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07/12/09 07/12/11〜07/12/15 放送 バックナンバー
百貨店統合この1年、将来デパートはどうなる?
 
ゲスト:経済ジャーナリスト・須田慎一郎さん
聞き手:高橋大作アナウンサー
銀座・梅田への拠点作りが統合の理由
目的は「1兆円」と「経費削減」
女性と若者へのアピールが生き残る道
今こそ小売の原点に帰れ!
キタとミナミで百貨店大戦争!?

 今年、近畿に馴染み深い百貨店で経営統合が相次ぎました。9月には大丸と松坂屋が持ち株会社Jフロントリテイリングを設立して統合し、10月には阪急と阪神の両百貨店が、持ち株会社H2Oリテイリングで統合しました。また、大阪の駅ビルが新しく建設されれば入居する予定の三越も、来年には伊勢丹と経営統合することになっています。今年なぜ百貨店の経営統合が進んだのでしょうか?大阪の街の発展にどう影響があるのでしょうか?今週は経済ジャーナリストの須田慎一郎さんにお話を伺います。

■銀座・梅田への拠点作りが統合の理由

 今年はいろんな百貨店が統合したのですけれど、経営統合する大丸と松坂屋、阪急・阪神、大阪駅ビルに来る予定の三越と京都駅にある伊勢丹なのですが、まず大丸と松坂屋の(経営統合の)メリットは何でしょうか?

 「一番大きなメリットは、規模のメリットです。売り上げ規模が1兆円に達するということで、そのことによって仕入れ力を強化するとか、あるいはさまざまなコスト削減、例えば、倉庫や人件費。どちらかというと我々消費者の目に見えるところよりも、見えないバックヤードのところ、倉庫や仕入れ、物流のコスト削減が大きく図られるのではないかと思います。
 そしてもう1点隠れているメリットがありますが、これは大阪の人にはあまりピンと来ないのかもしれませんが、東京の一流の百貨店というと、銀座にお店があるということなんです。大丸は関西ではよく知られた、なじみ深い百貨店ではあるのだけれども、東京ではあまりメジャーではないのです」


 それが大阪に住んでいると、あまり感覚として分からないのですが。

 「その最大の理由は大丸が銀座にない、あるいは有楽町地区にないということが挙げられるのです。松坂屋というのは名古屋を本拠とする百貨店でありながら、実は銀座にも店舗を持っているのです」


 大丸にないものがあるわけですね。

 「そうすると大丸にとって見れば念願の銀座進出を果たせるという部分があると思います。ですから大丸と松坂屋を比べてみると、決してこれは対等合併ではないです。どちらかというと、大丸がある意味で吸収するような形になるのですが、なぜ松坂屋なのかというと、そういったところも念頭にあったのではないかと思います」


 松坂屋にとってのメリットはあったのでしょうか?

 「やはり松坂屋はこのままいっても、周囲がどんどん大型化していく中で、ジリ貧になってしまう。この銀座地区というのは非常に競争が激化しているのだけれども、その中でも松坂屋はこのままでは地盤沈下を招きかねないというところから、やはり規模のメリットを追求したということになると思います」


 関西人にとっては一番ショックな、衝撃が大きかった阪急と阪神の合併。これは今どうなのでしょうか?

 「これは企業カラーが全く違う、真逆の百貨店(同士)でしたから、非常に庶民になじみの深い阪神百貨店と、どちらかというと高級志向の阪急百貨店ということなのですが、ただこの事情としては、小売、百貨店側の事情というよりも親会社、鉄道会社の経営統合に伴っての(百貨店の)経営統合と考えてもらっていいと思います」


 まだそれぞれのメリットというところまで達していないと(いうことでしょうか)?

 「ええ。まず経営統合ありきだったのだろうと(思います)。その上でどうやってこれからメリットを出していくのか、ビジネスモデルを新たに組み立てていくのかということはこれからになると思います」


 なるほど。大阪駅に来る予定の三越と京都にある伊勢丹。こちらも大阪に住んでいるとなじみがないのですが、それぞれのメリットはどうなのでしょうか?

 「やはりこれは商圏、商業のマーケットを考えて見ますと、東京系の百貨店にとっても関西マーケットは無視できないのです。ではある意味でアンテナをどこに立てるのか、要するに伊勢丹・三越のショーウィンドーをどこに作るのか。これから近畿地方のビジネスモデルを組み立てていく上では、やはり大阪の一等地に出す必要がある。
 先ほど銀座の話をしましたが、大阪にとって東京の銀座に当たるところはどこなのかを私も考えてみたのですが、キタとミナミしかないと思います。やはりこれから大規模な再開発が進んでいって、新たに大きく発展を遂げる場所は大阪駅の北ヤード、梅田の北側なのです」


 まさに今あそこはゼロですからね。

 「ええ。これからどう発展を遂げ、再開発されていくのか。いずれにしてもここが情報や流行の発信地になるであろうことは間違いない。だとしたらぜひともここに店舗を1つ出すということが、百貨店経営者にとってはメリットがあったのだと思います」


 なるほど、こちらは攻撃的な(経営統合)?

