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10/03/13 放送 バックナンバー
閉ざされた国ビルマ
© Yukari Shinoda 2004
ゲスト:ジャーナリスト 宇田有三さん

聞き手:上田 剛彦アナウンサー・八塚 彩美アナウンサー
『ビルマ』は、タンシュエという独裁者がいる軍事政権国家
「本音を言わない」敬虔な仏教国ビルマの国民性
外国人観光客の行動はすべて監視されている!
独裁政治の中、自由と人権のために闘う人たちはいるが…
軍事政権の『二重為替』を日本はきちんと指摘せよ!
今週は、東南アジアにある近くて遠い国、ミャンマー・ビルマを取り上げます。軍部の独裁が続き、民主化運動を続けるアウンサンスーチーさんが長年自宅軟禁され、3年前にはジャーナリストの長井健司さんが、反政府デモを取材中に射殺されるなど怖い国という印象がある一方、パガン遺跡見物や、ベンガル湾のビーチリゾートなど、海外からの観光客も受け入れているという一面もあり、よくわからない国というのが正直なところじゃないでしょうか?
今週は、ミャンマー・ビルマの隅々まで17年にわたって取材を続け、今年「閉ざされた国ビルマ」という本を書かれたジャーナリスト、宇田有三さんにお話を伺います。
■『ビルマ』は、タンシュエという独裁者がいる軍事政権国家

 私たちの認識では、ミャンマーというのは報道では言います。でも『ビルマの竪琴(たてごと)』という言葉もありまして、ビルマの方がまだちょっとなじみがあるのですけど、ミャンマーとビルマってどういう言葉の違いなのでしょう?

 「上田さんもアナウンサーとしていろいろ毎日に携わってきて、例えば日本で何か事件があった場合、例えば日本で地震が起きましたというときに『ジャパンで事件が起きました』とは言わない」

 もちろんニュースではニホン・ニッポンと使います。

 「それはなぜですか?」

 ニホン・ニッポンが日本語だから。

 「そうですね、だからビルマ、ミャンマー。ミャンマーは実は英語読みなのです。だから日本の人が日本語でいままでビルマって読んでいたのを、英語読みのミャンマーに変える必要はないのです。例えば日本語を大切にしている東京外国語大学、あるいは大阪外国語大学、いまは大阪大学になっていますけども、いまだにビルマ語学科ということで『ビルマ』という言葉を使っています」

 (上田アナ)この番組の中では、ミャンマーという国名をニュースの中では使いますが、ここからはビルマと統一してお話しを進めていきたいと思うのですが、ビルマについてどういうことを知っているか。八塚さん、ビルマについて何を知っていますか?

 (八塚アナ)何を知っているといっても・・・一番最初に思い出したのが、国語の教科書でミャンマーという言葉が出てきた時に、『(ビルマ)』と書かれてあったということと、それからアウンサンスーチーさんという方かなと思うんですけれども。

 「そうですね。日本でいま一番知られているのはアウンサンスーチーさんという、1991年にノーベル平和賞をとった人ですけども、その他にビルマが軍事政権というのは知られています。だいたい日本の中ではアウンサンスーチーさんと軍事政権が対立していると捉えられているのですけども、実はビルマというのは軍事独裁政権国家なのです。
 例えば上田さん、北朝鮮の独裁者といえば?」

 金正日(キム・ジョンイル)。

 「はい。ちょっと前のイラクの独裁者といえば?」

 サダム・フセインと。

 「実はビルマの中には、タンシュエという独裁者がいます。でもその名前はほとんど出てこないです」

 (上田アナ)そうですね。知っていましたか?

 (八塚アナ)知らなかったです。タンシュエ。

 「どうしても日本の中では、アウンサンスーチーさんとビルマの軍事政権が対立している(ということしか知られていません)。でも実際はこのタンシュエという独裁者が本当にすごい力を握っています。アウンサンスーチーさんを押さえ込んでいると」

 例えばパーソナリティーで言うと、どういう人間なのですか?

 「現場からたたき上げの軍人です」

 軍人。

 「はい。だから黒か白か、あるいはゼロか100かということで、政治的な交渉ができないのです」

 なるほど。頑なさで言えば、例えば金正日やサダム・フセインよりも厳しいかもしれないですね。

 「はい。実際私はビルマの人と話しをしていまして、ビルマの友達から、北朝鮮とビルマ。北朝鮮よりもビルマの方がひどいと。北朝鮮は国を非常に強固に閉ざしています。実はビルマという国は軍事政権、独裁政権ですが、国を開いています。去年でも50万人以上の観光客が来ています。軍事政権としては自信を持っています。俺達は国を開いても潰れないと。だから実質独裁政権国家としては、実はビルマの方が強固なんです」

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■「本音を言わない」敬虔な仏教国ビルマの国民性

 なるほど。ではそのビルマという国が東南アジアにあって、どういう国と言えますか?

