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07/12/04〜07/12/08 放送 バックナンバー
ニート支援の今
 
ゲスト:財団法人大阪労働協会小山謙一さん・岩崎功一さん 元ニート・小林聡史さん
聞き手:高橋大作アナウンサー
「ひきこもり」人間関係ゼロから脱出
カウンセラーが「自分探し」を手助け
今後のサポートの課題は就職先
ニートから立ち直ったことを糧に
社会が歩み寄ればニートは能力を発揮する
 来年発売される国語辞典「広辞苑」に、新たに加えられる言葉があります。「ニート」です。「職業に就かず、教育・職業訓練も受けていない若者」という意味のニートと呼ばれる若者たちは今、日本に62万人いると言われています。しかしこの「ニート」の若者が直面する就職問題に対して行政は支援を始めたばかりです。ニートに対する行政の支援はどうなっているのか、今後何が必要なのかについて財団法人・大阪労働協会の「ニート・サポートクラブ」に携わるスタッフと就職をめざす元ニートの若者に伺います。
■「ひきこもり」人間関係ゼロから脱出

 今日はニート支援の今ということで、元ニート状態にあった小林さん、そしてカウンセラーとしてサポートしてきた小山さん、さらにニートサポートセンターで事務方として支援をしてきた岩崎さんにおいでいただきました。
 小林さん、元ニートということですが、非常に明るい表情でいらっしゃるのですが、振り返ってそもそもなぜそんな状態に陥ってしまったのでしょうか

 小林さん「なんでと答えるのはなかなか難しいのですね。これという理由はないのです。なんとなくそうなってしまったという感じですね」


 働いておられて気が付いたら、行くのがいやになったという感じですか?それとも急にですか?徐々にですか?

 小林さん「それ以前の話をすると、まず学校に行かなくなったのです。不登校で。それからの流れですね」


 学校……。今はおいくつになるのですか?

 小林さん「28歳です」


 学校というのはおいくつのときですか?

 小林さん「高校3年生のときです」


 わりとその間は長かったのですか?

 小林さん「何年か……」


 その何年かの間はどのように過ごされていたのですか?

 小林さん「なかなか思い出せないですね。今思い出してと言われても『何をしていたかなぁ』と、時間の感覚はないですね、ほとんど」


 いわゆる引きこもり状態?

 小林さん「そうですね」


 その間『どうしたいな』と思っていた希望とかはありましたか?

 小林さん「なんにもないですね。もうほんま死にたいとか、そんなですね」


 今、思い出しても気が重くなるような?

 小林さん「今、思い出してよぉ生きてるなぁと思います」


 そんな状態からなぜ抜け出そうと思ったのか、抜け出せたのですか?

 小林さん「それも難しいのですね。これという理由もないのですよ。次第にそういう気持ちが出てきたというか」


 自然に湧き立ってきた?

 小林さん「そうですね」


 その間に家族との会話とかは?

 小林さん「そんなんないです。0ですね。人との会話もないです。人間関係みたいな(ものもないです)」


 じゃあ、こんな言い方はふさわしくないかもしれませんが、今の状態になっているというのは?

 小林さん「信じられないです。ようなったなぁと思いますね」


 その間を振り返ってみて、失ったものが多かったのか?

 小林さん「失ったものもありますけれど、得たものもありますね」


 得られたものというとどういったものでしょうか?  

 小林さん「やっぱり自分を見つめなおす時間がありましたね」


 なるほど。失ったものは何ですか?

 小林さん「それはもう、人間関係ですね。全く切れましたからね」


 もともと趣味であるとか、直接仕事に関係ないことでも(得意なことはありましたか)?

 小林さん「手先は器用でしたね。学校の美術の授業などは得意でした」


 今はそういうことを生かして働いていこうと思っているのですか?

 小林さん「そうですね」


 なるほど。この『ニートサポートセンター』に通い始めたきっかけは何ですか?

 小林さん「まず引きこもりの状態から抜け出すために、民間の支援施設に行ったのです。支援施設に行って、それからアルバイトを始めました。アルバイトを辞めてからもう少しちゃんとした仕事に就きたいと思って、支援施設から紹介してもらいました」


 このサポートセンターというところを。そのサポート施設、民間の支援施設に入ろうというのは、自分から行こうと(思ったのですか?)

