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08/07/22〜08/07/26 放送 バックナンバー
野菜が食卓から消える!日本の農業は大丈夫か
ゲスト:民俗研究家・結城登美雄さん
レポート:ABC阿部成寿記者
聞き手:高橋大作アナウンサー
民俗研究家 結城登美雄さん
食糧自給率4割以下!担い手の数と年齢が原因
農地改良と減反が農家のやる気を削ぎ落とした!
肥料価格の高騰でキャベツ1玉400円時代が来る!
『地域が支える農業』が消費者の望む農産品を産む!
都会の若者と農村の高齢者を繋ぐ仕事が日本を拓く!
 増え続ける海外から輸入される農産物。しかし輸入された農産物からは高い濃度の残留農薬が見つかるケースが最近増えています。改めて国産の農産物の安全性が見直されていますが、実は現在の日本の食糧自給率はわずか39%と、先進諸国の中で最低の数字です。「日本国内の生産では食糧が賄えない」日本。なぜこれほど日本の農業は厳しい状況になってしまったのでしょうか?今週は日本の農業の問題点とこれからの課題についてABCの阿部成寿記者が報告します。
■食糧自給率4割以下!担い手の数と年齢が原因

 先週の放送では、京都府南山城村(みなみやましろむら)の童仙房(どうせんぼう)地区在住の内藤浩哉さんから、過疎地の日本の農業の厳しい現状を憂える話が聞かれました。今週は、日本の農業の未来・今後はどうなるのかということがテーマです。
 さて、先日のG8=北海道洞爺湖サミットでも、世界的な食糧不足が大きなテーマになりましたが、阿部さん、日本の食料自給率はいま、39%なんですねぇ。

 「そうなんですよ。驚きです。40%を割っています。」


 半分にも満たない。

 「その自給率の割合は先進国の中でも最低なのです。トップは、先進国ではないのですが、今回のG8に参加したオーストラリアがなんと300%。10倍近くの開きがあるということなのです。
 それだけ、農作物に対して生産量が多いという地域、日本はほかの国の輸出によって頼って、我々は生きているということになります。」


 何が特に不足しているのでしょうか?

 「特に不足しているのはトウモロコシ、大豆。大豆などは我々みそとかしょうゆなどに使いますよね。それから、あとは油、なたね油など、よく使われるマーガリンなどの食用に使われるものがやはり非常に不足しているということになります。」


 オーストラリアが300%と聞きますと、ものすごく差があるのですが、世界の食糧事情と比べると、日本はどんな問題を抱えているのでしょうか?

 「主食としての米に関しては、なんとかいま、余り現象というのが生まれていまして、これは後ほど詳しくお話ししますが、それ以外のものが、とにかくすべて不足している。
 つまり、例えば肉にしてみても、これを日本の国だけで作ろうと思っても全く無理です。飼料という材料がいりますね。エサがいります。こういうものが全くないということになると、我々は9日に1回しか肉が食べられない。
 たまごに関しても、7日、1週間に1個しか食べられない。それから、大豆の話もしましたけれども、みそ汁も2日に1杯しか飲むことができない。これは農林水産省の統計なのですが、こんな事態になります。」


 それだけ、輸入に頼っているということなんですね。

 「はい。そういった中で農業が、いま非常にひっ迫している。何が問題なのかということについて、識者の方を紹介したいと思います。
 東北地方の600以上の農村を見てまわって、日本の農業問題に非常に詳しい、民俗研究家の結城登美雄(ゆうきとみお)さんという方です。結城さんはいまの日本の農業に、決定的に不足している点、問題点について伺いました。」


結城さん:
「1億2770万人の日本人がいますね。その食べ物を支えている人は何人いるかというと、現在農業は312万人なのです。それと漁民が21万人ですから、わずか2.6%くらいの人が残りの食べる人を支えている。
 もっと、ある意味で深刻かなと思っているのは、その300万人の農業者の7割が60歳以上だということ」

阿部記者:
(日本の農業の)担い手が60歳以上ですか?

結城さん:
「はい。45%は70歳以上なのです。だから、よくニュースでこの頃話題になっている『後期高齢者』と言いますけれども、実は『後期高齢者』が中心になって日本人の食べもの、農業を支えているという現実があらわになってきたわけです。」


 農業といえばちょっとお年寄りの方がやっているイメージがありましたけれども、こんなに60歳以上が7割ですか!

