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08/09/23〜08/09/27 放送 バックナンバー
今年のコメは豊作!でも農家は大ピンチ?
ゲスト:東京財団上席研究員・山下一仁さん
聞き手:阿部成寿アナウンサー
豊作=過剰生産は、減反政策の失敗!?
「減反」は専業農家に不利な政策
今の農地面積は終戦直後より少ない!
米価を下げて農家に所得補償すれば外国米を買わなくてもいい!!
米価を下げれば海外でビジネスチャンスが生まれる!!
 カビや農薬で汚染されたものが食用に出回っていたという問題が、世間を騒がせていますが、これは輸入米の問題です。一方で日本のコメはどうなのでしょうか?幸いにもコメは豊作が予想されています。しかし、農家は頑張ったのに「豊作貧乏」になってしまうのではないか、という話があります。どうしてこんなことになってしまうのでしょうか?
今週は、元農林水産省の官僚で現在、東京財団の上席研究員である山下一仁さんに日本の農業政策についてお話を伺います。
■豊作=過剰生産は、減反政策の失敗!?

 お米ですが、今年は非常に作付けが良いということで、たくさん取れるという見方が出てきています。われわれ消費者にとってはおいしいお米がたくさん取れて良いなと思うのですが、作る方、生産者はそうは言っていられないというところで?

 「いま、生産調整・減反政策をやっていまして、水田面積が大体260万ヘクタールから、270万ヘクタールくらいあるのです。そのうちの100万ヘクタール以上を生産調整、お米を作らないという政策をやっているのです。
 去年、同じく価格が落ちたので、生産調整を強化すると。100万ヘクタールを10万ヘクタール追加して、110万ヘクタールで(生産調整を)やろうとしているのです。ところがものすごく、官民挙げて生産調整の強化ということでやっているのですが、実は追加分の7割しか達成できていない、ということで過剰作付けがあるのです。要するに生産者としてもう、減反政策を守らない人が増えてきている。
 さらに今年は豊作で、作況指数というのは100が平年作なのですが、102くらいになりそうだと、2%くらい上回りそうだということなので、相当作り過ぎることになるだろうと、そうすると、市場経済に任せると値段が下がると」


 減反政策が始まったというのは1960年代?

 「(1960年代)の後半ですよね。本格的に始まったのは1970年です。」


 それからずっと進めてきて、お米の価格を維持するために作らない田んぼを増やした。いわゆる休耕田を増やしたということですね?

 「昨年からこの減反政策というのは、誰のためにやっているのかと。要するに価格を高く維持するという政策ですから、消費者のためではないですよね。
 では生産者のためだろうと。生産者・生産者団体が責任を持ってやるのが筋だろうということで、農協・生産者団体に実施をゆだねたわけです」


 ところがそれは数字的にはうまくいかなかったと?

 「農協自体のシェアというのは5〜6割くらいしかシェアを持っていないのです」


 取れた米をすべて集めるという部分でいうと全体の6割と?

 「したがってこれはカルテルですから、本来でいえば独占禁止法違反なわけです。そのカルテルを、生産調整ですから供給を制限しましょうというカルテルをやろうとしているのですが、そのカルテルというのはほとんど100%くらいの生産のシェアがないとうまくいかないわけです。
 5〜6割しかもっていないところがカルテルをしようとしたってうまくいくわけがない。これは当たり前のことだと私は思いますね」


 実際に値段的なことを言いますと、1俵=60キロの単価で国はどれくらいのお金を農家に対して渡していたということになるのですか?

 「これは食糧管理制度(食管制度)というのが、昭和17年(1942年)からずっと1994〜95年くらいまで続いていたのです。これは政府が米の値段を決めていたわけです。
 このときが大体、最高60キロ(=1俵)2万円を超えていたのではないかと思うのです。ところが食管制度を廃止したというところから徐々に下がり始めて、いまは基本的には60キロ1万4〜5千円くらいの水準まで下がっているということです」


 60キロ1万4〜5千円だと、燃料費、肥料がいま、高騰していますよね。とてもこれはまかないきれないという額でしょうか?