 小林さん「うーん、それは親から『こういうところがあるよ』と紹介されました」


 なるほど、『ちょっと行ってみようか』と

 小林さん「そうですね」

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■カウンセラーが「自分探し」を手助け

ニートをサポートするカウンセラーの仕事は、まず何をするのですか?

 小山さん「彼の場合は、ある程度アルバイトをしてきて、そのあと少しブランクが空いて『次どうしたら良いか』と、『もう少しきっちりした仕事に就きたい』ということで来られたので、彼の持っている能力とか、何に興味があるかとか、どんなことを大切にしているのかという、いわゆる就職なり、自分の人生をどう考えているかという、そういうことを考えてもらおうと」


 いわば自分を掘り起こしてもらおうということですか?

 小山さん「そうですね」


 具体的にはどういった行動を?

 小山さん「彼に『小さいときからどんなことが好きやったか?』とか先ほど言っていましたように『手先が器用や』とかですね。『どういう本が好きや?』とか、『何にあこがれていたか?』とか、そんなことをずっと話をしながら本人に気付いていってもらうとか。
 もう1つは世の中に仕事を『それだったらこんな仕事がたくさんあるのだけど、まずは仕事ってどういうものがあるのか、そういう情報を集めようか』ということをその次のステップとしていくという(ことでした)」


 一言に『ニート』という言葉で片付けられているという部分もあると思うのですけれど、共通点やあるいはひとくくりにできないところはカウンセリングしていてどう思いますか?

 小山さん「彼の場合は一度アルバイトをしてきた実績があるのですけれど、来られる方のほとんどは、もしそう(アルバイトを経験してきた)だとしてもそのときにコミュニケーションがうまくいかずに、それで自信を失ったとか、いろいろ怒られて全体的な能力として自信がないという自己肯定感が無くなっている人がほとんどなのです。
 まず『自分の能力ってこんなことがあるのだよ』と『今までやってきたことは怒られることだけじゃなくて、こんな能力もあったよね』というようなことを思い出してもらったり、コミュニケーションについては別にプログラムがあるのですが、10〜15人くらい1週間に1度集まってもらって、雑談プラスセミナーみたいなことをするのですが」


 年代としてはどれくらいの方が多いのですか?

 小山さん「一番多いのは25〜35歳くらいの方が多いですね。なぜかと言いますと20歳くらいだと『まだ先があるわ』みたいなことで、家にいたり、ウロウロしていたりするのですが、25歳くらいになってくるとだんだん『これはあかん』『何とかせないかん』と。
 もう1つは親が定年とか、定年が近づいてくる。そんな中でプレッシャーがかかってくるということで来られる方が多いですね」


 小林さんはカウンセリングを受けている中で、思い出に残っているシーンとか覚えていらっしゃいますか?

 小林さん「印象に残っているのは、トランプがあるのです。いろいろ性格が書いてあるのですが、その中に自分の中にある性格を10枚くらい選ぶのですね。それで自分を客観的に見られるというのか」


 そのトランプにはどういうことが書いてあるのですか?

 小林さん「例えば、我慢強いとか、内向的だとか、そういうことが書いてあります。トランプは50数枚ありますね。その中から10枚選ぶというのがありました」


 並べてみて?

 小林さん「そうですね」


 そういうゲームを交えながら自分を掘り起こしていくということですか。

 小山さん「そうですね」


 どのような思いを抱えていると感じられますか?

 小山さん「就職したいというのは、私どもに来る方全員なんです。その中で自分にできることが社会に出るだけのものを持っていない、というギャップでずっと悶々としてきている。みなさんそうなんですね。
 そこをどう埋めるか。コミュニケーションもあるし、自分の能力が今の社会に太刀打ちできへんよ、という感じも持っているし、と一旦行動が停まってしまうと、すぐに2〜3年経ってしまうのですね」


 期間が長ければ長いほど、復帰・就職するのは難しいですか?

 小山さん「難しいということではなくて、本人がそう思ってしまう。熱意さえあれば行けるところもあるのですよね」

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■今後のサポートの課題は就職先

 自分の生きがいを見つけた元ニートの小林さんは、ニートの若者たちがなぜ就職を目指すのか、率直な気持ちを次のように語ってくれました。


 またお2人にお伺いしたいのですが、なぜそこまで就職にこだわるのか、小山さんから見るとどうですか?

