チャルが見た!

2013年8月29日(木)

「震える舌」

今日は1980年公開の日本映画『震える舌』をご紹介いたします。
出演は渡瀬恒彦さん、十朱幸代さんという大御所。
この映画は、三木卓(みきたく)さんが
1975年に発表した小説でこれを原作とした映画です。
医療ドラマというよりも、オカルト・ホラー的趣向で製作されています。
予告編でのキャッチフレーズも「新しい恐怖映画」と銘打たれているほど。

破傷風菌に犯された少女とその両親を題材に描いているんですが
実際、三木さんの娘さんが破傷風に感染した時の事を
モチーフにしているというから驚きです。
おそらく、小さな子供のいる和歌ちゃんなら破傷風っていう病気は、
聞いたことがあるかもしれません!
今は3種混合ワクチンなどで乳幼児のときに3回予防接種を打つことで
死亡者は先進国ではほとんどいないとされている病気ですが
今回はその破傷風に運悪く犯されてしまうんです。
破傷風に侵されてしまう少女・昌子を演じる若命真裕子(わかもり まゆこ)ちゃんの迫真の演技が大きな衝撃を与え、話題となった作品でもあります。

冒頭、まーちゃんこと娘の昌子が原因のわからないひきつけを起こし、
病院をたらい回しにされるところからはじまり、
わが子だったらと胸がしめつけられます。
病気の原因が破傷風だと宣告されるまで、病状も検査も目を背けたくなる映像で、
全身の痙攣で身体が弓なりひきつる演技、
発作のたびに舌を噛んで歯を食いしばるため口の周りが血だらけになる演出、
大人が数人がかりで暴れる子供を抑え込む様子は『エクソシスト』を
彷彿とさせます。
今から30年ほど前に作られたとは思えない映像で監督のこだわりが伝わります。

破傷風とわかってからもさらに地獄で、
ちょっとした物音、光がひきつけをおこす原因になり、
そして残酷なのが5日以内に発症するとほぼ助かる見込みがなくなる・・・。
助かる確率が低いなかの懸命な医者と家族の看病、
医者の治療の残酷さは家族の絆さえ壊してしまうんです・・・。
ひきつけのときの痛みをこらえる子供の叫び声が、
本当にこの映画をみるにあたってのトラウマになるほど子供が可愛そうで
何度も目をつぶってしまいました。
映画では時系列でその日の家族の映像が流れるわけですが、
連日の付きっきりの看病と、もしかしたらこの恐ろしい病気、
破傷風が両親にもうつるかもしれないという恐怖で家庭が崩壊しかけるんですね。

果物ナイフを娘のベッド脇で振り回して「治療をやめて!!」と
取り乱しもする母親は、最後には娘の病室に入ることを拒絶し
「(病室に)入るのが怖い」、「産まなければ良かった」
「(だんなさんと)会わなければよかった」とまで言い出すのだけれど、
この親として絶対にいってはいけない言葉に思わず共感してしまうほど、
ほんと、これを見ていたら、やむを得ないなと思わせるものがあります。

そして、絶望的な中わが子の看病が続きこの病気の山場を迎えた時、
娘の手を握っての父親の台詞が胸に染みます。

「もし、お前が死んだら…、お前が何も悪いことをしていないのに、
こんな苦しい目にあって死んでしまうのなら…、お前だけを愛してやるからね、
お前だけを。他に子供を作らないで、一生お前一人を愛してあげる。
お前を助けてやれなかった俺の、せめてしてやれるのは、それぐらいだから、ね」

せめてもの救いに結末をいってしまいますがね、
山場を越えたら、あっという間にまーちゃんは回復して克服します。
地獄の2週間なのですが、夜が明けるまでの長さが痛いほど伝わってきました。
そして、まーちゃんの病気が治って口からいろんなチューブが外され
最初にお母さんに甘えていった「…チョコパン、食べたいよー」という言葉。
「ジュースぐらいなら大丈夫よ」というお医者様の言葉を聞くや否や父親は、
涙ぐみながら猛ダッシュで甘いジュースを買いに走るのです。
この渡瀬恒彦さんがジュースを買って突っ走るシーンは、
今までの闘病生活を思うと、安堵感でほろっときました。
これは子供を持つ父親ならば泣いてしまうのではないですかね。
もう、ほんとうに安堵です。

わが子も命懸けで生きている。
親も命懸けで育てないといけないんだなと思いました。
そして、この映画を見て思い出した事があります。自分の両親の事です。
私が幼少のころ、風疹にかかったとき熱でうなされている私を
舌を噛まないようにとタオルを噛ませてくれた母、
百イボという病気にかかり、下半身に股間にもイボが山ほどできて医者が
ピンセットで一つ一つ潰していき、
そのたび悲鳴をあげるわたしの手を握り続けてくれた母、
17才の夏休み深夜にバイクで出掛ける私を咎めた両親に
死ねと言って出ていった私。
案の定バチがあたり、家から500メートル先で交通事故、
左手首を複雑骨折近くの緊急病院へすぐに応急措置の手術、
麻酔が切れて廊下からオヤジの声が、
「ほんまに直してくれるんか?この病院じゃ心配やもっと大きい病院へ
移したいんや!」今となって親父とは色々あったけど命懸けで
育ててくれたんだなと思い出しました。

いつか僕、親父みたいになりたくないなんて言いましたが、
まずは親父みたいにならなければ!!
親父一年生頑張ります。
そんな気持ちになった名作!「震える舌」ご紹介しました。

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