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08/09/30〜08/10/04 放送 バックナンバー
今そこに迫る危機!新型インフルエンザにどう備える?
ゲスト:
国立病院機構災害医療センター病態蘇生研究室長
原口義座(よしくら)さん

聞き手:
阿部成寿アナウンサー
医療・警察・ライフライン、関係者総がかりで研究!
戦前のスペイン風邪に匹敵!新型インフルエンザの猛威
感染者との距離は1メートルに!飛沫感染の予防策
明確な指針なし!新型インフルエンザ患者へのトリアージ
今年はみんなでマスクを!自分を守ることが社会を守る。
 世界中で懸念されている新型インフルエンザの大流行。爆発的にウイルス感染が拡大するというこの事態を、専門家は『パンデミック=フルー』と呼んで警戒しています。人から人へ感染する新しいウイルスの発生がもはや時間の問題と言われる中、WHO=世界保健機関など国際機関や各国は、新型インフルエンザの人への対策に苦慮しています。今週は新型インフルエンザの大流行、『パンデミック=フルー』に国はどう対処しようとしているのか、私たちは日頃からどう備えればよいのかについて、国立病院機構災害医療センター病態蘇生研究室長の原口義座(よしくら)先生に伺います。
■医療・警察・ライフライン、関係者総がかりで研究!

 原口先生は厚生労働省の新型インフルエンザ対策の研究班長をなさっているということですが、具体的に原口先生が取り組んでいる研究の内容はどういうものですか?

 「新型インフルエンザというのが非常に心配されているわけですけれども、ものすごく世界中に広がるのではないかという、パンデミック(感染爆発)という見方もあるのですが、その際には医者も医療従事者も社会も企業も学生もみんな巻き込まれるということで、そういうときにはどういう対策をとるのが一番必要なのかということを研究しています。」


 この研究はいつからされているのですか?

 「基本的に今の研究は今年から3年の計画ですが、私自身は新型インフルエンザの問題の元になるだろうと考えられている、鳥インフルエンザに関して4〜5年前から研究を進めてきております。」


 もともと先生は、ウィルス感染とか、災害時の病気にかかった方々への治療を専門的にされていると?

 「そうですね。私自身は災害医療という観点から災害でいろんなたくさんの人が巻き込まれるときにどうすべきかということについて、またその代表の一つとして大規模の流行病というのを対象にして医療側から良い対策を立てようという考えで進めております。」


 医療側から立てると言いますと、医療に携わっている医師とスタッフがどのように病気と立ち向かえばいいか、ということをまず軸に考えておられるのですね。

 「基本は今おっしゃったように、医療側がどのように活動すれば一番有効かということになるのですが、ただ自分たち医療側だけではなくて社会全般に目を向ける形で、社会機能を保つというとちょっと大げさですが、私たちはその一端を担いたいということで研究しているわけです。」


 社会機能全体をどうにか災害から守りたいということになりますと、いろんな各方面の方々との連携が必要になりますよね。実際先生が率いていらっしゃる班のメンバーの方々は、医療関係者の方が軸ということでしょうか?

 「基本的には医療関係者、と言いますか直接医療に携わる人たちが3分の1。それから警察・消防・自衛隊というふうな、国をある意味で守るという形の人たちが何分の1か。ライフラインとかを守る立場の人たちや、それから鳥インフルエンザが元だということが考えられるわけで、鳥や獣の共通の感染症ということに詳しい専門の先生方にも加わっていただいています。」

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■戦前のスペイン風邪に匹敵!新型インフルエンザの猛威

 そもそも新型インフルエンザは、今の原口先生のお話にもありましたが、渡り鳥などの鳥を媒介としたインフルエンザから起きると言われていますが、新型インフルエンザが決定的に普通のインフルエンザと違うところ、実際に何が非常に恐ろしい、脅威だと考えていますか?

