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国土交通省の事故調査委員会の最終報告についてはどう思われていますか?
「私が去年5月に『JR福知山線事故の本質』という本を、ある意味で緊急出版したのはひとえに事故調査委員会の最終報告書に間に合わせたいと思ったからなのです。事故調査委員会の委員の多くは大学教授で科学者なのですから、私の科学的な分析を読んで『自分たちは今まで、一体何をやっていたのだろうか』とはっと我に返ってくれて、今までの主観的で、本質に下りないような議論の弱さに気が付いてくれると思いました。
ところが私の本が出版されたちょうど1ヵ月後、6月28日に公表された最終報告書には、物理学に基づく私の意見は完全に無視されて、結局マスコミのJRの間接責任論を追認するだけでした。これは本当に残念なことだと思います。」
今お話を伺っていますと、未然に防ぐことができたのではないかと思うのですが。
「明らかに未然に防ぐことができました。107人の方々は亡くならずにすんだし、562人の方々は怪我をせずに普通に社会生活を楽しむことができたはずです。通常のエンジニアが、本当に普通に線路の軌道設計を淡々と、きちんと行うだけのことだったのです。
例えば薬局では、薬剤師はまず1人が調剤した後、もう1人別の人が必ずチェックしています。これは監査というのです。エンジニアの世界では当たり前のことです。この当たり前がJRでは行われていなかった。」
行われていなかった?
「そういうことです。」
新型自動列車停止装置(ATS−P)をつけていれば良かったのではないか、という話もありますけれど、その以前の問題ですね?
「その以前の問題です。確かにATSの配置も重要です。ATSがあるに越したことはない。ATSがあそこに最初からあれば、事故は確かに防ぐことができた。だけど、それ以前の問題として、まずは物理学に基づいて、運転士という技術の運用者がミスを犯したときにも重大事故が起きないように、線路軌道を設計するというのが、技術企業の基本中の基本です。」
仮に新型ATSが故障していたとしても、転覆しないような設計にしていなければならない、ということですね。
「その通りです。(カーブの)半径を600メートルにしなければならなかった、ということですね。」
名神高速道路が走っていまして、あの橋げたがあるために半径600メートルで造る、もしくは半径300メートルのカーブでなければ造ることができなかった、という話もありますけれども?
「これも不思議な議論で、実際に私は現場に行って、デジタルに地図をかなり大きく書いてみました。それで分かったのですが、現場の右カーブのすぐ横、西側の横になんと、幅員11メートルの非幹線道路があります。
これはほとんど車が通らない道路なのです。両側がほとんど閉じられていまして、言わば空き地のような状態です。そこが公道になっています。
半径600メートルを実際に書いてみると、ちょうどあまり使われていない道路の中に収まります。だから半径600メートルにすることができた、ということが言えます。」
では本当に安易に(新しい上り線を下り線の横に)つけてしまった、という印象がより強くなってしまいますね。
「その通りだと思います。これから警察の捜査がより期待できるところですが、少なくとも傍証からそういうことが結論付けることができます。」
ヒューマン・ファクターや企業体質の検証だけでは、次の事故を防ぐことはできないのでしょうか?
「はい、できないと思います。やはり、すべてこの事故を教訓にして、本質に下りるということを僕たちは学ばなければならないと思います。確かにヒューマン・ファクターや企業体質の検証はとても重要です。今回の事故でもそれは十分になされているので、それは心配していません。
だけど、肝心な科学的視点が完全に欠如しているのが問題です。今のままの状態ではまたこんな事故が、鉄道だけではなくて、他の産業でも起こる気がしてなりません。」 |