 「ある意味で梅田の北側というのは、百貨店にとってこれから最激戦地になってくると思いますね」

 そうですね。今現在ある阪急、阪神、大丸が警戒しているということは取材をしていても確かに感じます。

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■目的は「1兆円」と「経費削減」

 そもそも百貨店はなぜ経営統合をするのかというところをお伺いしたいのですが。

 「これは先ほど規模のメリットと言いましたが、ここ最近の小売(業界)の状況を見ていきますと、これまでの百貨店は『場所貸し』なんです。要するに場所を貸して、その一部分の口銭をもらうということが百貨店のビジネスモデルだったのですが、ここ最近は自らが仕入れてきて、百貨店の社員・販売員が売るというスタイルに徐々に切り替わってきている」


 ブランドを買うという感じですね。

 「そうするとセレクトショップの方向に進みつつあるのです。実は今、小売の世界で一番成功しているのは、具体的な名前を挙げると『バーニーズニューヨーク』。ニューヨークでは百貨店的な位置づけにあるのですが、これが東京に進出してきて相当な成功を収めている。
 あれはセレクトショップ、どういった形態をとるのかというと、バイヤー(仕入れ担当者)がいまして、その目利きによって『これは売れそうだ』『これは非常にブームになりそうだ』というものを自ら仕入れてきて、それを並べて売るのです。これが消費者に受けまして、相当な人気を博しているし、どんどん伸びてきているという状況があります。
 今、小売(業界)に求められているのは『仕入れ力』なんです。いかにバイヤーが消費者ニーズを先取りして仕入れてきて、それを売っていくかということにかかってきているのです。そういった意味でバイヤーを早く育成していかなければならない。今はほとんどいませんからね。やはり経験やノウハウが必要なのです。
 一部成功している百貨店は伊勢丹なのです。伊勢丹はある意味で、三国一の花嫁ではないけれども、みんな伊勢丹と経営統合したいなと常に考えていた部分があります」


 そこはバイヤー力ですか?

 「ただ、一方で伊勢丹がなぜ成功したのかというと、バイヤーが仕入れに行くに当たって、相手のメーカーに対して『これだけ売ることができますよ』というプレゼンテーションをするのです。一定の売り上げ規模がないと、メーカーの方も『ここに出して大丈夫か』『独占契約しても大丈夫か』というようなことになってくるのです。そうすると売り上げ規模が大きくなれば、コスト削減につながるし、メーカーに対してアピールすることもできるということになるのです」


 全体の利益率が下がっているという非常に厳しい現実があると思うのですが、自分たちののれん、培ってきた名前を大事にしないのですか?

 「ただここは大きな誤解が、リスナーの方にもあると思うのです。どういうことかと言うと、阪急と阪神が合併して経営統合したとしても、例えば『阪急・阪神百貨店』とか『H2O百貨店』とはならないのですよ。要するに持ち株会社があって、その下に阪急百貨店、阪神百貨店がぶら下がる形になるので、阪急百貨店もそのまま『阪急百貨店』で残るし、阪神百貨店は『阪神百貨店』で残る。あるいは三越は『三越』のままだし、大丸は『大丸』のままという状況になるのです。
 見た目からはあまり変化はうかがえないと思うのですが、一旦裏に回ってみると、例えば物流会社が一緒であったり、阪急・阪神の倉庫が一体化した倉庫であったりとか、仕入先が共同であったりとか、裏方の部分で大きな変化が起こってくると思います」


 なるほど、見えないところで起こっているのですね。そんな中で高島屋は今後どうなるのでしょうか?

 「これは独立孤高を守っていくのではないかと思います。話が横道にそれるのですが、百貨店の4大グループ、阪急・阪神はこの4大グループには入っていないのですが、4大グループは全部売上高が1兆円を超えているのです。要するに1兆円を超えなければこの競争に勝てないのだと、どうも経営者が考えている節もありまして」


 1兆円はひとつの指標なのですね。

 「ええ、1兆円超を狙って経営統合が行なわれてきた節もあるのです。そこから考えると、高島屋は別に経営統合しなくても、もう1兆円というラインはクリアできているのです。そうすると高島屋としてこれから考えなければならないのは、新しいビジネスモデルをどう構築していくのかということに動いてくるのではないかと思います」

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■女性と若者へのアピールが生き残る道

 ここまで苦しくなってきた(百貨店)業界なのですが、百貨店の経営はなぜ今、苦しくなってきたのでしょうか?