 「鳥インフルエンザがおそらく突然変異という形で、人間にもうつるようになるだろうと言われているわけですけれども、その脅威というのは実際には起きていないということで難しいところもまだいっぱいありますし、脅威を、ただ『怖い』と言うのは必ずしも僕は好きじゃないのです。ただ少なくとも現在インドネシアなども含めて東南アジアで、鳥インフルエンザにかかって亡くなられた人がかなりおられて、しかも感染した人の50〜60%が亡くなられているという、とんでもなく高い死亡率も報告されているということで、これがもし新型という形で、人にうつりやすくなってきたときには世界中にうんと広がるだろうと。
 そして死亡率についてはいろいろ意見も分かれるのですが、若干は高いかもしれないし、そうすると、やはり常に思い起こされるのが第一次世界大戦後に起きたスペイン風邪です。世界中で何千万と、正確な数字はともかく、日本でも何十万と、アメリカでも南北戦争の死者の倍くらいの患者さんが亡くなられたということがあるものですから、やはりこれは慎重になるべきだろうと考えています。」


 まさに現代の医療の中で最も、驚異的に広まるという部分でも脅威ですし、広まる理由というのは、やはり人の行き来があるからということになるのですね。

 「人の行き来ということが、たぶんスペイン風邪が流行ったときと大きく違う。最も違うのは、人の行き来の能力はものすごく向上した。ということは、ウィルスから見ても簡単に世界中飛びまわれると。ウィルス自体が飛び回るわけではないですけれどもね。
 それと同じことがSARS(サーズ:重症急性呼吸器症候群)ということで、もうこれは5年前ですかね。それくらい前だと思いますけれども。」


 新型肺炎という言い方をされましたね。

 「そうですね。これが良い警鐘だと。良いという言い方は悪いかもしれませんが、警鐘を鳴らしてもらっているのじゃないかなと僕は考えているのです。」


 実際に新型インフルエンザにかかってしまった場合なのですが、患者の症状、それからどういう経過を経るのでしょうか?

 「基本的には、普通のインフルエンザとそんなには違わないだろうということが、逆に非常に紛らわしくて、問題だということにはなっているのですね。
 それで、普通に熱が出たときにはやはり、上気道の気管支関係の症状が出るというときにはより注意しなければならないのですけれども、検査が少しずつ進んできていますから、一応インフルエンザのH5というのが感染したらしい、というところくらいまで比較的早くわかるようにはなってきたということですけれども、診断上はなかなか難しい面は残されていると思いますね。」


 新型インフルエンザが蔓延(まんえん)した場合、いろんなシミュレーションがあると思うのですが、被害想定はいったいどれくらいになるという予測があるのですか?

 「いろんな想定をしています。ちょっと正確な数字は僕もわかりませんが、厚生労働省では60数万人の死者の想定もありますが、それでも専門家のグループの一部ではまだ甘いのではないかという意見もあります。」


 その甘いという理由はどういうことでしょうか?季節などの要因も入ってくるということでしょうか?

 「やはり一番甘いというのは、我々としてはつらいところですが、新型である以上何とも言えないということになるわけですね。」

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■感染者との距離は1メートルに!飛沫感染の予防策

 その具体的に感染を予防するためのマニュアル作り、対応策というのはかなり話し合いはできているのですか?

 「十分ではないと思いますけれども、マニュアル作りもものすごく大事ですね。それはどういうふうに対応するか、どういう準備をするかという問題の両方が大事ですし、それから従来から『タミフル』という薬が予防の中心になります。タミフルを一応服用してから対応するということです。
 それに『プレ・パンデミックワクチン』というものが効果を期待できるのではないかということで、一番最前線の人に打つということに意味があると考えております。」


 いま出ました、『プレ・パンデミックワクチン』。『プレ』というのは前という意味ですね。『パンデミック』というのは流行。流行する前に打つワクチンということですね。

 「本当に流行したときは、『パンデミック』という状態です。その『パンデミック』の状態で作るのが『パンデミックワクチン』になりますが、まだ実際には起きていないので、パンデミックになったときに有効かもしれないということで、鳥インフルエンザから作ったワクチンを『プレ・パンデミックワクチン』と現在言っておりまして、それがまあ、ちょっとこれも異論もあるのですが、一定程度有効だろうと我々は考えております。」


 直接的にウィルスが広がる要因となるのは、人と人とが接触の回数・範囲ということが問題視されていると思うのですが、こうなりますと例えば、電車やバスといった公共交通機関などを患者が利用した場合には、非常に恐ろしい数字になってきますよね。
 実際感染するという部分の、具体的な範囲というのはあるのですか?患者を中心とした何メートル以内とか?

