 9月に『フリーター・非正社員版サバイバル講座』という集会が大阪で開かれましたね?

 「私達の組合は、組合員の半数が女性で、平均年齢が30代という事で、若い人の集まる組合なんですが、自称フリーターと言いますかね、そういう人が少ない。私達の組合の小原代表は学童保育の指導員をやりながら、自称フリーターで働いているんですが、彼のような意識で働いている人が組合に少ないという事で、やっぱりこの時代、現役の若い人の声を聞いてみよういう事で、この集会の企画を持ちました」


 若い方というと、現役学生も参加した?

 「まあ、学生とか、卒業した人とか、20代の人を中心に呼びかけました。それで参加してくれた1人は『ユニオン準備会ぼちぼち』の中村君です。大学を卒業した先輩が働きながら労働問題で苦労していると。そういうところから『労働組合的なものを作りたいなあ、作ろうかなあ』という人達のネットワーク活動を大阪でやっています」


 学生でありながら、そういった活動をしているんですか?

 「彼が中心ですが、集まっているメンバーは、社会人とか、たくさん集まっているようです」


 『サバイバル講座』では、他にどんな意見が出ましたか?

 「20代後半で、野宿者と一緒に公園で生活しながら、10代〜20代の若い人達の労働相談をやっている中桐さんという男性がいるんですけど、彼もなんとか今の若者を救おうという事で、労働組合とか今回の『サバイバル講座』のような集まりが必要だなという事を感じているという事を聴きましたね」


 大学の先生だとか行政の立場の人も参加したそうですね?

 「そうですね。大学の先生で、就職担当をやった方。それから『ビッグ・イッシュー』という野宿者の自立を支援するため野宿者によって売られている雑誌がありますね。ああいった事を研究したり、大学で講義したりしている先生達から、教え子の就職活動、アルバイト生活、それから就職後どういう生き方をしているかという事を聴きました」

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■実態は日雇い! 『ワンコール・ワーカー』という名の派遣契約
 今、大学生を含む若者の就職状況はどうなっていますか?

 「大学生でも、新卒の正社員、いわゆる正規雇用と言いますか、それはどんどん減っています。企業求人自体が派遣とか請負とか、大企業でもそういった求人が増えています。正規雇用がないために、行く行くは正社員になりたいんだけど、とりあえずという事で、そういうフリーター的な働き方をする人が増えているんじゃないかと思います」


 4年制の大学まで行って、正社員になれない現状は何を生む?

 「正社員で働けなかった人は、とんでもない職場に紹介され、長時間労働とか低賃金とかで働かされ、続かなかったりします。あるいは元々有期雇用と言いますか、期限が決められていて、半年とか3ヶ月で契約更新されない、いわゆる解雇ですね、雇い止めをされて、結局失業してしまうわけですね。新卒でもね、2〜3ヶ月で契約期限が切れて失業する人の相談が多いし、この前の大阪での集会でもそういう報告がありましたね」


 3ヶ月で解雇されたら、次の仕事を探さないといけないですよね?

 「だけど職安なんかに行っても、ちゃんとした仕事が無いからね。結局、派遣会社とか請負会社に登録するんですね。最近若い人に増えているのが、携帯電話1つで仕事がもらえる『ワンコール・ワーカー』。そういう働き方が増えているみたいですね」


 『ワンコール・ワーカー』とは、具体的にはどういうものですか?

 「派遣会社や請負会社に登録をして、仕事をしたい時に、その会社に携帯で電話をかけたりメールを打ったりして、仕事があるかを聞いて、そこで契約が成立する。契約は、明日あるいは明後日、こういう現場に行ってくれという事で、日々雇用、日雇いみたいな派遣契約です。
 普通、僕らが扱っている派遣契約は、2〜3ヶ月とか半年とかなんですね。1年はほとんど無い。それがどんどん短期化してね、最近増えている特徴は、日雇いに近いような1〜2日の仕事で働いて、それで食いつないでいる若者が増えているんですよ」


 何故、そういう事になってしまうんですか?

 「非正規社員は、劣悪な労働条件、低賃金、それから正社員なんかとは格段に違う福利厚生の面とか、社会保険の問題とかにさらされている。権利的な問題でもね、社会的な権利も完全に剥奪されているというか、認められていない。その中でスキル(技術)とか即戦力だけが問われる。そこでつぶれていったり、辞めていったり、雇い止め解雇されたりして、『ワンコール・ワーカー』で働かざるを得ない。だから、精神的にもかなり追い詰められている、そういう人が増えていると思うんですよ」


 『ワンコール・ワーカー』は、派遣法では許されているんですか?

 「請負業とか派遣業の登録している会社がやっているケースも多いようです。合法的にやっているというわけです」

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■若者に、まともに働く気が無いからフリーターが増えるのか?
 若者に働く気がないとか言われますが、現状は仕方がない面がありますね?

 「そうですね。昔からよく『最近の若いモンは』と言うけど、そんなのはいつの時代にもあると思います。
 特に労働環境で言えば、今ほど悪い時代はないと思います。私も団塊の世代の真ん中ですから、高卒・中卒でもね、就職は『金の卵』という事で、仕事はいっぱいあったわけでね。努力すれば正社員になれた時代。大卒であれば、それなりの階段が用意されていて、年金生活もできた。あるいはできている。そういう50代後半〜70代の方もたくさんいるんですが、今の若い人はそういう希望は持てませんわね。そういう社会じゃないと思うんですよ」


 厚生労働省によりますと、非正社員の割合が15〜24歳で33%ですものね。その若者達はどう考えている?

