06/12/09、06/12/12〜06/12/16 放送 バックナンバー
ニーハオ、関西! 実はホットな関中経済関係
ゲスト:関西広域連携協議会事務局長・田中英俊さん
聞き手:阿部成寿アナウンサー
もう離れられない! 『輸出基地兼巨大マーケット』中国
中国では、ダイキンのエアコンはエアコン界のベンツ!
今や双方向! 関西に中国企業の誘致を考える時代
『関西ってどこ?』中国で認知されるようにならなければ
関西企業の環境や農産物生産技術が関係発展の鍵になる?
 失業率が改善するなど景気回復がきざし始めた関西経済。その関西経済の話をする場合、避けて通れないのが中国です。北京五輪に向けて依然として力強い経済成長を続ける中国と大阪を中心とする関西圏は、実は経済的結びつきがかなり強く、輸出額2兆5千億円、輸入額3兆5千億円(ともに04年)と、関西にとって中国は最大の貿易相手国です。関西と中国はどのように結びついているのか? 両者の関係は今後どうなっていくのか? 今週は、同志社大学大学院客員教授で関西広域連携協議会事務局長の田中英俊さんにお話を伺います。
■もう離れられない! 『輸出基地兼巨大マーケット』中国

 中国と関西は、歴史的、文化的な結びつきがありましたが、貿易面でも額は大きいですよね?

 「そうですね。例えば輸出だと、関西から輸出する額のうち、東アジア向けが6割を占めているんです。昔はアメリカが一番でしたけど。で、そのうちの3割が中国向けで、この10年間に10ポイントあまり増えてきています」


 10年間で10ポイントとは、すさまじい伸びですよね?

 「輸入はもっと凄くて、関西の輸入全体のうち58%が東アジアから。そのうちの56%が中国からなんです。
 どんなものを輸出しているかというと、中国では今、建設ブームという状況ですから、『赤字、赤字』と言われた鉄鋼業界でさえも輸出で黒字になっています。中国が鉄鋼製品を買ってくれるからですね。それから中国は、世界的な家電製品の輸出大国なんです。その貴重な部品はどこから入ってくるかと言うと、日本からどんどん入っているわけですね。あとは繊維製品を作っている。日本から持っていったもの(素材)を中国で加工して(日本に)持ってくると。
 30〜40年前の日本の状況が、今、中国で起きていると。で、成長率が高くて所得も上がってきています。元々、日本の30分の1という安い工賃なので、中国に行ってモノを作って売ろうということで、(日本の)輸出メーカーなどは1990年前後にたくさん進出していったわけです。でもこの2〜3年はそういうことではなくて、拡大する中国マーケットにどうやって入っていくかということが大事なので、いかに中国とのパイプを作って太くしていくかという時代だろうと思います」


 日本企業にとって、今の中国はマーケットということですか?

 「そうです。『輸出基地兼巨大なマーケット』ですね。その両面をどのように使い分けるかということなんですけど、例えば中国を1つの独立したマーケットと見るべきだという考えがあるのは松下電器で、中国の100ヵ所ぐらいでオペレーションをしているんですね。で、現地の人たちをなかなか重視しないのが日本の企業の良くない点と言われていますけど、松下電器では今年、(現地で)大学卒を350人採用したと言うんです。
 松下電器全体のオペレーションと利益の4分の1ぐらいは中国から稼ぐんだという姿勢のようですね。輸出で稼ぐだけではなくて、売って稼げるというマーケットに中国はなってきたと思います」


 その他の関西の企業の成功例はどうなっているんですか?

 「例えば(中国からの)輸入製品の中で一番多いのは衣類なんですね。ファッション的なモノもそうで、大阪にも例えばイトキンとかワールドとか色々ありますけど、いずれも1990年前後に中国に進出しているんですね。
 その頃は、現地で縫製技術を教えて、衣類に仕立てて日本に輸入して、日本でアイロン掛けして店頭で販売するということだったんです。でも日本でアイロン掛けする工賃もだんだん上がってきたため、中国でアイロン掛けして、ハンガーに吊るして、そのままコンテナに積んで日本に運んでくるという最終加工まで中国で行うようになったんです。そういう技術指導を色々なところで行っていますから、輸入のうちの半分ぐらいは繊維製品と言った方が良いかも知れませんね。
 また飲料業では、(中国の)サントリーの工場に行ったことがあるんですけど、今から15年ほど前に中国で冷たいビールを出してくれるのはサントリーだけだったんです」


 中国では、元々ビールは冷やさずに飲んでいましたよね?

