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09/12/12 放送 バックナンバー
発達しょうがいの若者を記録した映画の監督に聞く!
宮崎信恵さん
十河陽一さん
ゲスト:ドキュメンタリー映画「あした天気になる?」
監督 宮崎信恵さん 音楽担当 十河陽一(とがわ・よういち)さん
聞き手:鈴木崇司記者
理解されていない「発達障害」の真の姿を伝えるのが制作の動機
彼らの「生の姿」を出すことが親たちの撮影条件!?
この映画の音楽はセオリー破り!
自主上映会は地域の人を繋ぐきっかけになる
 発達障害を持つ人々の生活を1年にわたって記録したドキュメンタリー映画が、今年完成しました。「あした天気になる?」というタイトルで、これまで数多くのドキュメンタリー映画を手がけた宮崎信恵さんが監督しました。この映画は、映画館でロードショーされるわけではなく、全国各地の公民館などの自主上映会で公開されています。
 今週は、その映画監督宮崎信恵さんと映画音楽を担当した十河陽一(とがわ・よういち)さんに伺います。
■理解されていない「発達障害」の真の姿を伝えるのが制作の動機

 『明日天気になる?』という映画を作られた映画監督の宮崎信恵さんにお話を伺います。よろしくお願いいたします。

 (宮崎)「よろしくお願いいたします」

 この『明日天気になる?』という映画は、まずどのような映画ですか?

 (宮崎)「発達障害といわれている自閉症や知的障害を持っている人達、特に若い人達の日常生活を映像にして、ドキュメンタリーで撮った映画です」

 なぜ発達障害、自閉症の方をテーマにしようと思われたのですか?

 (宮崎)「一般的に発達障害はいまブームのようになっていますが、本当に広く発達障害そのものが知られているかと見たときに、まだまだ理解されていない部分が強くあるのではないかと思っていたということが(あります)。本当にもっともっと発達障害のある人達の姿を知ってもらいたいということがつくろうと思った動機です」

 どのような方が発達障害の人、宮崎さんが取材対象にされた方なのですか?

 (宮崎)「一般的に発達障害というのは、発達障害者支援法で言われている軽度の知的障害に自閉症ですとか、それから学習障害、アスペルガーといわれる人達など軽度の人達が、一般的に発達障害といわれているのですが、私は発達障害というのは、読み書き、計算などの認知機能と対人交流関係、いわゆる人とのコミュニケーションがうまくいかないような障害のある人達が発達障害だと思っています。
 今回とりあげたのは、どちらかというと、非常に重い知的障害に重度の自閉症を併せ持っている人達、一般的にいうと重度の障害のある人達が、今回の映画の対象になっています。具体的には行動障害といわれているのですが、自分の手を噛んだり、顔を叩いたり、それから人を殴ったり、物を壊したりという。今回映画の舞台となった福岡県の鞍手町(くらてまち)という入所更生施設は、重度の行動障害の青年達、高校生活を終えた人達が集団で暮らす施設です」

 その施設の1年間の記録ですね。そこへ1年間密着しようとしたきっかけ、どのようにして密着できるようになったのですか?

 (宮崎)「きっかけは、3年前に『無明(むみょう)の人〜石井筆子(ふでこ)の生涯〜』という日本で最初の知的障害者の施設をつくった石井亮一(りょういち)の奥さんの石井筆子という人の映画をつくりまして、全国で上映していく中で、日本で最初ですから明治時代に滝乃川(たきのがわ)学園という施設ができたのですけども、その上映をやっている時に、歴史も良いけれど、いまの知的障害を持っている人達、発達障害のある人達の姿をしっかりつかまえておかないといけないのではないかとおしりを叩かれたといいますか、上映活動の中で触発されたのが1つ。
 それからもう1つは、障害から2次障害で行動障害等々を発生するがために、非常に日常生活がしづらい。そのために施設に入っても、どうしても彼らは虐待とか人権侵害の対象になってしまうという事実。
 もう1つは、よくマスコミ報道なんかでも発達障害のある人達が、いま重大事件の加害者になるケースが非常に多いですね。本当に障害が犯罪を起こすという間違ったとらえられ方をすごくしている。だから『発達障害の人は怖いのよ』とか『発達障害があるから何をするかわからない』とか、そのような非常に間違ったとらえられ方をしているのではないかと(思います)。本当にそうなのか、どうなのかという検証も十分されないで、すごく狭い見方で、発達障害というものが見られている。そのことに対して、すごく気になっていたものですから、本当にどうなのだろう、見てみたいというのが、つくった動機といいますか、スタートでした」

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■彼らの「生の姿」を出すことが親たちの撮影条件!?

 福岡県のその施設を取材対象にしたきっかけは何ですか?