 「必ずしもそうとは言い切れないです。生産者にもいろんな生産者がいますから、たしかに極めて零細な、兼業農家ですね。本当はサラリーマンだけれども、週末だけ農業をやるという人は、規模が小さいわけです。
 規模が小さいし、そういうサラリーマン農家の場合は土・日しか時間がありませんから、たとえば雑草が生えたとすると、雑草をなくす・駆除するために何をやるかと言いますと、農薬をまくわけです。
 ところが、専業農家の人は月〜日曜日まで労働時間がありますから、労働で雑草・害虫をうまく管理する。だから、農薬に依存しない農業ができるわけです。しかも規模がでかいですからコストも低いわけです。たぶん6千円くらいでできると思うのです。そうすると十分やっていける」

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■「減反」は専業農家に不利な政策

 では、困っているというのは、いわゆる兼業農家ですね?

 「そういう人たちが食管制度のときに守られてきたわけです。というのは米価が高いですから、街で米を買ってくるよりも自分で肥料・農薬をかけても、高いコストをかけてもまだペイするわけです。
 だから本来ならばそういう人たちが、零細な農家が、兼業農家ですから本業はサラリーマンなわけです。兼業農家という言葉はあるのですが、フランスで言いますと「パートタイムファーマー」なわけです。パートタイムファーマーが居残ったのです。
 一番かわいそうなのは専業農家で、この人たちは米で食べようとしたのですけれど、食管制度で高い米価政策をやったために規模が拡大できなかったのです。規模が拡大できないから、コストも下げられない。コストが下げられれば所得は増えるのですけれども、コストを十分下げられないから所得も増えない。
 結局、昔は小農=貧農だったわけです、戦前の世界は。ところがいまは小農=富農なわけです。農外所得のほうが多いですから。だからむしろいわゆる大規模といっても、アメリカとかフランスに比べるとものすごく小規模なのですけれども、5ヘクタールの農家でも苦しいと。そういう専業農家のほうが、実は所得が少ない。むしろ兼業農家のほうが所得が高い。
 いまは大農=貧農なわけです。そういう政策の失敗で結果を招いてしまったのです」


 小規模な兼業の人の割合は全体の何%くらいですか?

 「数からするともう9割くらいですね。農家戸数でいうと9割くらいだと思います。販売でいくと、もちろん大規模な人のほうがたくさんの米を作りますから、大規模な人のシェアが大体4割くらいですかね。したがって小規模の人のシェアは6割くらい。
 けれどもこれは米だけなのです。大規模な人のシェアが4割しかないというのは。ほかの野菜とか酪農とか、麦とかの、米以外のあまり守られていなかった農業の部門では大体8〜9割くらい、本当の専業的な農家がやっているのです。
 むしろ大規模な農家、いろんな人がいるのですがむしろ米価がもうちょっと下がったほうが良いと。なぜならばもう少し米価が下がると零細な人が農地を出してくれると。自分で作れないですから、もっと借りて作ってくださいということで出してくるでしょうと。
ですから大規模な専業農家の中には、もうちょっと米価が下がったほうが良いと。そうすると自分たちが農業の規模を拡大してコストを下げられますから」


 そうすると今年の豊作は大規模で、きちんと正面から、真正直に米づくりをしてきた人たちにとっては、安くなって良いのじゃないかということですね。

 「そういうことになるでしょうね。しかしあまり安くなると、結局そういう人たちも打撃を受けるわけです。長期的に緩やかなトレンドで安くなればいいのですが、一気に安くなると大規模な人の方が影響をうける。米でたくさんの所得を稼いでいますから、米の値段が下がると一番影響を受けるわけです。
 それでは、アメリカやEUはどうしているかと言いますと、価格が下がった分に対して直接支払いという財政で面倒を見ているわけです。たとえばいま、1俵(=60キロ)1万4〜5千円しているのですが、その値段と生産調整をなくして、1万5千円というのは生産調整をして維持している値段です。
 生産調整をやめると、私が昔試算した結果では1俵(=60キロ)9500円くらいまで下がるのです」


 大幅に下がりますね?