 「高齢化が進んでいるのですよ、実は。おじいちゃん、おばあちゃんががんばってくれているから、我々はようやくご飯にありつけるというような状況というのが、見えてきている。
 そういうことを考えますと、10年後にはそれくらいのお年の方がどうなるかということを考えてみてください。(農業の)担い手がいなくなれば、」


 後継者がいなければ、作る人がいなくなりますよね。

 「支えられないのです、日本の食生活が。こういう状況が今、ひしひしと我々の身近に実は迫ってきていると(いうことです)。」


 こういう状況だったのですね。そもそもどうしてここまでになってしまったのでしょうか?

 「この話については、このあとしっかりとお伝えしたいと思います。」

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■農地改良と減反が農家のやる気を削ぎ落とした!

 さて、食糧の日本の自給率は39%で、しかもなんと、7割以上が60歳以上の方が作っている。危機的に食べ物を作る人が不足している日本の農業なのですが、日本政府はどんな政策をしてきたのでしょうか?

 「疑問に思いますよね。お金はちゃんと用意しているのです。毎年農業関連に使われる予算は約2兆6千〜7千億円というのが、現状です。ところが、この2兆6千〜7千億円というお金が何に使われているかと言いますと、全体の3分の2が農業関係の土木工事、いわゆる土地の改良などに使われているのです。
 つまり、山あいに行きますと小さな田んぼや畑があります。それだとなかなかたくさんの収穫が難しいのです。そういうところをきちんと改良して、水はけもよくして、土地の面積を大きくして、水田だったり畑だったりして、それで収益を上げようと。そのための整備費としてお金をかけている。
 ところが皮肉なもので、整備費をかけてちゃんとしたのにもかかわらず、いまの農業に携わる人の人口と年齢といいますと」


 肝心の人がねぇ。

 「いないという状況になってきました。そうなってくるとなかなか、『私たちも年だしね』という感じで、やる気が起きないという状況が生まれます。
 ところが、やる気が起きないという理由はほかにもあるのです。米を例にとります。米は1970年代から減反(げんたん)政策が行われました。そのころからなのですが、徐々にコメ離れ現象、パン食や洋食になり、なかなか3食、ご飯(お米)を食べるという状況がなくなってきた時期なのですが、それで余ってきた。
 なんとか米を作る量を減らさないと、米の価格がそのときは国を通じて決められていて、標準価格米というのが(ありました)。ですから、それが落ちると逆に収入が落ちてしまう。だから収穫量を減らそうということを国は政策として行ったのです。」


 そうなってくると収入は確保されるのでしょうか?

 「そうなると減らされる分だけ手当てが必要だということで、他の大豆とか麦などの栽培に切り替えてほしいという政策をとりました。これを転作と言いますが、転作の補助金も、国はお金としてちゃんと予算を組んでいました。
 ですから、そんなに大幅に減るということはなかったのです。農家側からすると、『国がそういうのだからしょうがない』ということもあって、米作りをやめたということもあったのですが、でもやはり本音の部分は、自分が自信を持って売れるような、良い米を作って売りたいなという気持ちはあったようです。」


 やはり、米に対するこだわりというのはあるのですね?

 「あります。やはりプライドがあります。良い米を作れてまずは農業者として1人前だというように、どうしても農業関係者のみなさんの意識としてあるのです。これから抜け出せない。
 実は理由がもう1つありまして、13年前の1995年、食糧管理法というのが撤廃されました。米の価格などをこれで決めていた法律といってもいいと思いますが、これによって自分たちが作ったお米に自分たちが値段をつけて売ることができるようになったのです。
 そうなると、自分たちが例えば手間ひまかけて、手塩にかけて育てて、それで品質が良いということで、消費者に受け入れられる。良い値段、高い値段で売れるということで、農家の皆さんはすごく自信を持ったわけです。自分たちだけでそういう組合、会社のような事業組織を作って、都会の人たちに売るということを始めました。
 こうなると、いったんは米を減らそうという政策をとっていたわけですが、自分のところで別に作って、良いお米を生産して(市場に)流れる。そうすると結果的には米の量は一緒なのです。」


 管理されていない。

 「減ったことにならなかった。そういうことになって、ますます米余り現象、米離れということが一挙にくっついた形で、なかなかお米を作っても売れない、お金にならないという状況になった農家の方もいるのです。」


 なかなか難しいのですね。

 「ところが米作りだけではなくて、野菜などの農作物に関して作るという農家の皆さんはたくさんいます。その皆さん全部含めてある問題が、いま持ち上がっています。」


 ある問題とは何ですか?