 (宮崎)「たまたま福岡の鞍手町のすぐ隣にある町で、ひどい人権侵害、虐待事件が起きました。そのことをリサーチしている時に、鞍手町の本人主体、本人を大事にしようというケアをやっているという『サンガーデン鞍手』の事を知ったのです」

 そのサンガーデン鞍手という施設の記録を撮ることは、そこでお願いをしたら受け入れてくれたのですか?

 (宮崎)「そうですね。最初はこのような映像になるという形で行ったわけではないのですが、そこでいろいろ話をうかがう中で、ケアに非常に科学的な視点を入れた先駆的な取り組みをしているなと感じたものですから、ぜひ取材させてほしいと申し込みました。施設長さんは、いいですよということでしたけども、問題は当事者、ご本人、それから保護者の方。けれどもそれほど時間が経たないうちに、保護者の方からも了解をいただきまして、取材に入りました」

 施設のある鞍手町というところはどのような町で、どのような生活環境の場所ですか?

 (宮崎)「農村地帯ですね。ぶどうの巨峰が特産という本当に静かな、人口が1万7千人。昔は炭鉱で栄えた町で、そこの郊外になっているというか、一言でいえば静かな農村という感じです」

 そのような形で密着して取材することで、障害のある方々のどのような部分を描きだしたいと思ったのですか?

 (宮崎)「知的障害の人は、どちらかというととっても純真無垢で、ものすごく努力して素晴らしい部分に、私たちはとっても感動するのですが、でも本当にそれがすべてなんだろうか。私はそのような素晴らしい部分も、それからそうではなくて、もっと生の部分も含めて彼らの素顔を知りたいなと(思いました)。
 決して、努力ばっかりしているとは思わない。純真無垢だけとは思わない。だって私達もそうですよね?もっともっと生の姿を、彼らは日常どのような暮らしをしているんだろう。その生の姿からもっと彼らに近寄っていくことが、私は重要ではないかと思っています」

 でもその生々しい姿は、撮られて出されるのはかなり、僕ら自身でもあまりいいことではないのだけれど、そのようなところを取材して出させてもらうのはかなり大変ではないですか?

 (宮崎)「映画の取材に入る前に保護者の方から、保護者会の方達から条件がありました。『きれいごとの映画はやめてくれ』と。本当に自分達、親達の周りが苦労しているところが何なのかということがしっかり伝わるような映画にしてほしいと(言われました)。
 それはなぜかというと、きれいごとだけで良い部分だけ撮って、本当に発達障害の、彼らの理解につながる映像になるとは思えないと。私はそれを保護者の方から『条件です』と言われた時は、『あぁ、やった!本当にこれでしっかり私達は彼らに向き合えるな』と正直思いました」

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■この映画の音楽はセオリー破り!

 撮影に入られたのがいつからどれくらい?

 (宮崎)「2007年の10月末から2008年の8月まで、約9ヶ月、40日間くらい取材にうかがいました」

 そのような施設にずっと長期で取材していくことによって、宮崎さん自身が本当はこういうことだったのだろうかと気づいていくことはたくさんありますよね。例えばどういうところであって、どのように見えてきたんですか?

 (宮崎)「私が一番感じたのは、見た目的には特異的ですよ。常にこだわり行動があるわけですからね。必ず何かにこだわっているわけです。パッと見た時には、やっぱりハッとびっくりする。でも感じたのは、同じなんだなー。そりゃ、こだわりはあるけども、言葉は出ないけども、私達と変わらないなという。
 やはりひとりひとり個性のある魅力的な青年だなとつくづく感じました。でも世の中は彼らを変な人としか見ないのです。変な人として見れば変な人ですよ。でもしっかり向き合った時には、そうではなくて存在感をしっかりもっている人間だな、私達と変わらないなと感じるようになった」

 映画なので、ナレーションと音楽も非常に重要になりますよね。

 (宮崎)「音楽に関しては、十河陽一さんですが、私の作品『風の舞』という最初の作品から、今回3本目ですが、お願いしています。クラシックが基調ということで、発達障害のある人達とクラシック音楽がどのように調和するのかなということが、1つ気がかりがありました」

 いまご紹介いただいた、作曲された十河さんにもお話をうかがえるので、お話を聞こうと思うのですが、十河さんが宮崎さんからこの映像に音楽をつけてくださいと言われた時に、映像を見てどういう音楽をつけなければいけないな、つけたいと思ったのですか?

 (十河)「まず一通り見ますよね。それはナレーションはないけれども、編集済みのほとんど完成に近いものを見る。まずそれはどこに何をつけようということを考えずに見ます。そこから1番大きなテーマが何なのか。それを自分なりにとらえる。何が大事かというのは、そのようなもの(映像)から自分が何を受けたかということを素直に音楽で表現することですかね」

 一番始めに完成版に近い1時間半のものを見た印象はどうだったのですか?