 「いろんなシミュレーションがあるわけですけれども、今おっしゃった公共交通機関の人たちは非常に慎重に真剣に考えてもらっておく必要があるということで、メンバーにも入ってもらって議論をしています。」


 具体的にそういう話は何か出てきていますか?例えば電車やバスを停めるとか。いろんな対処の仕方はあると思うのですが?

 「まだ検討中であるのですが、基本的にはできるだけうつらないようにするには、例えば(感染者と)1〜2メートルの距離を置くとか。これはラッシュではちょっと無理ですので最悪の場合は列車を停めなければならないという場合もあるでしょうし、駅を閉鎖しなければいけないという場合もあるでしょうが、その前の段階で、各企業ごとにできるだけ交通機関を使わないようにしようと。どうしても必要な人は車で動くようにしようというところから取り掛かっているところですね。
 ですから今、東京のラッシュの電車なんかではとても、もちろんマスクなどの基本的なことは必要ですけれども、それだけでは十分にはいかない可能性は考えなければならないということで、それを研究しているところです。」


 実際ウィルスが飛散する、うつる範囲というのも、ある程度、患者を中心に何メートルかという間隔を置けば、非常に確率は下がるということですか?

 「はい。このうつり方にもいろんな種類がありまして、でもごく簡単に言いますと飛沫(ひまつ)感染というものが今一番考えられています。空気感染となると非常にややこしいのですが、飛まつ感染だと1メートル離せばだいたい大丈夫だろうということです。例えばどうしてもオフィスでもテーブルや机が必要であれば、1メートル以上離したところで人が並ぶというように勤務するという形をすれば、かなり感染の可能性は下がるだろうと、とりあえずは考えられています。」


 実際に病気にかかっているかどうかはわからないけれども、流行が起こったということであればそういう措置をとってほしいということですね。

 「そうですね」

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■明確な指針なし!新型インフルエンザ患者へのトリアージ

 実際に不幸にも、例えば人がたくさん集まる都市部で、こういう新型ウィルスを持った患者が発生した場合、それが不幸にして勢いを持って広がった場合、医療現場はいったいどう患者のみなさんに対応するかということなのですが、実際に治療するということになると、助かる・助からないという判断ももちろん必要になりますよね?

 「実際に患者さんが多数出て、それで先ほど何千人も、何万人も亡くなるという話になりますと、多くの患者さんが医療施設に来ます。そういう人たちをある程度、重傷度別に、あるいは緊急度別に分けるという『トリアージ』という概念を組み込まないといけないということになります。」


 今、先生から『トリアージ』という言葉がありました。これは阪神・淡路大震災のときもそうですし、JR福知山線脱線事故のときもそうでした。災害医療でこれは最近非常に欠かせない要素になってきていますね。それと同じ手法をこれは使わざるを得ないということですか?

 「基本的には、医療の対応できる能力を超える患者さんが発生したときには、いかに多くの命を救うためには、優先順位を付けざるを得ないのです。地震のときの患者さんもそうですし、東海村臨界事故みたいな災害のとき、それに地下鉄サリン事件のようなときでも必要だと考えています。」


 実際『トリアージ』というのは、札(タグ)を色分けしているのですね。それで助かる、助からないと重傷度別の色分けをしてある。このタグの色を決めるというときには、非常に判断が難しいと思うのですが?

 「結論的に言うと、非常に難しい面があります。一番急ぐのは赤タグといって、赤色のタグを付けます。この人たちはその場で早く処置をしないと命にかかわるという場合です。
 それで2〜3時間あるいは数時間待てる、あるいはちょっとした処置でちょっと待つ時間を伸ばせるという人には黄色のタグを付けます。
 で、もうほぼ大丈夫、自分でも歩けるし、あるいは家へ帰っても大丈夫という人たちは緑のタグを。そしてこの人はもう救うことができませんというときには黒タグでということで、4種類に分けます。
 その基準に関しては、2つのことを強調したいのです。問題点というか難しい点があります。1つは赤のタグの人は一番急ぐわけですけれども、医療体制が十分あるかないかによって、医療資源が十分にあるかどうかによって(救えるか救えないかということが)変わってくるということです。これもお分かりになると思います。
 もう1つの問題点は、新型インフルエンザの場合には一見、ちょっとした熱があって軽い人に見えるのではないか、という意味で、インフルエンザとパンデミックのときのトリアージに関しては、またさらに困難な点が残されていると思っています。」