 小山さん「就職ということにこだわるのは、自立という意味なんですね」


 小林さんにとっても就職=自立ですか?

 小林さん「そうです」


 親に頼るというのは、抵抗がありますか?

 小林さん「いつまでもできるかというとそれは無理ですよね。いつかは親が先に死にますし、そうなったらどうするのかということはありますね。そうなったら自立ということは必要ですよね」


 岩崎さんにもお話を聞いていきたいのですが、根本のところに立ち返りまして『ニートサポートセンター』のシステムを教えて欲しいのですが。

 岩崎さん「大阪府からの受託事業でして、平成17年10月に天満橋のエルおおさかにオープン致しました。カウンセリングルームを設けまして、そこでニート状態にある若者へのカウンセリング、それから保護者の方へのカウンセリングを実施しております。
 カウンセラーについては、キャリアカウンセラー、臨床心理士といった専門のカウンセラーによる相談が主になるわけですが、私どもが行っているのはカウンセリング事業以外にも、例えばニート状態にある方に接してカウンセリング事業につないでいく。
 あとは就労訓練事業といいまして、簡単な仕事をすることから始めてみよう、基本的な生活習慣の確立であるとか、仲間作りをしようという狙いでやっている事業なのです。
 例えば喫茶店であるとか、事業所のご協力がいるのですけれど、そこで短期間働いたり、自分たちでリサイクルショップの運営をするような事業をやっております。
 まず、自分のやりたいこと、できること、そこから見つけ出して、それで自分の興味などを探し出していただくことがこの事業のねらいでもあるのです」


 丸2年で見えてきたもの、あるいは問題点はどうなのでしょうか?

 岩崎さん「これは小山さんに答えてもらったほうがいいかもしれませんね」

 小山さん「やってみて実は80%は本人がひとりで来られるのですよ。あとの20%は家族の方が来られて、そこで家族の方のカウンセリングをしたり、家族にお話しして本人を連れてこられたり、ということなんですけれど。本人が80%来られるというのは、それだけ一人ひとりが『動かないといけない』と思っているし、そこまでは行動してくれているのだと思いましたね。
 それと問題点というのは、このように2年間ずっとやってきて、ある程度カウンセリングでとか、先ほど言いましたようにグループの中で少しずつ自信がついてくるというのは、ノウハウが蓄積して、あるところまではいけるのですが、やはり受け入れ先、実際の厳しい現実ですね。
 とりあえず、自信を持って行っても、やはり違和感があるのを感じたり、相手側が少しそういう風に(自信を持っている人間)見てくれることで、たくさん、実際の彼らの実力なり、能力なりを引き出していってくれると思うのですが、そうじゃない本当の表面的なものを見るとまた、過酷なところになってしまう場合も多いので、出口が厳しいなと思いますけどね」

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■ニートから立ち直ったことを糧に

 小林さんにとっては、今『出口が見えたな』という思いをお持ちですか?

 小林さん「そうですね。将来が見えてきたというのはあります」


 それはつまり目標があるということですか?

 小林さん「そうです。今、調理補助のアルバイトをしているんです。この春からまた調理師の学校に行きまして、調理師免許を取ろうと思っています」


 それは昔から思っていたことなんですか?

 小林さん「いえ、このサポートセンターに行ってからそれは思いました」


 やっぱりこれがしたかったのだと。

 小林さん「そうですね。自分にあったものというのが分かりましたね」


 なるほど。一方でやっぱり厳しい、補助といってもやはり怒られることもあると思いますし、現状抱える不安や悩みなどはどうですか?

 小林さん「仕事に関してはないです。休んでいる方がしんどいですね。休みの日のほうが。働いている方が楽です。やっている方が安心するというのですかね。休んでいるとすごく不安です。
 あと家族関係にはちょっと悩みはありますね。親とはあまりうまくいってないです」


 また、もしかしたらつまづいて、戻ってしまうのではないだろうかというのは?

 小林さん「それはないです。もうないですよ」


 なぜないのですか?

 小林さん「もうさんざんつまづきましたからね。もうあとは上がるしかないですからね。底はもう経験しましたから」


 今、小林さんは希望にあふれたことを言っておられたのですが、他の人の例はどうなんでしょうか?

