ぴたっと・ジャーナル

放送日:2011年2月10日(木)

朝日放送創立60周年記念特別番組 平安の美とは

レポート:ABC牟田口章人プロデューサー

 明日11日は、建国記念日でお休みなのですが、朝日放送創立60周年記念番組を、朝9時55分から1時間放送します。どういう番組かと言いますと、題して『平安の美ふたたび〜道上洋三(どうじょう・ようぞう)が案内するできたて平等院鳳凰堂〜』というものです。
 いったいどんな番組なのか、見所はどんなところかなど、番組を制作いたしました牟田口章人(むたぐち・あきと)プロデューサーに聞いていきます。

(加藤)実は、私この番組のナレーションを保坂和拓(ほさか・かずひら)アナウンサーと共に担当させていただきました。ですから、この番組の映像は見ているのですけれども、ナレーションは録音しながらですから余裕がなくて、きれいな映像がいっぱい映っているなというくらいで終わってしまったので、きょう見所を改めてお伺いしたいと思うのですけれども。

(牟田口)「いつも本当にいい仕事をしていただいて、ありがとうございます」

(加藤)とんでもございません。力不足ですが。一言でいいますと、この番組はどういった内容でしょうか?

(牟田口)「もう平安の美ふたたび、この題名そのものでして、実は平安時代は400年続くのですけれども、その間で残っている建物は本当に少ないのですよ」

(加藤)そうなのですか。

(牟田口)「都では特に戦乱があったりするから、ほとんど残っていなくて、平等院はそういう意味では、鳳凰堂という建物そのものが残っているというのは、すばらしいことなんです。やはり1000年でしょう。今はしらっちゃけたり、傷んだりしていて、ずいぶん昔のイメージとは違う様子だったということはわかるのですが、ではどうだったのかよくわからない。それをできる限りこれまでの研究成果を注ぎこんで、映像化したのが今度の番組です」

(加藤)朝日放送は創立60周年ですけれども、これに合わせて制作された。そして、この平等院鳳凰堂を軸に、テーマに選ばれた。ここ(平等院)にしようと決められた理由は何でしょうか?

(牟田口)「まず、朝日放送60周年でしょう。平等院の本格的な近代の調査と研究が始まったのは、ほぼ60年前。解体修理というのが行われまして、その時からなのですよ。私たちの番組は、そこを基点に考えると60年。ずっと積み重ねた研究成果がようやく1つにまとまったということですね」

(加藤)ルーツの部分が重なるというか。

(牟田口)「重なりますね。そういう意味では思い入れがあるのですよ」

(加藤)この番組に関しては、構想10年、制作6年と聞いております。映画では、よくそういったことを聞きますが、文化財の番組も同じようなことなのでしょうか?

(牟田口)「去年、平城遷都1300年祭というのが、奈良であったじゃないですか。あそこに平城宮跡がありまして、大きい建物の大極殿(だいごくでん)が復元された。あれは10年かかっているのですけれども、私たちは10年取材を続けてきました。その前に南側に朱雀門(すざくもん)というのが建ったのですけれども、これも10年取材を続けていまして、合わせてなんやかんやで25年。平城京に僕はずっと行きっぱなしでした。
 さらに今年は有名な“凍れる音楽”という名前が付いている薬師寺の東の塔、東塔が傷んできたので解体して、10年がかりで修理を行おう、バラバラにした後もう一回組みなおそうという事業が始まりますけれども、これも完成まで10年。だから2020年までずっと付き合いましょうということです。僕らの仕事というのは、実はとっても息が長い仕事なのです」

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(加藤)そうですね。じっくり文化財と向き合っていくという作業になるわけですね。番組の中で、大変印象的だったのが、特に1000年近く前の平等院鳳凰堂の建立当時の様子がCG(コンピューター・グラフィクス)で、再現されていましたよね。圧巻だったのですけれども、どういった作業であのような映像になったのでしょうか。

(牟田口)「実は長い長い研究と共に、いろいろな画家の先生たちが、今かすかに残っている絵の断片の色を再現して、なおかつ科学者たちが赤外線とかX線とかいろいろなもので、元の姿を調査するわけです。そのセットになったものを最後に全部極彩色で塗った、昔の姿に復元した絵を画家たちが描いていくのです。私たちはそういうものをお借りして、昔の平等院は今と形が違うのですけれども、全部貼り付けていきながら、絵をつくっていきます。それがCGの作業です。
 なおかつ建物の外だけじゃない。周りはどんな木が埋まっていたか、川はどうだったのか。向こうの山はどうだったのかもよくわかっていない。最近ボーリング調査といって、地面に穴をあけるのですよ。そうすると、池の底からいろいろな花粉が出てくる。そうすると、平安時代には松の山だったとかいうことがよくわかってくる。じゃあ、松を植えようとなってくるわけですよね」

(加藤)そこをCGで合成していくわけですよね。

(牟田口)「そうそう」

(加藤)おもしろいですね。

(牟田口)「そうすると、1000年前に実はさるすべりが咲いていたという話がわかったりしますね。なおかつ再現はすごく大変で、CGだけではなくて、今度はいろいろな方たちを参加させて、昔の法要、1053年に平等院鳳凰堂ができたときにどういう法要が行われたか、という古文書が1000年前に残っているのです。それに基づいていろいろな研究者の人から話を聞いて、当時の法要を全部再現したのです」

(加藤)そこで人々がどういう営みを、そこでしていたかということですよね?