 「そうなんです。でもビールは冷やして飲むと美味しいということが中国の人にも判ったようで、中国でサントリーは『三徳利』と書かれて、名前が良いということも手伝ってかマーケットがどんどん伸びて、おそらく現在、中国の上海ではサントリービールのシェアは5割ぐらいになっているのではないかと思います」

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■中国では、ダイキンのエアコンはエアコン界のベンツ!

 関西の企業は今や中国で本当に成功していると?

 「ダイキンのエアコンも中国ではステータスシンボルになっています。据え置き型の大きなエアコンがありますね。それが現地では『エアコンのベンツ』と呼ばれているんですね」


 中国人にとっては喉から手が出るほどすぐに買いたい製品なんですね?

 「貧富の差が激しいとかマイナスのイメージもありますけど、金持ちがものすごくいるということですね」


 どれぐらい金持ちの人はいるんですか?

 「例えば年収が6000ドル以上の人が1億人を超えているとかですね。いつの統計を取るかによるんですが、例えば上海の普通のサラリーマンの月収というのは4万円前後なんです。じゃあどうしてそのような人たちが製品を買えるかと言うと、日本と若干違うのは、中国には『一人っ子政策』があって、家族の中で両親や子供が働いていて3〜4人に所得がある場合もあります。
 すると、例えば日本の化粧品が中国で飛ぶように売れているということですが、順番に生活費は働いている家族の誰かが家に入れるということになると3ヶ月に1回ぐらいは自分の稼いだお金を丸々使えるということになるんですね。そうすると4万円が全部使えるわけです」


 その時に選ばれるブランドが日本の製品だということですね?

 「上海では資生堂の店舗が増えてきていて、欧米の化粧品よりもアジア人の肌に合うということでよく売れているそうです。ですから中国から日本への旅行者が今どんどん増えているんですけれども、中国の人の要求は『どこで日本の化粧品が買えるんだ?』『どこで電化製品が買えるんだ?』ということで、それを日本で買って中国に戻ると、それがステータスになっているんです。
 輸出入だけでなくて海外進出している日本企業のウェイトを見ても、中国に出て行っている(日本)企業の中で関西の企業の割合が25%ぐらいあるんですよね。関西の日本全体でのマーケット・シェアは16〜17%ですから、それに比べたら、どれだけ関西の企業が多く出ていっているのかがわかりますよね。
 関西が出て行きやすい理由があるのかも知れません。繊維関係などのファッションメーカーや家電製品とかもありますし、昔から関西の中堅企業も果敢に出て行って、自分たちが生き残るためにはどうすれば良いかを考えてという所も多いですね。私の知り合いでも『中国に出て行って良かった』という企業の社長さんも結構いますし」


 関西の企業が中国で主に進出している地域は?

 「元々、日本の企業が出て行ったのは経済特区と言われていまして、現地の企業に出資して出て行った時に、税金など様々な優遇措置を受けることができて、現地で作ったモノを(世界に)輸出するということがありました。最初に特区が始まったのは広州地区だったんですが、それが上海や大連、北京など経済特区が沿岸部にどんどんと増えてきましたから、そこに1985年頃から日本の企業が進出していったわけですね。
 当時は、中国政府が日本の技術の進んだ企業を優遇したので、日本側の利害とも一致してどんどん出て行ったわけです。でも最近は、中国政府が、地域の経済格差を縮めるためにも『もっと外国企業には内陸部に出て行って欲しい』と言って企業誘致を進めています。実は今年10月初めに中国の湖南省に行きましたが、そこには韓国の大手企業のラッキーグループの工場がありました。それを見て『もう進出している外国企業もあるんだ』とびっくりしました。このような地域も今後所得水準が向上すると思いますね」

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■今や双方向! 関西に中国企業の誘致を考える時代

 関西の企業が中国へ進出するのをサポートする役割を担っているのが、関西広域連携協議会?