 小山さん「卒業していった人でも、周りの人との関係というのは、やはり今、その環境の中で自分が適応しようとして、努力している最中ですね。卒業した方はね」


 こんなお2人を前にした言い方はふさわしくないかもしれませんが、小林さんから見て小山さんは何点のカウンセラーですか?

 小林さん「何点つけよかな。90点」


 すごいですね。

 小林さん「尊敬できる大人というのでしょうか。なかなかそういう人との出会いというのはないですね。尊敬できる、こういう人みたいになりたいなという大人には、あんまり今まで出会ったことはないですね」


 引きこもっていた時期もありましたけれども、そのときには小山さんのような大人が周りにいなかった?

 小林さん「そうですね。それは大きいと思いますね。10〜20代の頃にそういう人と出会えるかというのは大きいと思います」


 ニート状態になる前に小山さんと出会っていたらということを考えるとどうですか?

 小林さん「また違っていたと思いますね」


 小山さんから今の小林さんに望むことというのはありますか?

 小山さん「今のやろうとしている気持ち、新しい、自分のやりたいことを決めた。その中で、当然のことですけれどいろんなことがあるので、もっと打ちのめされることもあるだろうし、つらいこともあると思うのですけれど。
 彼がさっき言いましたように、今ニートであった時期からここへ来たと、ここまで来たという立ち上がりの部分を思い出してもらって、それに比べたらこれからのことは些細なことだと私は思いますので、そういうのを糧にして逆に、『それがあったからこれからがあるんや』という考え方をして欲しいなと思います」

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■社会が歩み寄ればニートは能力を発揮する

 全般的な話をすると、小山さんから見て元ニートに対して、今の社会は優しいものであると思いますか?

 小山さん「いや、優しくないですね。テレビを観ると『ニートって働らかへんやつや』と、『軍隊的な訓練をしたらいい』とそんな言い方をされる人がいたり、実際に企業のほうでも、社長さんの話を聞くと『ニートの方をお願いします』という話をすると、何を言っても『あかん、働らかへんやつやろ』という形でスパッと切られてしまう。そんなことがものすごく多いと聞いていますし、実際にニートだということ自体を毛嫌いしてしまう。そういう風潮はかなりありますから、厳しいなと思いますね。
 ただ私自身は、もうずっと会っていて、(ニートの方は)真面目でコツコツと粘り強いし、無口だけれども一所懸命やることを仕事とすれば、本当にやっていける人だと思います。ただ、今そんな仕事がどんどん無くなってきているので、合っていかない、マッチングしていかないというしんどさもありますよね。
 もうちょっと社会の方が歩み寄ることで、かなりの部分、能力を発揮する人はいますよ。今の世の中が、『コミュニケーション』とか『積極的に』とか、一所懸命面接でハードルを高くしてやるもんだから、いくら良いものを持っていても、それを超えない限り行けないのですよ」


 コミュニケーション重視ですよね。本当に。

 小山さん「面接で、なんかグジュグジュ言うてたらわからへんからダメ、みたいな。粘り強いとか、真面目にやるとか、コツコツやるとかなんて、私も会社員だったのですけれど、そのことの方が入ったら大事じゃないですか」


 確かにそうやなぁ。

 小山さん「そんなことを無視して、無視してと言うと変ですが、そのことをとりあえず置いといて、まず面接ではコミュニケーションができて、積極性が見えてということがハードルですから、ニートの人はそれを見ているのですね。そういうのを世の中が求めているのを知っているのです。だから行けない」


 今、確かにコミュニケーション偏重ですね。

 小山さん「ものづくりということだとすると、全然関係ないし、彼らのほうが、彼らの多くがそれに向いている可能性がありますよね」


 小林さんも今、一段階上がって希望にあふれているのですけれども、その中で社会に望むことはありますか?

 小林さん「ニートというのはメディアの影響で、さっき小山さんも言ったように『自分から働きたくない』とか、『怠けている』とか、『甘えている』とか。 はっきり言ってそれは全く間違いです。実際は働きたくないということはないですね。やはりみんな働きたいと思っていますね。でも自分が働くためにどうしたらいいかということは、一人で悩んでしまって答えが出せないという状態だと思います。そういうことを社会の人、メディアの人にもわかってもらいたいですね」

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