 「これは消費者ニーズが大きく変わったということが挙げられると思います。老舗百貨店、例えば具体的に名前を挙げると三越という百貨店がありますが、売り場に行ってみても若い方、女性の方があまり見受けられないのです」


 そうですね。どちらかというと年配の方であったり。

 「要するに中・高年の方(が多い状況)なんですね。もちろん、お金を持った団塊退職世代や、年金受給世代がたくさん出てきているので、中・高年マーケットも無視できないのですが、やはり消費のリーダー役になっているのは、お金をたくさん使うことができる独身であったり、若者であったり、あるいは女性なんですね」


 やはり女性が大きいですか?

 「そういった顧客層にアピールすることができなければ、中・高年層は、言葉は悪いですがどんどんジリ貧というか、マーケット自体は縮小していくわけですね。将来展望が非常に苦しいのです。三越百貨店の経営者になって考えてみると『このままでは将来的に苦しいな』と。『経営状況もなかなか回復するめどが立たないな』と。『今までやってきたことでは厳しくなってくるのではないか』という感じがしますよね」


 いわゆる外商というのがありますが、私自身もやったことがないのですが、外商も減ってきているのですか?

 「外商というのは、どちらかというと古くからのお客さん、ずっとお得意様と言われているような人たち(が利用してきたこと)なんですね。しかも外商はカタログや商品を実際に持ってきて、自宅にうかがって販売するという形態をとっているのですが、もうそういったやり方は非常に古くなってきている」


 そうですね。インターネットもありますしね。

 「そうなんですよ。あるいは通信販売やテレビショッピングもありますからね。何も外商に頼らなくてもいろんな選択肢があるのです。しかもそれだけでは、持ってくる品物や売る品物に限界がありますから、徐々に消費者ニーズから離れていった部分がある。だから外商の落ち込みは非常に大きいと思います」


 店舗でいかに売るかということに力が入っているわけですね? 「いかにお客さんを店頭に呼び込んで、来てもらって、そして買ってもらうというところに大きくシフトしているのではないかと思います」


 私がよく百貨店に取材に行くのは、お中元などですが。

 「ブランド信仰ではないけれども、どの包み紙でお中元・お歳暮を贈るのかということは、消費者にとっては非常に重要なんです。だからどこを選ぶのかということでも、今回の経営統合の動きは出てきていますよね。
 今まで選んでもらってきたブランドが、目新しさがない、あるいは魅力を感じなくなってきて『お歳暮だったら○○』という意識が薄らいできて、やはり若者や女性に人気のある伊勢丹にシフトし始めている。相当な危機感があるのではないかと思います」

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■今こそ小売の原点に帰れ!

 そんな中で百貨店はどんな経営努力を今、しているのでしょうか?

 「今までは一等地に店を構えて、立派なゴージャスな建物を建てて、最上階でよくやる催し物、美術展や物産展をやって、企画を立てて『お客さんに来てもらいまーす』とそれだけで、あとは場所貸しをして『場所代を払ってください』という殿様商売、それで十分成り立ってきたのです」


 それが従来の形であったと?

 「ところがお客さんもそれだけでは来てもらえなくなって、ただ物産展をやっても『興味があるから行ってみるか』とそこを見ただけで帰ってしまうとか、あるいはバーゲンに行っただけで帰ってしまうとか、やはり売り場売り場でどういった魅力ある商品を並べていかなければならないのかというところに大きく変わってきているのです。
 百貨店として今まで屏風を、床の間を背にふんぞり返って殿様商売をやってきたところから、『では自分たちで商品を見つけて、仕入れて、自分たちの手で売っていかなければジリ貧だ』と。そういった意味で『場所貸し商売』から、商売の原点である『自分で仕入れて自分で売る』ということに切り替わってきたと思います」


 どんな努力が具体的には必要なのでしょうか?

 「消費者ニーズを的確に捉えて、つまり何が今、(消費者が)必要としているのか、欲しがっているのか、ブームなのか、まずそこを見極めた上で、それを仕入れてくるだけの交渉力、要するに仕入れ力を身につけることが重要だと思います」


 そのために自社で、バイヤーも大事ですけれども、プライベートブランドというのがありますね。ここも力を入れていかないといけない分野でしょうか?