 「大幅にというか、それで下がりますから零細な農家は農地を出してきますね。いわゆる主業農家=専業農家の人は米価が下がるので、地代を負担する能力がなくなるのです。したがって農地を引き取れないということで、耕作放棄をしているのですが、そういう主業農家の人に限って米価が下がった分の直接支払いをやっていけば、地代負担能力も高まりますから、農地を引き取ることができる。
 農地は耕作放棄されずに、ちゃんと維持管理できる。これはいざとなった場合にまさに食糧安全保障ということで、国民が飢えなくてもすむ、必要な農地が確保できるということになるのです」

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■今の農地面積は終戦直後より少ない!

 いま食糧安全保障という話が出ました。実際大規模化のために休耕田や耕作放棄地を、そうならずにまとめ上げるということは大きな政策として必要なことですよね?

 「そうですね。それを昔から、本当に農政の本流と言われた人たちは目指したわけです。実は農林水産省に入った法学士、法律出身の第1号は後に民俗学者になった柳田國男だったわけです。 柳田國男は何を目指したかというと、当時の零細な農業構造をいかにして改善するかということが、柳田國男の頭の中の一番にあったのです。
 彼は2ヘクタール以上の農家を作るのだと。極端な大農でもない、極端な小農でもない、農業だけで食べていける、ちゃんとした農家を育てるのだというのが、農政の本当は本流だったのです」


 その形がなかなか実現できずに、ある意味休耕田と言われる土地が転用地という形で他に流れてしまって、結局草ぼうぼうと?

 「やはり減反政策をやるまでは、1970年くらいまでは水田面積がむしろ増えてきたわけです。水田面積が減少し始めたのは1970年に減反政策をやり始めてからなのです。
 したがって、米が余る。水田が要らない。そうすると、零細な兼業農家の人たちは、農林水産省は麦や大豆を作れというわけですね。それは自給率を上げる道だからということで、奨励金を出して麦・大豆など他の作物の作付けを奨励したのですが、零細な農家の人は米を作る機械を持っていますけれども、大豆を作る機械とかは持っていないわけです。それでもし、投資をしようとするとますます赤字になってしまうわけです。
 結局、大豆を植えても収穫しない。これを『捨て作り』といっているのですが、そういうことが起こったり、完璧に耕作放棄をしたり、そういう形で農地を農地でなくしたわけです。これは日本の農地面積が減少した1つの大きな原因です。
 日本の農地面積は1961年に609万ヘクタールまで増加したのです。大体戦後500万ヘクタールちょっとくらいあったところから、609万ヘクタールまで増えたのです。そこからどんどん減って、今は467万ヘクタールしか残っていないのです。
 この数字はどのくらいの数字かというと戦後の荒れで飢餓が生じたわけですよね。あのときに人口がわずか7000万人しかいないのですが、500万ヘクタールあったのです。
 いまは1億3千万人いて、500万ヘクタールを切っている467万ヘクタールですから、本当にあの終戦のような事態が起こったらどういうことになるのかというと、相当危機的な数字になるわけです。
 そういうように食糧安全保障に不可欠な農地面積をどんどんなくしてきたわけです。実はその609万ヘクタールから110万ヘクタール造成していますから、実際減った面積は250万ヘクタール。
 いまの水田面積とほとんど同じくらいの面積を農家はなくしてしまった、日本の農業はなくしてしまったわけです。その半分は工業用地とか住宅地への転用です。これは農地法とか、農地をしっかり守るという法律が十分機能しなかった。
 それともう1つは減反を中心とした政策によって耕作放棄が増えた。これは耕作放棄が林に返り、山に返って農地を農地でなくしていってしまう。
 将来を展望すると食料自給率の向上ということを掲げていますけれども、それよりも、自給率の向上というのは、こんな飽食をやって、牛肉をたらふく食うし、マグロもたらふく食べられるし、エビもたくさん食べられる。この現状で100%は意味がないわけです。
 本当は海外から入ってこなかったときにどうするかということが、本当の食糧安全保障なわけです。終戦直後の状況ですよね。そのときにどれだけの食糧を供給することができるか、日本の農業だけで(食糧を供給できるかどうか)ですね。
 そうすると基本は農地資源なのです。ところが農地資源はどんどん減少していますから、本当に必要なのは食糧自給率向上の目標ではなくて、農地面積の目標を私は掲げるべきだと思うのです。そのために何をしなければならないかというと、減反政策をやめるということです。
 減反政策をやめて、価格が落ちた人には直接支払というやり方で、これは現にアメリカやEUがやっているようなやり方をやればいいと」