 「それは肥料です。」


 肥料ですか?

 「この肥料の問題については、次でお伝えしようと思います。」

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■肥料価格の高騰でキャベツ1玉400円時代が来る!

 さて前回は、いま農家を襲っている問題の1つに肥料の問題があるということがありましたが、どういうことですか?

 「まず、肥料というのは2種類あるということを高橋さん、わかりますか?」


 有機肥料と化学肥料ですよね。いわゆるたい肥とかを使った天然の有機肥料と化学的に作られた肥料ですよね。

 「ただ、これをどのように使われているかといいますと、自分たちが手塩にかけて育てる分だけ、非常に手間がかかる。だから自然に近い形で作られるのはやはり有機肥料を使って作られるということになります。
 実際に買う消費者の方もこれは覚悟して、お金はちょっと高いですけれども、買われる方も多いと思います。
 一般的なものは化学肥料。なぜ化学肥料が使われているかというと、収量予測がつく。つまり、どれだけこの肥料を使えばとれるか、野菜が獲れるか、米が獲れるかわかるということなのです。」


 均一に収穫できるのですね。

 「そうです。なぜそれをしなければいけないかといいますと、例えばスーパーなどが買い付けをしますよね、農家に対して。その時には同じような大きさのトマトやナス、キュウリ、お米もそうです。それをどれだけ仕入れることができるか、それに合わせなければならないということがあります。」


 同じ規格のものを作っていかなければならない。

 「そのために化学肥料を使わざるを得ないということなのです。それから化学肥料を使って、結局収入を安定させるというのはどういうことかといいますと、農業をするには、種とか苗などがいりますよね。それからいま言った肥料もいります。
 それ以外に例えば、田んぼを耕す機械が必要です。機械を動かすためには燃料が必要。こういうもののためのお金、運転資金、資材費といわれるものなのですが、これを確保するためということになると、どうしても化学肥料ということになってしまいます。」


 なるほど。

 「ところが化学肥料の価格にいま、異変が起きようとしているのです。詳しい話を農業問題に詳しい民俗研究家の結城登美雄さんに伺っています。」


結城さん:
「化学肥料の中の窒素(ちっそ)、リン酸、カリというこの3つが3大肥料といわれますけれども、これがここにきて、この1年くらいの間で(値段が)2〜3倍くらいに跳ね上がっていますね。」

阿部記者:
いま、おっしゃった窒素(ちっそ)、リン酸、カリという物質ですが、これは日本国内では採れないということなのですか?

結城さん:
「少なくとも、リンやカリは難しいですね。」

阿部記者:
それでは輸入に頼らざるを得ない。

結城さん:
「そうですね。確かリン鉱石というのは、世界に輸出しているのはアフリカのモロッコが半分を占めていると思います。そういう意味で、ロシアとかカナダ、中国もそれを持っているのです。
 中国が人口13億で、農業が少し減っているために、食糧を安定させるために、どうしても国内農業を充実させるんだとなると、肥料があるからあんまりリン鉱石を自国のために使うために、海外への輸出を制限しなさいと輸出税をかけていくと、それに呼応してさらにそういう肥料の値段が上がっているというジレンマが、日本の農業にジワジワと、あるいはこれからひたひたと襲ってくるだろうなと思っています。」


 「結城さんがおっしゃるように化学肥料の原料となるものが輸出されなくなった。日本では採れない。だから海外からそれを受け取らないと、日本では農業が成り立たないのだ、という状況になってくるわけです。」


 価格がこの1年で2〜3倍とおっしゃっていましたけれども、もう影響がすぐに出てしまうのでしょうか。

 「そうなんです。それがどうやら今年の後半、来年の春先くらいから影響が出ると。値段がそのまま肥料の価格が転嫁、詰まり物の値段にプラスアルファされるということになると、消費者が買う物の値段は、例えばいま、キャベツ1玉がおよそ200円ですよね」


 それでも高いですよ。

 「これが倍になるとすると」


 400円ですか?