 「ただ、プライベートブランドというのは、あまり消費者に受けが良くないのです。これは百貨店ではないのですが、かつてのスーパーマーケットでプライベートブランドを手がけた経緯があったのです」


 ありましたね。

 「ことごとく失敗に終わっているのですよ」


 そうですか?

 「安ければ良いとか、例えば、マヨネーズがあって、一流メーカーのマヨネーズと同じところで作っているのだけれども安いマヨネーズを並べたときに、なぜか一流ブランドのマヨネーズばかり売れていくのですね」


 そう言われればそうですね。

 「だから、消費者は品質と同時に商品の持っているイメージを大事にする。同じ品質であっても商品イメージを大事にして、モノが売れていく部分がありますから、例えばプライベートブランドを作ったところで、その百貨店そのものに魅力がなければ、あるいはそのメーカー以上の魅力がなければ売れないのです。そこで独自の商品開発をすることよりも、いかにそういったお客さんが魅力を感じているブランドを探してきて、それを並べるかということになると思います。
 かつて百貨店でもカシミヤのセーターやマフラー、あるいは私が記憶があるのは老舗百貨店でカフスだとか、ネクタイピンだとか置いてあるのを見たことがあります。ほとんど売れない。売れないからどんどん目立たない場所に移動していって、もう今やないのではないかと思います」

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■キタとミナミで百貨店大戦争!?

 今後、近畿の百貨店はどうなっていくでしょうか?

 「これは梅田という1つの大きなマーケット・商圏を舞台に、百貨店大競争時代に突入していくのではないかと、大阪駅を挟んで、北と南の大戦争が始まってくる。いったいどういった形で人の流れができていくのか、どうやって呼び込むのか、各百貨店の腕の見せ所になってくるのではないかと思います」


 大戦争ですか……

 「それに対して、難波にある高島屋がどういう戦略を打ってくるのか。ミナミはブランドショップが軒を並べるような展開になっていますから、そういったところを含めて新たに高島屋が戦略を出してくるでしょうし、要するに(大阪駅)北ヤードを中心とした大規模再開発、これに対しては消費者の方も地域・エリアに魅力を感じるでしょうし、この両者の激突になってくるのではないかと思いますね」


 キタの中で戦争が起これば、ミナミも?

 「巻き込まれていくと」


 北ヤードそのもの(の再開発)はまだ全然見えないのですが、どうなりそうですか?

 「北ヤードについては阪急とオリックスが中心になって再開発をします。北ヤードだけではなくて、大阪駅のホームの上の部分も再開発が一体化して進んでいく方向なのです。なおかつ西側が少し寂しい場所で、大阪中央郵便局があるところですね」


 今、あそこも変わろうとしていますけれど?

 「大阪中央郵便局自体も建て直し、低層階のほうは郵便局になるでしょうが、中・上層階は商業施設やオフィスビルになってくる。そこができると南北を結ぶような形で、西側は大阪中央郵便局の再開発、東側は阪急百貨店という形で、大阪駅を取り囲むような形で、ドーナツ型の一大商業ゾーンができてくるのではないかと。そこに対して各百貨店であるとか、あるいは小売であるとか、店舗であるとか、続々と参入してくるのではないかと思います」


 今、歩いていると工事中のところばかりですけれども、もう何年か後には全く違った景色が展開される?

 「また、アクセスの良さですね。大阪駅というところですから、京都、兵庫、あるいは奈良を俯瞰する中で、近畿一円という商圏を考えたときにあそこに出店するということはものすごく大きなメリットが出てくるのではないかと思います」


 今、1つの流れとしては魅力のあるブランドをいかに引き込んでくるかという流れがあると思うのですが、次の流れとして見えるものはありますか?

 「百貨店が今取り組み始めているサービスの1つに、コンシェルジェサービスというのがあります」


 ホテルではよく聞きますけれども?

 「これは会員制というのが大前提になっているのですが、今百貨店はポイントカードや会員カードをものすごく出しています。一見のお客さんとよく来てくれるお客さんを選別していこうではないかと。ある意味で上級会員、年間例えば100万円以上うちの百貨店で使ってくれるお客さんとか、そういった上級のお得意様になってくると、いろんなサービスを付加していこうではないかと。
 例えば、そういったお客さんに対しては、『レストランに行きたいのだけれども、日本料理が食べたいのだけれどもどこか良いところはないだろうか』とか『今度東京に行こうと思うのだけれども、ホテルを予約してくれないか』というような目に見えないサービスの提供、それがまた商品を売るというような相乗効果を呼んでくるようなところが出てきているのです」


 ある種、外商の発展形というか、スーパー外商のような感じですね?

 「なおかつポイント制でお客さんにも還元するというような形も出てきているのですね」

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