 「実は日本とは関わりがありまして、いまの軍事政権、軍部を作ったもともとは、日本の旧日本軍が作りました」

 太平洋戦争の時代に?

 「そうです。だからいまだにビルマ国軍の軍の歌、日本の昔の軍歌がいまのビルマの海軍の行進曲にもなっているのです。これはビルマの人が日本に来て、例えば大阪とか歩いていて、『あれ』と気づくのです。パチンコ屋の前を通ったら『うちの国の軍歌が流れている』」

 誰でも口ずさめる軍艦マーチが。

 「はい。だからビルマの人がびっくりするのです。これだけ日本とビルマは繋がっているのだなと」

 こうやって軍部独裁になったのはいろいろな形があると思うのですが、そもそもは一人の人物が権力を握っているような国ではなかったのですよね。

 「なかったです」

 どうして一人に集中してしまっているのですか?

 「かつて東南アジアは、フィリピンにしろインドネシアにしろ、軍事独裁、開発独裁ということで、一人の力で国を発展させようというのが歴史的に進んできました。ビルマはその流れからちょっと乗り遅れて、国が貧しくなってしまいました。ビルマ社会主義計画党ということで、かつては独自の社会主義を歩んでいたのです。
 そこの中で軍部が力を持ってきて、国を閉ざしていたために世界の流れから取り残されて、そのおかげで、ずっと閉ざされた中で、軍部が徐々に力をつけていって、いまはその力が巨大になりすぎた。例えばいまおそらく45万人くらいの兵隊を抱えているのです。それをたどっていけば、家族の誰かが軍部に繋がっていることになる」

 人口はどれくらいいるのですか。

 「いま5500万人です」

 なるほど。その中で45万人はかなり大きな数ですね。

 「それもありますし、またビルマという国は非常に敬虔(けいけん)な仏教国家なのです」

 (宇田有三さんの)著書の『閉ざされた国ビルマ』の表紙になっているのも、彼は?

 「実は女性なのです」

 ごめんなさい、女性。坊主頭にされていますけど。

 「彼女は女性の尼、尼僧なのですが、まだビルマの中の仏教というのは、日本の仏教と非常に異なっていまして、例えば自分の生活を犠牲にしてまでお寺とかお坊さんに食べ物とか、あるいはいろいろな貢物(みつぎもの)を寄進する文化があるのです。
 非常に厳しい戒律のため、年上の人や僧侶に対して、たとえおかしなことを言っていても、それをおかしいとなかなか言わない文化なのです。
 日本の若い人でしたら、上の人がおかしいことを言ったら、『それおかしいやん』とすぐ言うのですけれど、そんなことが言えないのです」

 なるほど。国民性としては仏教に根ざしていて、そういう家長制度というのですか。そういうのが厳しい。人柄としては、やさしい人が仏教徒だから多いのかなと。

 「基本的に日本の人と性格・国民性は似ています」

 勤勉であるとか?

 「勤勉でありますし、上の人を立てますし、そして悪い面ではなかなか本音を言わないですね」

 それも日本人と似ていますね。

 「非常に似ています。おそらくビルマに最初行かれて馴れないうちは、なかなかビルマの本当の姿が見えないです」

 そうですか。今週はビルマの隅々まで17年間取材を続けました、ジャーナリストの宇田有三さんにお話しをうかがっています。

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■外国人観光客の行動はすべて監視されている!

 私も数年前に観光でビルマという国に行ってきました。本当に穏やかな国民性で、みんなが優しくて、涙するくらいの優しさに触れた感じがしたのですが、そのような危険なイメージとかあんまりなかったのですよね。

 「外国人の人が観光で入りますと、例えば軍事政権がどういうことをやっているのか120%見えないです。確実に見えないです。
 私が取材で入りますと、かつての首都ラングーン、いまヤンゴンと言っているのですけれど、(ヤンゴンは)いいのですけれど、ちょっと地方に行きますと、必ず誰かが後ろについてきます。監視されています」

 僕は観光で行っているわけですけど、僕はそんなイメージはなかったです。

 「ないです。たとえば観光で行かれてもホテルに泊まりますと、必ずホテルのスタッフは日に3回、5ヶ所に外国人、誰が泊まっているのかという報告書を出します。日に3回、5ヶ所ですね。軍部、地域の警察、その地区の公安関係者、プラス諸々のところに」

 それは義務付けられているのですか?

