毎週日曜あさ7時〜放送「堀江政生のザ・シンフォニーホール・アワー」

ザ・シンフォニーホールで行われる公演の聴きどころ、豪華ゲストを招いてのお話をクラシックの名曲とともに、堀江政生アナウンサーの解りやすい解説でご紹介します。クラシック通の方も、クラシックはまったくわからないという方も楽しんでいただける番組です。

堀江ブログ

2022年1月25日ザ・シンフォニーホールの情報誌 「シンフォニア」Vol.49
「堀江政生のシンフォニア・アワー」 vol.49 〜骨の髄までアナウンサー〜 より

新年おめでとうございます。
ザ・シンフォニーホールは開館40周年のスタートです。
今年もよろしくお願いいたします。

一方アナウンサー歴34年目になる私、堀江。先日カルチャーショックに打ちのめされたので、今回はそのお話を・・・・・

『12人の恐れる男』ヘンリー・フォンダ主演の映画が有名ですね。
この芝居を上演する劇場から「冒頭の裁判長の声の録音を堀江さんでお願いしたい」と依頼を受けたのです。
大好きな演目!なんと光栄なお話!!まさに、天にも昇る気分でした。
「俺は、この日のためにアナウンサーをしていたのだ!!!」

映画をご覧になられた方はよくご存じだと思います。
父親殺しの容疑がかかった少年が真犯人かどうか、12人に陪審員たちが侃々諤々の議論をする。
その前段で陪審員たちに諸注意を告げるのが私ということになるのです。

1分半ほどのセリフの中に大事な言葉がたくさんある。
「有罪」「無罪」。そして「全員一致」。さらには、のちに陪審員たちが再三にわたって使う「合理的疑念があるか、ないか」これも見ている人の記憶にととめておいてもらいたいキーワードだ。

アナウンサーとして培った技術を駆使して、この言葉たちを際立たせるぞ!
そんな気合を感じ取ったのでしょう、演出家のマキノノゾミさん。私に会うなり、
「裁判長はこのコメントをいつも言ってるから飽きているんだよね。お約束で言ってるだけ。しかも、自分の中で有罪無罪を決めていると思うよ。そんな雰囲気がにじみ出ればいいんだけど・・・」。
ん?なるほど、リアリティとはそういうことか・・・・・・

でも、それではどう喋ったらいいのだ??となんに、天から突き落とされて、目の前に高い壁が出来ていました。
役者さんたちはすごいことをされているんだなあと再認識し、私は骨の髄までアナウンサーであったことを再確認した次第です。
それでも、冒頭のセリフは採用していただきました。
恐れる男たちは優しかったのでした。

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