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■米価を下げて農家に所得補償すれば外国米を買わなくてもいい!!

 いま山下さんがおっしゃいました、アメリカやEUと決定的に違うというのは、農業に従事する人たちに対しての、作ろうという気持ちをずっと持たせて、大きな広い面積で作らせようという土壌作りというか、その部分に力を入れているというところが決定的に違うところでしょうか?

 「フランスはものすごく自給率が上がったのです。これはEUが共通農業政策というのをやって、自給率が1960年位には100%を切っていたのが、いまは120〜130%という水準になってきているのです。
 それは日本と同じように高い価格で農家を保護しようとしたのですね。ところが日本の米政策と違うのは、向こうは作りたいだけ作らせて、余った、できたものを輸出市場で処分したのです。輸出補助金ということで、国際市場で処分したわけです。
 ところが日本の場合には価格が高いから、当然生産が増えて消費が減るわけです。そこの部分を日本は減反をしたわけです。縮小する需要にあわせて生産を縮小した。これは日本とEUの決定的な違いです。
 だからなぜ日本は自給率が下がって、EUは自給率が上がったかというと、政策の違いが一番大きい。
 それからもう1つの違いはEUもアメリカも価格で農家を保護しようとする政策ではなくて、直接支払というやり方で、財政で保護するというやり方へ転換したわけです」


 その財政で、財源で収入を補填(ほてん)するという話が出ましたが、日本の農政で食料に使う財源は、いったい何に使われてきたのかということが、ラジオをお聴きの皆さんは思われていると思うのですが?

 「農林水産省の予算は年間3兆円くらいあるわけで、減反の奨励金は農家に行くのです。減反の奨励金は大体いま、1600〜1700億円くらいかけて米価を高く維持しているのです。
 ところが私が言ったように、主業農家(=専業農家)の人だけに米価が下がった分の価格差を直接支払という形で補填してあげれば、同じ値段ですむわけです。だから同じ1600〜1700億円くらいですむわけです。
 片や生産調整・減反に対する助成金を与えてまで、1俵(=60キロ)1万4000〜1万5000円の米価を維持するのが国民経済的に良いのか?片や同じ額を主業農家だけに払って米価を1万5000円から9500円まで下げるのが国民・消費者にとって良いのか?財政負担額は同じです」


 それから昨今言われるところで、米の備蓄制度がありますよね。その備蓄することによって管理する費用もあります。それから農業の分野でWTO(世界貿易機関)の規制もあって、無理やりでも米を海外からある程度引き取らなければいけない。これに対する予算立てというのも莫大なものがあります。

 「どうですね。しかもそのミニマムアクセス(最低輸入機会の提供)で77万トン輸入しているのですが、ミニマムアクセスの受け入れを合意したときに、国内の需給に影響を与えないと。要するに国内で処分しないという閣議了解をしてしまったわけです。
 したがって、国内で売れないものですから、将来的には海外の援助とか、えさ用の米とかで処分してしまうわけです。
 あるとき日本経済新聞で言ったのは、売却収入を除くと、保管経費や外国から買ってくるときの経費を含めてコストとしては年間500億円かかっているという」


 500億ですか!

 「ところが米価の国際価格は9900円なのです。中国産米で買っている値段が60キロ(=1俵)で。9500円まで下げるとどういうことがおきるか、77万トン輸入しなくて良いのです」


 必要ない?

 「あれはミニマムアクセスの機会を保障しているわけだから、国内の値段が安いのだったらわざわざ高い外国産米を買う必要がないわけです」


 当然そうですよね?