 「義務付けられています」

 もし仮にそれをしなかった場合には厳しい罰が。

 「外国人にはないですが、非常に厳しい罰がそのホテルの経営者、あるいはスタッフにあります」

 徹底しているのですね。

 「徹底しています。だから外国人がどこに行って、誰に会って、どういう話をしたのか、いつもチェックされています」

 話をした内容まで!

 「はい」

 私は観光で行って、いろんな人に会って話しをしましたけど、それも全部。

 「全部。例えばいま3人で話しをさせていただいているのですけど、必ず3人いれば1人は軍のスパイです」

 でもそういう中で取材を続けるというのは、非常に困難なことだと思うのです。

 「プレッシャーになります」

 そんな中でもやはりこの国のことを伝えなければならないと思われたのは、どういう理由なのですか?

 「私は取材はいろいろな地域、ビルマだけじゃなくて中央アメリカ。軍事政権下で暮らしている人々はどういう感じで、どういう気持ちで生活して、どういう抵抗運動をしているのか非常に興味がありまして、中米の軍事政権の取材を終えて、ビルマに関わり始めたのが1993年なのです。
 実はビルマの軍事政権も数年で終わるかなと(思っていました)。その1990年代、ほとんどの国、2000年にかかりましたけども、ほとんど東南アジアの国も民主化されていましたので、ビルマも数年で終わるかなと思っていたのですけれどずるずると17年間」

 トータルではどれくらい?

 「のべ4年半」

 ビルマに暮らしている?

 「はい」

 取材をする上で、軍事政権のここがひどいな。これは絶対に言わなければならないと思ったことは?

 「人口の7割はビルマ族の人ですが、いわゆるカッコ付きなのですが、少数民族と言われる人が3割ほどいます。実はビルマ国内には国内避難民と言われる人が、およそ60万人〜100万人います。普通避難民、難民と言われる人は国外に出ますけれども、実はタイ側にも12〜3万人。バングラデシュ側にも数万人出ているのですけれども、それ以上の100万人近い人がビルマのジャングルの中で逃げかくれしています」

 それはなぜですか?

 「違う民族だということがまず1つで、軍事政権から抑えつけられる。もう1つは軍事政権の言うことを聞かない。抵抗している。
 私も実際に経験するまではわからなかったのですけれども、暴力の怖さを目の前にしたらひるんでしまいます。きょう、私は八塚さんと初めてお会いしましたけれども、もしいきなり私が殴りかかったら怖いですよね。普通できないです。もちろん上田さんとも何回かお会いしたことがあったのですけど、いきなり殴るということはできないです。でも軍部は洗脳してそれをさせてしまうのです。
 軍事政権国家で生きる。例えばビルマも60数年間軍事政権です。その中で暴力の下で暮らす怖さというのは、なかなか伝わらないです。それは目に見えないですね」

 なるほど。恐怖心ですね。

 「恐怖心です」

 ビルマに暮らすほとんどの人達が恐怖心の中で暮らしていると。

 「はい。それと外国人に見せる姿はやはり笑顔です。やはり伝わらないです」

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■独裁政治の中、自由と人権のために闘う人たちはいるが…

 本の中にも書いてありますが、例えば軍事政権に反対する勢力と帯同して一緒に暮らしたこともありますよね?

 「あります。アウンサンスーチーさんの誕生日に、例えばいまNLD(国民民主連盟)という政党を作っているのですが、その政党の本部に行ったことがあるのですけど、そこに行きますと、やはり数十人軍事政権に抵抗する人々が集まってくるのですね。その彼らを取り巻く軍の情報部、公安、警察、あるいはそれを見守る市民もいるのですけれども、抵抗する人はやっぱりいるのです。必ずしも100%ビルマの人は軍事政権の力に屈しているわけではないです。自由の大切さ、人権の大切さというのを彼らは身をもって示してくれることがよくあります。
 軍事政権に反対してプラカードを持って立っている人が、よくいるのですね。ときどき見ますと、そのプラカードがビルマ語ではなくて英語で書かれているのです。これはビルマ人に対するメッセージではなくて、外国人に対するメッセージかなと。いまはビルマの中でもデジカメがすごく普及していますので、誰かが写真を撮って、国外に流すということを期待しているのです」

 それはただ立つだけなんですね。

 「立つだけ。声をあげる、あるいは通行の邪魔になるようなことをすれば、すぐ逮捕されます」

 (八塚アナ)声を出さずに、そのプラカードを持って立つことは許されているのですね。

 「それも許されていないです。それは逮捕覚悟で立っています」

 3年前になりますか。ジャーナリストの長井健司さんが亡くなったという事件がありましたけれども、ああいった形の激しい争乱と軍部側は言っていましたけども、そんなことはもうないのですか?