 「可能性もあるということです。」


 とんでもない状況ですね。

 「そういう状況になってくる。そうなると農家の方の中から、『もう農業をやめた』という声が出てくるかもしれません。『農業やめた』という理由が実は人手だけの問題ではないのです。資金の問題なのです。」


 資金、ですか。

 「つまり日本の農業というのは、これまでおじいさん、おばあさんが担っていたという人手だけの問題ではなく、資金の部分、高齢者の方の年金をつぎ込んで、農業に従事していたという方も結構いたのです。」

 そうだったのですか。

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■『地域が支える農業』が消費者の望む農産品を産む!

 高齢者の年金で支えられているというような農家の状況ということですが。

 「涙ぐましい努力ですね」


 明るい話はないのですか。

 「最近、『地産地消』という言葉がありますよね。つまり、その地域で採れた野菜などをその地域で住む消費者、皆んなで味わいましょうということですが。」


 よく耳にしますね。

 「露地栽培の野菜などがスーパーへ行くと、例えば兵庫県産、大阪府産など、『地物』と書いてある、あれですね。こういう形で、何とか地元の食材をみんなで育てて食べていこうという考え方があります。で、このことを進化させた考え方があるのです。理念と言ってもいいのではないでしょうか。」


 どんなものですか?

 「この考え方について、農業問題に詳しい民族研究家の結城登美雄さんに伺いました。」


結城さん:
「もう一度昔のように、支え合えるような関係、そんなものを組み立てられないだろうかというように、話し合いの場を持つような動きが農村に出てきたと思います。ちょっと難しい言葉に聞こえるかもしれませんけれども、『産業としての農業』とか、『起業としての農業』を考えるみたいに『C・S・A』という言葉がありまして、これはコミュニティ・サポーティッド・アグリカルチャー(Community:地域 Supported:支えられる Agriculture:農業)ですね。これを訳せば『地域が支える農業』となります。身近な人たちと一緒に食べ物を支えたり、生産したりしていく、そういう大義がこれからあちこちに出てくるのではないでしょうか?」


 「農業問題に詳しい民族研究家の結城登美雄さんなのですが、この『C・S・A』という考え方、理念は、実は欧米から伝わってきたものなのです。
 ところが、欧米もどこからこの理念をひねり出してきたかというと、日本の家族経営の小規模農業をベースにして、作りだしたということです。」


 もともと日本に合ったものを逆輸入ですか?

 「そうなんです。考え方の逆輸入。その逆輸入した理念の実践があるのです。これは何かと言いますと、『道の駅』というものがありますよね。全国各地の国道沿いにある。そこですごく目玉になっているものに、農産物直売所というものがあります。」


 休みの日に行ったら家族連れでみんなで来ていますね。

 「本当に地元の野菜を皆さんに食べてもらいたいということで、名前入りで売られていますよね、誰が生産したかということを書いて。」


 スーパーみたいに形はそろっていないけれども、何かおいしそうに見えますしね。

 「その農産物直売所は今から十数年前、1990年代に始まりまして、いまは全国に1万ヶ所あると言われています。その1万ヶ所ある農産物直売所に農産物を提供しているのは、地元の小規模な農家ということになります。
 この小規模な農家の皆さんは政府の枠組みからいくと、大規模な農家ではないのです。」


 そうですよね。

 「政府としては『もう面倒を見ませんよ』という範ちゅうに入る人たちなのですね。つまり、兼業で収入を得ながら、自分のところで作って家族で食べて、隣近所に分け与えて、というくらいのレベルで農業に従事している人たちです。その人たちが野菜などを持ってくるわけです。
 ところがこれがとても良く売れる。形は悪くても味がおいしかったらいいじゃないか、ということで、皆さんこれを買っていくわけですね。これには実は大きなテーマが隠されているということなんです。先ほどから伺っている民族研究家の結城登美雄さんのお話です。」


結城さん:
「農家の人の思いとしては、『僕らのためにぜひ作ってくださいよ』と言えば、農家は張り切ります」

阿部記者:
そういうところに日本の農政、国は数字だけでないがしろにしてきたということですかね。

結城さん:
「そうですね。他の中国のは安いよとか、市場ニーズはそうだよみたいな、生産、食べ物を最初に作る人たちの気持ちを、僕は逆なでとは言いませんけれども、あまり配慮してこなかった。」


 なるほど。

 「国が配慮してこなかった分、消費者はすぐに反応した。つまり、素直にそれを受け入れたということなのですね。
 つまり、作っている農家の方々の気持ち、手塩にかけて育てました。大規模な、スーパーとか流通には弾かれました。でもおいしいのです、というところを消費者がくみ取って、それが1万ヶ所の農産物直売所なったわけです。」

 そんなにあるのですねぇ。

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■都会の若者と農村の高齢者を繋ぐ仕事が日本を拓く!

