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「ですから私が子供の頃なんかは、必ず味噌汁にはイリコが入っていましたし、で、イリコというのは今のように頭やハラワタを絶対とっちゃいけませんでした。それを残すと怒られましたよね、体が弱くなるということで」
出汁をイリコでとるのはわかりますが、出汁をとった後のシリコは捨てないんですか?
「捨てちゃあいけません。まだまだ大事なものがいっぱい残っています、イリコの中には」
お味噌汁の中にイリコが入っている?
「食べなきゃいけないんです、それも。
私なりの考えなんですけど、人間も、やはり生命の発生と進化の中で海の中の魚のような時期がありまして、それからさらに発展して今の形があるわけですけど、基本的には魚の時代の体内の微量栄養素の構成比と言いますか、特に日本人はすごく重なる部分があると思うんですよね。
ですから、私たちの身体が必要としている多くのものが、完璧な形でイリコの全ての部分に含まれている。それが先人の経験によって積み上げられてきた知恵じゃなかったのかなあと思うんですね」
出汁の次に味を調えるために、お醤油とかお酒とかミリンとか砂糖とか入れますよね?
「もう砂糖は絶対入れちゃいけないですね」
絶対ダメですか(苦笑)?
「ダメなんです。今、家庭料理に砂糖を加えるのが、あたかも日本の固有の食文化みたいに考えている人がいますけど、これは本当に戦後20〜30年にできあがってしまった変な常識なんですよね。
その背景としてあるのは、日本の素材から微量栄養素、つまり味がどんどん欠落していった。そして非常に形式的な下茹で、アク抜きの料理によって、さらに微量栄養素が欠落する。そうしたら今度は、食べ物は何にも味がしなくなってしまった。それで慌てて砂糖を入れ始めたというのが、私は間違いのないところだと思うんですね」
逆に言うと微量栄養素が豊富な食物はしっかりした味があるんですね?
「はい。ですから、私たちが子供の頃は、砂糖が料理に入るということはまずありませんでしたし、料理というものは微量栄養素をしっかり整えるという考えが、まだちゃんと残っていたんですね。
砂糖を使わなくても、イリコとかそういう出汁を基本にして、昆布とか鰹節、これは一番出汁、二番出汁なんてやっちゃいけません、最後まで入れてそれを全部食べる、それで色々な旨味を重ねていきますと、ひとりでに私たちの身体が欲しがっていた甘味と言いますか、本当に身体が安心する味わいというのが生まれてくるんですね」
ははあ、色々な食材を重ねることによって?
「そうですね。ただし、あくまでもイリコを中心としてということですよね」
イリコは、束ねる扇の要みたいなものですね?
「そうですね。これが欠落していたら、何にもならないんですね」
あと熱を加え過ぎるとビタミンなどは壊れてしまうと言われますが?
「はい、その通りですね。ですから私どもの料理では、軽くフツフツ煮ます。やっぱり強い火で煮立たせてしまうとビタミン類というのは壊れてしまいますよね。
玄米御飯を食べるにしても、よく皆さんは圧力釜で炊かれますけど、圧力釜はやはりビタミン類を壊してしまいますよね。
あとは家庭の電子レンジですね。それから冷凍庫の普及というのが、やはりビタミン類を大きく破壊しちゃっているんですね」
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