 「いまの状況では起こる可能性は非常に低いです」

 最近伝えられたニュースによりますと、秋には総選挙をする。前回も総選挙があって、アウンサンスーチーさん側のNLDという政党が多数を取りました。

 「85%の議席を取ったのです」

 もうほとんどですね。

 「はい。それでも軍部は政権を譲らなかったのです。今回の選挙で軍部は、前回20年前、1990年の選挙と同じことを許しては駄目だということで、非常に厳しい投票のチェックをしています。なおかつ議席の最初から25%は軍部に割り当てられていることになっているのですよ」

 むちゃくちゃですよね。

 「だから今回の選挙に関しては、ほとんどのビルマ関係者は悲観的です」

 なるほど、そうなのですか。でもそこに参加をしないと、アウンサンスーチーさんの党が参加をしないと政党としては認められない。声も上げられない。

 「いまNLDという政党が、それに参加するかどうかという議論しているところです」

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■軍事政権の『二重為替』を日本はきちんと指摘せよ!

 となると、ビルマの人達の意志では何も変えることができない難しい状況。私達は何かそういう恐怖心でおびえている人々のためにできる事はないのかなと思うんですよね。

 「そうですね。基本的には、個人的にはビルマに直接関わることはできないです。ただ、それであっても日本政府がビルマにどういうことをいままでしてきたのか。あるいはこれからどのようにしてほしいのかということを、いまの日本政府に言い続けることはできます。政権が民主党に変わったこともありますし。」

 いままで日本がビルマに対して行ってきたことというのは、例えば援助はしていたと思うのですが。

 「1988年に非常に大きなデモが起こったのですね。そのときまでビルマが受け取っていた8割の援助は、実は日本からだったんです。そのとき援助を受け取っていたある1つの部局があるのですけども、そのトップが実はタンシュエだったのです」

 なるほど。

 「というのは、そのときの援助でタンシュエが上り詰めたと噂する人もいます。ビルマのことをしゃべるときには、実は政治的な事は結構簡単にしゃべることができるのですけれど、ややこしいのはお金の話なのです」

 お金。

 「はい。上田さんも海外によく行かれますので、パスポートをお持ちですね」

 はい、持っています。

 「何年ものの?」

 10年ものです。

 「いくら?」

 1万5〜6千円くらいですかね。

 「そうですね。1万6千円です。実はビルマは二重為替を敷いています。それは、国同士のお金を交換する公定レート。
 簡単に言いますと、円とドルでしたら、いま1ドルがだいたい90円です。ビルマのお金はチャットというのですけれど、公定レートは1ドルがだいたい6チャットです」

 1ドルが6チャット。

 「でもそういうお金ではなくて、実質1ドルが1000チャットです」

 えっ!公定レートで替えたら6チャットしかもらえないのに、普通の街中の両替屋に行くと、1000チャットになる。

 「はい」

 (八塚アナ)すごいお金持ちになれるということですね。

 「なります」

 となるとパスポートを。

 「このへんがちょっと非常にトリッキーなところで、パスポートというのは日本政府が発行するものですね」

 海外でも発行することができますね。

 「例えばビルマを旅行中にパスポートの期限が切れるということで、ビルマ国内にある日本大使館に新しいパスポートを作ろうと思って申請しますと、国の機関なので公定レートが適用されて、実は100円でできてしまうのです」

 これはとても不思議ですよ。1万6千円のものが100円になってしまうのですから。

 「ということは、1万5900円がどこかに消えていってしまうのですね。これは誰が負担しているのですかと。経済的に苦しいビルマの人が負担しているのですか?あるいは日本政府の人が・・・あまりそういうことは言いたくないのですけれども」

 どこに消えているのか。それは援助にも言えますね。例えば100万円を援助金ですと渡します。でも現地に行くと、数千円になってしまう。では残りの90何万円は?

 「99万円は」

 どこに行ったのか?実勢レートと本当のレートが違うではないかということを、日本政府がガーンと、本当にビルマの人達、地元の人達、国民に届くようにしてほしいと、言えばいいと思ったのですけれども。

 「やはりそのへんが日本の外務省、いままで表に出せないことをたくさんしていました。だからいきなり言うことができないのです。
 ということは、直接個々人がビルマに関わることができないとしても、(私達は)日本の外務省が日本国民に対して、ビルマの情報をきちっと提供していないのではないか、と言うことができるのですね」

 なるほど。

 「そういうふうに私達自身も、日本政府がビルマに対してどういう関わりをしているのか、監視する必要がありますし、やはりモノを言っていく必要があるのではないかと思っています」

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