 (十河)「とにかく多くの若い人が出ている。彼らのエネルギーが、最初に見たときはそれを自分の中で受け止めるということが、こちらもエネルギーが必要で。ただ我々の仕事というのは、何度も何度も部分部分を見るわけです。何度も何度も見るうちに、やはり彼らがどんどん好きになるのですよ。うれしい時は喜び、悲しい時は泣き、そのようなものがダイレクトに伝わってくるのです。それがどんどんひとりひとりの人達が魅力的に見えてくる。それが繋がってくるのです。そうすると音楽もどんどんと変わっていく」

 十河さんの方から曲をいただいて、自分の映像がこういうようになるんだという感じはありました?

 (宮崎)「私も音楽に対してのイメージって心の中ではあるわけです。相手は発達障害のある人。私の中にも固定観念があるわけです。例えば、彼らの姿に合った音楽を考えた時には、私はもう少し軽い音楽、若いというか幼稚というかね。軽い音楽を想像していました。もう少し違うイメージで十河さんから音楽をいただきました。テープを何回か聞きました。『ん〜』と思ったんです。果たしてこれが合うんだろうかと思いました。
 何度か聞いてくる中で、私自身の中に反省が出たんです。発達障害だから軽いとか、まだまだ私自身が越えてない部分を、音楽を通して感じたんです。そして、私はこの音楽にどのようなイメージを持ったかというと、十河さんは彼らに対して尊厳を入れてくれたんだと思いました。確かに聞いていただくと分かると思うのですが、やはり最大の、彼らを尊厳を持って音楽をつけてくれていると私は思っているのですよ。

 弦楽器が中心の感じですよね?

 (十河)「そうですね。弦楽合奏の形です」

 それはいま宮崎さんが重いという感じをおっしゃったのですが、それはどうしてそのような曲なのですか?

 (十河)「基本的には、宮崎さんのおっしゃった通り最初のあの曲はもっと軽いものをつくるというのがセオリーでした。というのは、最初に映像を見た時に、『見てね。楽しい映画だよ、いい子だよ。楽しいよ、見てね』という感じで普通だったら入っていくんです。
 ただ彼らが好きになってくると、最初は実はそのような曲を書いていたんですが、どんどん好きになっていくと、『これ見なきゃいけないよ。見ろ』という感じでしたくなった。たぶん監督はこれを聞くと『この音楽は困るな』と思うかなと思いながら、とりあえず前もってつくってお送りした。そうしたら、ずっと悩んでらっしゃったけど、返ってきた答えは、先ほどおっしゃったように人間の尊厳として受け止めて」

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■自主上映会は地域の人を繋ぐきっかけになる

 ピアノの曲を使われていますね。このピアノの曲の部分はシーンとしてはどのようなシーンで、どのような話ですか?

 (宮崎)「この場面は、インタビューに対して、お母さんがずっと子育てで苦労されて、本当に一時は首を絞めようと思った。でも『あぁ、首を締めなくてよかった』とお母さんが一言言われるんです。その後に映像としては、20歳になりましたという写真が出るのですが、そのあたりから、『本当に子育て大変だった。でも発達障害のあるこの息子と出会った事で、自分の人生がすごく豊かになった』『いろいろな人と出会った』というお母さんの語りの背景に流れている曲です」

 この映画をどういう人に見てもらいたくて、どのような事を感じてもらえたらいいなと思いますか?

 (宮崎)「1人でも多くの人に見てもらいたいですね。本当に1人でも多くの人に見てもらいたい。特に発達障害の人達と日頃あまり接する事のない人。そして若い人に特に多く見てもらいたいなと思っています」

 といいながら、この映画ですが、上映の機会が非常に少ないのですが。

 (宮崎)「いま特に地域の方達に自主上映という形でお願いしているのですが、私はやはりこの映画を通してね。自主上映というのは、ただ映画を見て終わりではないと思います。やはり地域の人達がつながっていくきっかけになるのではないか。そして、理解というのはとっても難しいけども、やはり地域の中に発達障害のある人も一緒に暮らしていくような地域づくりに、映画が役に立てばうれしいなと思っています」

 では、このような上映会をこれからしばらく、ずっと全国で続ける活動をされるのですか?

 (宮崎)「いまお願いしているのは、自主上映という形で、全国に100人でも50人でもいいですから、小さな上映の輪がいっぱい網の目のように広がって、それが全国の多くのところで、そのような上映会ができればいいなと。自主上映というのは、誰かが中心になってやらなければならないのですが、自治体等々でもこの映画を企画していただいて、地域の人に声をかけていただいて、上映の輪が広がればいいなと思っています」

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