 「私たちが一番真剣に考えているのは、明日をどう生きるか、これから企業をどう成長させるのかということです。企業をどのようにしたら成功させるかということは、経営者が悩んでいますけど、我々のような組織や自治体などは、それをどのぐらいバックアップできるかということですね。
 例えば、私たちが行っているのは、中国や東アジアとのパイプをもっと太くしなければならないということでして、そのためには何ができるかということですが、色々な技術がある日本の企業で、もっとアジアの国々と商売をしたいという企業を募集して、インターネットで英語や中国語で紹介しています。『プラットフォーム』と呼んでいるんですが、それを見て関心があるというアジアの企業と日本の企業を我々がつなぐことができるんですね。
 また、アジアの中でも、中国では今、環境問題が非常に厳しい状況ですから、関西の企業や組織で環境技術で非常に優れているものを持っている所もありますので、『この技術なら出しても良いよ』という100ぐらいの企業の情報を集めて、中国やアジアの企業に見せて、『どうぞこの技術を使ってください』と言って協力関係を作るなどしています。
 その他にも自治体や関西経済連合会や関西経済同友会などが中心になって、定期的に上海の企業や政府とお互いの交流を進める方法などを話し合っています。『上海会議』と言うんです。今から10数年前には私も良く出席していたんですが、当時は『日本側から何を得られるか』というのが中国側の姿勢でした。ところが、どんどん中国の経済が発展してきて、有力な世界的企業がどんどんできてきて、今や『関西に中国の企業が進出してあげましょうか?』という、双方向で話を進める形に変わってきました」


 中国市場という大きなパイをめぐって競争が激しくなってきて、関西の企業が生き残るための課題は何ですか?

 「企業は企業の戦略の中で、どのようにビジネスを進めていくか決断を迫られているわけですね。しかし、日本と中国の間で政治的な問題が出てくると、途端に火が噴き出して現地の日本の店や施設に石を投げられたりします。それを、時間をかけてどのように整理してお互いに納得できる形にしていくのかが大事です。私自身も経験しているんですが、講演に行った時に教科書問題が出てきて、経済講演ができずに教科書問題の議論をしたこともあります。
 もう1つは、WTO=世界貿易機関に中国が加盟したわけですが、何故、米国などが中国の加盟を後押ししたかと言うと、中国に世界の貿易のルールを守ってもらいたいということです。何故、日本企業が最新の技術を最近(中国に)出さなくなったかと言うと、すぐコピー製品が出てくるわけです。例えばホンダのオートバイと同じ形のオートバイが中国で走っていてもホンダのオートバイじゃないという、偽ブランド品がすごく出回っているのでは困るわけですね。
 で、どんどん大きくなっている中国市場でどう競争するかと言いますと、中国はFTA協定をアジア各国と次々に結んで、お互いに貿易量が増える仕組みになっているんです。でも日本は、FTAの議論を中国とはできない状況です。そうなると日本以外で有利な所が出てくるわけです。それをどうしていくのか。また、日本と中国の間には、企業レベルで解決できない問題がいくつかありますので、真剣に政府の方も考えないといけないと思うんです」

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■『関西ってどこ?』中国で認知されるようにならなければ

 「で、自治体と言うか、地方対地方、姉妹都市もたくさん日中間でできていますから、そこのネットワークを深めながら、中国の人に『日本人は教科書で習ったような人たちではないな』ということを増やしていかなければならない。今年は『日中友好年』なんです。日本と中国の旅行者がもっと行き交う機会も作らなければと思っています」


 日本と中国が文化や習慣の違いなどをさらけ出して、まずはそこからスタートだと?

 「今までは商売ベースと言うか損得がありましたけど、もっともっと深いつながりの部分までいかないといけないのではと思いますね。
 日本への留学生で最も多いのは中国からの人なんです。おそらく7割ぐらいじゃないかと。私も大学で教えていますけど、日本へはアメリカに留学できなかったから来たという人が多いんですね」


 留学の第一志望が日本ではないと?

 「そうなんです。その中国からの留学生たちが、日本嫌いになって帰国する例もあるんです。家を借りる時に保証人を立てなければならないなどで嫌な思いをして。もう日本にとって中国はなくてはならない存在なので、アジアの中で一体になって生きていく方法を考えないと、食糧問題とか環境問題とか日本に直接影響することもあるわけですから、長期的な視野でもっと色々行動すべき時だと思いますね」


 日本へ留学していた中国の人が、帰国して地方や中央政府の要職に就いた時に、良いイメージがないと、ことがなかなか進まないですよね?

 「そうですね。例えば私の教えている同志社大学では、先生が留学生のアドバイザーになる仕組みを作ったりして、色々な問題に対応しようとしていますが、そのようなことは、1人1人の市民が中国やアジアの人ともっともっと同じ立場で考えるようにならないといけないと。それが一番大きな問題だと思います」


 関西の企業のPR活動はちょっと消極的ではないかという指摘もありますが?