 これはやはり、新型インフルエンザの病態というか、どういう症状を経るのが分かっていないということが、問題なのですね。

 「おっしゃることが一番大きな問題だと思いますね。2番目は潜伏期というのがありまして、症状が出てくるまで時間がかかります。ですからその間はなんでもないように一見みえたり、あるいは熱があってもそれほどひどい熱ではなくて、普通の風邪を引いたくらいの感じのときもあるだろうと考えられるので、そうしたときをどういうふうにトリアージすべきかというのは難しいものがあると思います。」

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■今年はみんなでマスクを!自分を守ることが社会を守る。

 さて、インフルエンザが蔓延(まんえん)してしまった場所というのは、患者と医療現場だけではなくて、実際にかからなかった人たちの生活も一変するという状況が生まれますよね。

 「それはものすごく重要な面で、1つはパンデミックで、インフルエンザが蔓延したときは普通の家庭でも生活ができなくなります。それを維持しなければいけないということと、もう1つは最初のときに、例えば50%くらいの人が感染したとしても感染しなかった人も残っています。そういう人が第二波、第三波という形で感染する危険性があるということです。
 それを頭に置いておかないと、例えば『もう大丈夫だろう』と思って仕事を始めるとまた感染してしまったという危険性もあるので、そういうことも含めて情報伝達も非常に、こういう機会も含めて、情報をしっかり伝えるということも大事ですし、皆さんも心積もりを持っていてもらうということが大事だろうと思っています。」


 第二波、第三波の感染から自分の身を守るという、予防的な部分でいろいろ大切なことは出てくると思います。決定打ということが今はもちろん無いと思うのですが、いざという場合、どういうふうに対処したら感染から身を守ることができるのか教えてください。

 「基本的には人との接点を避けるということが中心になりますけれども、『スタンダードプレコーション(標準予防策)』という言葉をお聞きになっている人がいるかもしれません。アメリカのCDC(疾病管理予防センター)というところから指導しているのですけれども、やはりマスク、手洗い、先ほどもちょっと言いましたけれども人との接点をできるだけ減らすために距離をとるということですね。 うがいが有効かどうかは、ちょっと異論があったりもするんですども、基本的にはうがいも僕自身は良いと思います。
 それから、感染の疑いのある人に接するときには手袋をするとか、そういうことをある程度皆さんが知識として持って実行することで、個人個人を守ることにも有効だろうと。やはり基本として大事なことだろうと思っています。」


 個人で自分たちの身を守ることが、社会を守るということですか?

 「その通りですね。自分たちを守ることの積み重ねが、社会を守る。社会全体の立場から見れば、また情報伝達の問題とか企業の自分たちの活動をどういうふうに、どこまで制限して、どこは残すかとか、というような基準を考えておくということが必要だと。
 その両面からいくのが大事だろうと思っています。」


 普通のインフルエンザにかからないために、流行にかからないためにということで、最近はシーズンになりますとみなさん、使い捨てのマスクをされますよね。あまり大流行がここ1〜2年ないということがよく言われますけれども、これも、もしかしたら練習になっているのでしょうか?

 「そういう意味では非常に大事な訓練になっていると思います。マスクもいろいろ専門的にはありまして、本当に確実なのは『N95』というマスクがあるのですけれども、これはちょっと息苦しくて、そう簡単に長いこと使うわけにはいかないですから、普通のサージカルマスク(外科用マスク)という言い方をしますけれども、普通のマスクでもある程度は有効だと思います。」


 サージカルマスクというのは、普通の薬局・薬店で買うことができるのですか?

 「売っていると思います。」


 普通に売っていますか?

 「はい、そんな高いものではないと思いますし、常備しておいて使ったら、この場合はあまりケチらないでどんどん使い捨てにするということでお勧めしたいと思います。」


 災害などに備えて、自分のカバンに忍ばせておくというのも必要かもしれませんね。

 「はい、非常にいいことだと思います。」

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