 「私達の組合に来る若い人は、学歴が高くて、言葉悪いですがプライドが高い人が多いです」


 何か夢を見ているんですかねえ?

 「やっぱり、『今に見ていろ』と。俺だって、私だって、ちゃんとした資格と経験と学歴でね、『正社員になりたい』と。『なってやる』という夢はあると思うんです。
 しかし、現実の労働環境や現場は違うわけですよね。結局、あるのは不安定雇用の短期雇用、低賃金、低い労働条件の仕事しかない。それで、長期に働けずに失業を繰り返すと。
 そういう人がね、長くても1〜2年しか働かないで、どんどん職を変えていったら、『今に見ていろ』と言ったって、正社員の道なんかほとんど閉ざされていると思うんですよ。だから、そういう事が繰り返される事を止めないとダメかなと思っているんです」


 『ユニオンぼちぼち』の中村さんのように、学生でもしっかり現実を見ている方もいる?

 「そうですね。彼は、団塊の世代の両親とは違うと意識している。時代が違うし、そういう生き方を敢えてしない。1から苦労して、しんどい事を経験していこうと。同じ世代の友達とか、フリーター仲間なんかと、そういう事をやっていこうと。1からそういう生き方を見つめ直そういう事を言っているんですね」


 こういう非正規雇用の時代が、10〜20年続くだろうと見ているわけですよね?

 「彼は、若者が団塊の世代のオッチャンなんかに頼るんじゃなくて、同じ世代の者が力を携える、苦労を分かち合う、そういう場が欲しいなという事を考えている。非常に前向きだと思うんですけどね」

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■国は履歴書の書き方を教えるだけじゃダメ! 若者も権利を知ろう!
 若い人達の正規雇用が減っていますが、仕事自体はありますよね?

 「仕事は、先程言いましたように『ワンコール・ワーカー』という形でもありますし、求人雑誌が溢れているのを見ても解りますよね。
 ただ求人内容が非常に細切れで、劣悪だという事なんですね」


 労働条件とかセーフティ・ネットの整備とかが遅れているわけですね?

 「そうですね。国もね、フリーターとかNEET(仕事についておらず、教育や職業訓練を受けていない若者達)対策という事で、色々な就業支援をやっているんですが、まだまだ不充分だと思うんですよ。問題は、やっぱり、履歴書をこう書いたら良いとか、パソコンの技術を磨いたら良いとか、面接の技術が上手になれば良いとか、そういう事じゃないと思うんですよ」


 国がやっているのは、そういう事ばっかりだと?

 「それが多いですね」


 国が、『ジョブカフェ』という若者の就職支援センターを開いていますね?

 「35歳以下の人しか入れないんで、私はもちろん入れなくて直接知らないんですけど、経験者に言わせると、『具体的な仕事を斡旋してくれるわけでもないし』と言っていますね」


 履歴書の書き方というような事だけですか?

 「そうですね」


 『ジョブカフェ』でそんな事、必要ないですよね?

 「不必要とまでは言えないと思うんですが、もっとやる事はあるんじゃないかと思うんですよ。
 細切れで不安定な、労働基準法すれすれの求人が野放しになっている。ハローワーク(公共職業安定所)を通じても、そういう会社の求人が圧倒的に多いんです。国としてやらなければいけない、やれる事はね、そういうところに、労働市場とか求人の中身を改善していく指導とかをしていかないと」


 ルールの整備と徹底ですね?

 「そうですね。セーフティ・ネット(雇用保険等の社会保障制度)的なケアとか、そういう事をしないとダメだと思うんですよ。
 同時にね、労働者の権利の周知をしないといけない。
 例えば、私達の電話相談でもあるんですが、『明日から来るな』『来なくても良い』と言われて解雇されるんですが、労働基準法という法律で、無条件に急にクビを切った場合は、解雇予告手当てという事で、30日分の給料を払わないといけない決まりになっているわけですよ。最低30日ですよ。
 それから、時間外手当、いわゆる残業代の未払いで働かされてもね、25%以上の割り増し賃金が正当な権利として貰えるんです。雇っている方は、払わないといけないわけです。
 それから、『うちの会社には、年休(年次有給休暇)なんか無いんだ』と言われたという相談をよく受けるんですけども、これも国の法律でね、正社員はもちろんパートでも派遣でもね、半年以上働いたら、請求さえすれば、誰でも取れる権利なんです。
 それらを知らない人が多いんです。だから、労働者も若い人達も賢くなって欲しいし、国もそういう事にメスを入れて、労働者を支えて欲しい。そういう行政をやって欲しいんですよ」


 現実は厳しいですけど、自衛と言うか、道はまだありますよね?

 「そうですね。私も団塊の世代ですから、働く20代の息子や娘を持っているんですが、そういった人達の声も聞いて、親である私達も生き方を変える、見方を変える、フリーターやパートや、若者に対する見方を変えていかないと、若い人達の未来は危ないと言うか、未来は無いと思うんですよ」


 内藤さんは、組合活動を通じて若い人の声を聞いていく?

 「私達の労働組合が、社会的に認められる事も大事なんですが、若い人達の闘い、手助けを積極的にこれからもしていきたい。非正規労働者、パートやフリーターの専門店みたいな感じで、積極的にこれからもやっていきたいと思います」

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