 「企業では差はないと思います。ただ東京というイメージは定着していますね」


 日本と言うと東京ということですか?

 「『関西』という言葉がまだ浸透していませんね。大阪とか京都とかのイメージはありますけれども。『関西』という言葉は、関西空港がありますけど、国も『近畿』という言葉を使っています。では『関西』を広く知ってもらうためにどうすれば良いかと言いますと、長い時間をかけて定着させていかなければいけないわけですから、それが難しいですね。サントリーやダイキンのイメージは定着しているわけですから、関西の企業がPR下手というわけではないと思いますね」


 かけるお金はかけて、正面から受け入れてもらおうということですね?

 「ブランドの定着のための努力はしなくてはいけないです。まずはイメージを訴えますよね。で、実際に買ったり、行ってみて良かったと満足すると、『じゃあ、もう一度』ということになるでしょ? それがどこかの過程で切れてしまうと、その先に進めなくなってしまうわけです。その部分はきちんと戦略的に構築するというのは大切ですね。
 WTOの話をしましたけど、FTAを結んで中国とアジアの国のパイプがどんどん太くなっていく中で、日本がそれに負けないためには、企業の努力も必要だし、関西としてもっと中国との関係を深めていかないと。それは政治とか行政とかの課題だと思います」

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■関西企業の環境や農産物生産技術が関係発展の鍵になる?

 中国側から見ての関西への課題は何ですか?

 「関西はマーケットとしては大変大きいです。2000万人以上の人がいて、経済規模も80兆円を超えて魅力的なんですが、まだまだその倍以上ある首都圏にかなわないです。
 そうすると、1つの府県だけでなく関西全体で、中国側がセールスに来たり進出する時にメリットが出るような形にしなければならないですね。
 関西の中でもそういう議論をしているんですけれども、中国の企業の進出を受け入れる時に、関西全体で『ここへ行けば、東京へ行くよりもこのようなメリットがありますよ』という戦略を立てる必要がありますね。『関西だと海も山もありますし、水もきれい。おまけにゴルフ場にも1時間以内に行けて、美味しい食事でざっくばらんに付き合いができますよ』というイメージが伝わっていないので、それをもっと伝えていかなくては」


 今後は関西と中国の結びつきはどうなっていきますか?

 「昨年起きた教科書問題などから、リスク回避のために、中国一辺倒でなくベトナムなど他のアジアの国に進出していかなければならないのではという心配する声もあります。中国は巨大なマーケットになりつつあってとても大事ですけど、ちょっと注意しながら見ているというのが実際あって、(懐に)飛び込んで心中するところまでは行っていないということだと思います。
 例えば中国の通貨・人民元の価値がどうなるのか。現在の中国には1兆円を超える外貨準備高があります。もっと人民元の価値を強くしようという動きもあります。そうすると、せっかく中国に進出したのに、人民元が強くなっては(コスト高になって)大変なことになるわけです。
 そのためにアジアの他の国へのリスク回避もしているわけですし、地域別の経済格差から、中国国内が分裂するのではという心配を持っている人もいます。そうならないように、世界各国が中国とのパイプをどんどん作ってきて、世界の経済的な仕組みの中に入ってルールを守っているわけです。また中国側も、経済運営をきちんとしないと大変なことになるというのはわかっているので、これまでは設備投資と輸出で経済成長を続けてきたのを、内需型に移しつつあるわけで、その中には銀行の不良資産の整理とか税務対策もしていますから、2010年の上海万博が終了したら中国が分裂・崩壊してしまうということはないだろうと思います。
 そういう意味では、お互いに情報交換も大切ですけど、関西の企業には環境技術や農産物を作る技術などさまざまな分野で協力できる分野があるだろうと思います。その技術を教えてあげるのではなくて、そこからまたビジネスが始まるわけですから、『ウイン・ウイン』という言葉がありますけど、お互いにメリットが得られる関係が今後ますます成長する中国とはできると思います」


 関西人が中国とのパートナーシップの先鞭となる可能性も大いにあり得ると?

 「現実に、世界で一番中国の経済発展に貢献しているのは日本であり、その中で一番進出して協力関係を築いてきたのは関西の企業ですから。関西の企業は、これからも未来に向かって中国との関係を良くしていくことができると思います」

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