そもそもどういった調査なのですか?
「『日本総合検診医学会』という学会があるのです。そこで、男と女、若い人とお年より、5歳きざみの男女別、年齢別の正常範囲を作ろうというプロジェクトがありました。そこで全国から70万人の検診結果を集めて分析したのです」
項目はどういった(ものがあるのですか)?
「項目は25項目で、みなさん普通に検診とか人間ドックで測定される血液の中の成分とか、血圧とか、肥満度、そういうものについて全部カバーしているわけです」
その中で出た結果として、コレステロール値というのが低いと死亡率が高くなっているという結果が出たと?
「それはまた別の研究で、これは70万人のデータではなくて、いくつかの市町村の人を追跡する研究がもう1つあるのです。それで、それぞれの検診結果ごとに将来どういう病気になるか、死亡率はどうかということを調べると。
そちらのほうで、日本人はコレステロールが低い人の方が死亡率が高い。その死亡原因はガンと肺炎、うつ病による自殺などである、という結果が出てきたということです」
一般的なイメージから言うと、コレステロールというのはあまり高いといけないというイメージがね?
「そうですね。テレビなどではコレステロールを下げましょうと、お茶とか、いろんなものが売られていますけれども、コレステロールがなぜ悪いかというと、アメリカの男性では確かに、コレステロールが高い人が心筋梗塞(しんきんこうそく)にかかる人がずいぶん多いのです。
これはアメリカ人の死亡原因のトップは心筋梗塞なんです。ガンよりも3倍ほど心筋梗塞が多いという特殊事情があるのです」
アメリカの場合は?
「ところが、コレステロールは確かに高すぎても悪いのですけれども、低すぎても悪いのです。低すぎると今度はガンになりやすいのです。
日本人の死亡原因のトップはガンですから、そういうことを考えても、コレステロールが低いほうが日本人にとっては、非常に健康を害するというのは、もともと想定はされていたのです」
そのとおりの結果が出てしまったと?
「コレステロールというのはもともと細胞膜という、人間の体はもともと小さな細胞でできていますが、その膜は全部コレステロールでできているのです。それとホルモン。男性ホルモン、女性ホルモン。それから体の健康を守ってくれる副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン。それと脳神経。全部コレステロールが材料なのです。
コレステロールは実は必須の、体にとって一番重要な物質なんです。ただそれが極端に多すぎるとアメリカ人のようになる。当然少なすぎると、体に必要な物質が足りないので、ウィルスとか細菌に侵されやすい」
アメリカ人の基準であると。
「はい。それで実は、アメリカ人の基準は日本の基準よりもずっと高いところにあるのです。ところが不思議なことに日本ではそういうコレステロールは低いほうが問題なのに、アメリカよりずいぶん低く設定されているのです」
ここまで行ってはいけないというところに?
「たとえば、総コレステロールというのがあって、今年の3月までは検診では総コレステロールというのが計られていたのです。アメリカ人ですと、270を超えるとダメよということなのですが、日本の基準はなぜか220を超えるとダメよ、と。
逆に言うと、アメリカでは270以下にしましょう。日本では220以下にしましょうと。こうなっていたということです」
大きな違いですよね?
「50の差というのは非常に大きくて、この50の間に人口の5割くらいが入るのです」
5割ですか!
「私のデータで分析した結果、逆に220より下回ると病気の発症率が急に上がるのです。まったくうその、日本で使われていた基準はまったく逆である。むしろ220より高くしたほうが、日本人は病気になりにくいということなのです」
なぜそういった数字が出てしまったのでしょうか?
「これは、実は検診の基準、治療の基準というのは下げると該当者が増えるわけです。例えば総コレステロール270以上とすると、該当する人は人口の3%くらいなのです。
ところが、220以上とすると中高年の5割がかかるわけです。ということは薬が売れる範囲、人口の3%が対象になるか、50%が対象になるか、そうするとぜんぜん違うと」
|