 「現に中国も、WTOに加入してからミニマムアクセスを、米で500万トンくらい設定したと思うのです。ところがほとんど輸入していないですね。逆に輸出しているくらいです。
 それはなぜかというと、国内の価格のほうが低かったからです。だからアメリカも一切、それについては何も文句は言わないです」

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■米価を下げれば海外でビジネスチャンスが生まれる!!

 「さらに今回のWTOで、関税引き下げの例外を主張しているわけです。そうすると、そのペナルティとして、消費量の5%の米をさらに追加して輸入しなければならないのです。それは900万トン消費量があるとするとさらに45万トン。いままでの77万トンに加えて45万トンを、だから123万トンをミニマムアクセスで買わなければならない。
 そうすると今の価格・米価を維持しようとするとさらに財政負担がかさむということですよね」


 無駄なことをしていますね?

 「まったく無駄なことです。そこが価格で農業を保護するというところから、従来の食管制度から1960年代以降、価格で農家を保護しようとして米価をジャンジャン上げたわけです。価格で農家を保護するのだというやり方から脱却できないわけです。
 価格で農家を保護するという考え方をやめて、アメリカやEUのように財政で保護するのだというやり方に変えれば、話はぜんぜん違ってくるわけです」


 国の頭の中の論理の考え方を変える。そのへんがちゃんとできないと、割を食うのは生産者はもちろん、消費者みんなそうですよね。

 「日本の農業も困るし、国民も困るし、生産者も困るのです。だからEUとかアメリカ、特にEUなんかは、1990年代半ばに、1992年に大改革をやって、価格を下げて直接支払をやって、しかもあの時ものすごく成功したのは、アメリカから輸入していたえさ用の穀物を、値段が下がったもので域内の穀物で代替してしまったのです。
 ということは価格を下げるというのは、新しいビジネスをつかむことができるということです。
 日本も価格を下げれば、国内の需要だけではなくて、海外の需要をつかむことができる。国内の需要はどんどん縮小します。
 これまで40年間で1人あたりの米の消費量は半分に減ったのです。ところが今まで人口が増えてきましたから、1人あたりの消費量の減を人口増が若干相殺してくれたのです。
 ところが今回は人口も減少しますから、日本の農業にとって、特に稲作農業にとって、1人あたりの消費量の減と、人口減がダブルできます。国内の農業はどんどん、国内の食用の需要はどんどん縮小するということです」


 ではそのグローバル・スタンダードの市場に打って出るためにも、値段が下がって、その中でどうやっていくかということは?

 「価格を下げることによって、輸出というビジネスチャンスがつかめる。そうすると日本農業にも展望が出てくるわけです」


 全体の9割を占めるという兼業の方々にとっては、価格の急激な下落ということはかなり痛みを伴うかもしれませんが……。

 「ほとんどサラリーマンの人たちですから、実は米の販売収入は110万くらいあるのだと思うのです。ところがコストが100万くらいかかっていますから、実際は10万くらいしか、あるいは14〜15万くらいしか所得はないはずなのです。
 ところが、米の販売収入というのは所得だと思い込んでしまうわけです。だから140〜150万くらいは所得だと思い込んでいるのです。そうするとものすごく大変だということで、米価を何とかして維持すべきだということで、農協を突き上げて、農協はさらにそれを農林族議員を突き上げて米価を維持しようという政策をするわけですよね。
 それは本当はその人たちも、専業農家が農地をずっと集積して、コストダウンができれば、専業農家の所得が上がるということですから、そうすると地代の負担能力も高まるわけです。地代収入の増加ということで潤うわけです。
 実際EUも、耕作者に直接支払をやったのですが、実際直接支払は出し手の地主にほとんど帰属したというのが、OECDの分析であるわけです。
 耕作者・主業農家に直接払うということと、その直接支払がどこに帰属するのかというのは別問題なのです。EUの直接支払というのは地代の上昇で、地主・農地の出し手のほうに、今で言うと兼業農家のほうに行くのです。
 EUができて、何で日本ができないのか。これは僕のシンプルなクエスチョンです」

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