 さて、危機的な状況に陥っている農家の皆さん、農村なのですが、我々が買って食べるということ以外に、未来はないのでしょうか?

 「実はあると思います。あると信じたいのです。というのは、まず人手の部分、この部分を何とか頑張って絶やさないようにしないといけないと思うんです。60〜70歳代の方々の手助けになるような労働力といいますと、やはり若者の力が必要だと思うのですが、なかなか過疎といわれる地域だと子供がいない、また外に出て行ってなかなか戻らない、ということになると、まったく違う地域から若者に入ってもらうという考え方もできると思うのです。」


 そうならざるを得ませんよね。

 「ですから無理やりその若者に『来て下さい』と引っ張ってくるのではなくて、アピールできるものは何かと考えなければならないと思うのですが、実は、危惧していた人手不足の問題で、若者の方から農村に目を向けているという傾向が最近出てきているのです。
 何かというと、『生きがい』という考え方なのです。若者にとって、いったい自分が何者であるか、今後何を目標に生きていけば良いのか、自分は何がしたいのか、こういうものを見失いつつあるというような都会での生活。これから離れて何か自分が見つけ出したいという気持ちがすごく強いようなのです。
 実際私は南山城村の童仙房(どうせんぼう)地区というところを取材しました。先週放送した中で、地域社会がとっても豊かであるという話をしました。世代を越えてみんなで頑張っている。例えば農作業に関わったり、街の行事に関わるということを皆さんしている。
 そういう部分に若者が今、とても魅力を感じているようなのです。民俗研究家の結城登美雄さんも同じように話されています。」

結城さん:
「限られた条件の中で、精一杯生きている、一所懸命生きている姿の持つ尊さ、みたいなものに若者が惹かれるわけです。
 世の中を見て、良い考えを持ち、いい顔で生きている、そういう人生の姿を見て、若者が関心を持って徐々におじいちゃん、おばあちゃんたちのいる村に近づきつつあります。」


 なるほど。精一杯生きる、ですか。

 「そうです。地域の農村のお年寄りには、皆深い知恵がある。人生経験がある。達人ですよね。そういうところに触れて、自分たちが何が幸せなのか、本当に何を自分たちは得たいのか、そういうところを考えるような方、若者が増えてきている。
 単に勝ち組・負け組という、その社会的な地位や収入だけで、都会ではどうしても、差別とまでは言いませんが、区別されるところがあります。それとは違う価値観を持ちたいのだということを、どうやら皆さん思っているみたいなのです。
 そういう中で、最近よく取り上げられます、ひきこもっている方、ニートと呼ばれる方、そういう若者の皆さんも、職業体験をしてこういう農村に入ってくる例も増えてきています。そういう方々に対して農村が何ができるかということなのですが、今後の動きとして結城さんは次のように話されています。」


結城さん:
「農業では食えないが農はやってみたい。自分の手で生きる一番の基本を身につけながら、足りないものはどうするかというときに、おじいちゃんの介護がある、おばあちゃんの代わりに何か荷物を運ぶ。あるいは環境の仕事をする。そういう意味で、村のおじいちゃん、おばあちゃんたちの弱っていく力を若者たちはカバーして、それをちゃんとした手当をもらって、農業をカバーすべく、村の中の兼業の形というのも、これから出てくるのではないかなと思っています。
 ですからそういう意味では、長いこと過疎地に住んでいたおじいちゃん、おばあちゃんたちと、都市が息苦しくて、展望が見えなくなった若者たちの接点によって、新しい村の形が開けていかないだろうか、そのための仕組みを本当は僕らも、あるいは制度も応援すべき時代が来ているのではないだろうかと。」


 まさにいま求められていることですよね。

 「日本の農業、社会、地域力、農業力、これをとにかく衰退させないためにも、歯止めをかけるという意味でも、希望を持って取り組みたいものですね。」

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