(牟田口)「ところがそうなるととっても大変で、関白の藤原頼道(ふじわらの・よりみち)さんという人が建てたお寺なので、当然参加していたわけです。どんな服を着ているか。ドテラではないよね。じゃあスリーピースですか。燕尾(えんび)服ですか。そんなわけはないので、こんな服というのが研究するとだんだん見えてくるわけです。そうやって衣装が大変。それからそこでお経がどんなお経だったか。さらには舞が舞われていた。そういうことがわかってくるから全部細かく再現して」

(加藤)これをスタジオで再現した。

(牟田口)「うちのテレビのAスタジオはだいたい1000平方メートルくらいある」

(加藤)かなり大きなスタジオではありますが。

(牟田口)「300坪強です。図面で引いてみると、平等院鳳凰堂もすっぽり入るのですよ。よし、これでやってやれ」

(加藤)大胆ですね!

(牟田口)「それで構想3年ですからね。いろいろな方たちを集めて、1000年前のものを再現したのです」

(加藤)人数も当時と同じ、着ているもの、持っている小道具。

(牟田口)「小道具が大変でした。例えば、開眼(かいげん)というのは何かというと、目を開くというのですよ。大仏さんに目を入れるというしぐさをするわけですよ。そのためには、筆がいるわけです。ところが開眼用の筆がどんなのかわからないでしょう」

(加藤)そうですね。

(牟田口)「小さいのだったら貧弱だし。今の筆ペンみたいなのでは困るし。すると東大寺、奈良の一番大きいお寺が、『よし、うちで使っているのを貸してやろう』」

(加藤)へえ。

(牟田口)「『大仏の開眼の筆というのがあるから、お前それを使え』とおっしゃってくれたのですよ」

(加藤)東大寺にとっては、それはそれは大切なものですよね。

(牟田口)「ところがそれはしばらく使えなかった。なぜかというと、おととし平成の大修理が奈良の唐招提寺で行われていて、天平の甍(てんぴょうのいらか)の金堂を全部解体修理して、それがおととしの11月に開眼法要をやったのです。その時に東大寺に唐招提寺が貸してと。ずっとその間が貸しっぱなしだったので返ってくるまで、僕らしばらく待たなくてはならなかった。でもそのような由緒のあるものを使わせていただいたりしています」

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(加藤)本当に映像がリアルで、時間をかけて撮られたのだろうなという印象がありましたけれどもね。この番組を手がけた牟田口さんは、今まで20年近くにわたって文化財の取材をされてきたと。日本を代表する文化財ドキュメンタリストとも聞いていますが、そもそもなぜ文化財の取材をされるようになったのですか?

(牟田口)「やはり関西ですよ。僕は“関西”という言葉は実は嫌いです。“関の西”と言うでしょう。ここは日本の中心だったので、本当は“畿内”なのです。“関西”というのはあり得ない言葉なのです。
 “関東”はあるわけです。“関の向こうの坂東武者(ばんどうむしゃ)”と言って、“田舎人”となってしまうわけです。東京から上京される人のわけです」

(加藤)なるほど。

(牟田口)「やはり都でしょう。ここで何を発信するかと言えば、僕は文化財。これでまさに21世紀、世界中の人に来てもらいたいと思うわけです。そのようなことも考えながら、20年近く、ハイビジョンでずっと関西の国宝を中心とした文化財の撮影をずっと続けてきました。この平等院はその中の一番素晴らしいものの1つだと思います」

(加藤)日本にある国宝は1000件あるのですか。

(牟田口)「そうです」

(加藤)このうち3分の2が関西にあって、さらに牟田口さんはこのうちの3分の2を取材してきたということなのですよね。

(牟田口)「9分の4ですから、だいたい400点余りなのですね」

(加藤)ただ文化財とはいっても大変古いものですし、貴重なものでしょうし、取材するにあたってこれは難しいなとハードルが高いと思われた点や、その魅力はどのようなところでしょうか?

(牟田口)「まずこれだけの撮影をずっと20年くらい手掛けてきて、私が1つだけ誇ることができるのは、事故がなかった。これです」

(加藤)撮影の事故。

(牟田口)「そう。もしこんなことをしてしまったら新聞の1面ですよ」

(加藤)例えば機材が倒れたりとか、傷が付いてしまったりとか。

(牟田口)「そのようなことはあってはならないことだし、これがなかったということは、私にとっては一番安心できることなのです。でも国宝って、日本にたくさん本尊があるのに、1000件しかないわけです。それぞれが違うわけです。それぞれがすばらしい。
 このようなものをテレビでしか見せることができないチャンスがあるわけです。なぜかというと一般の人がお寺に行っても真っ暗で、仏像なんてよく見えないし」

(加藤)実際にそうなのですよ。緻密なところも今いちわからないですし。

(牟田口)「秘仏といって33年とか、100年に1回しか見せることができない。その間どうすればいいのという」

(加藤)一生に何度見られることかという。

(牟田口)「そのようなものを僕らはたまたま見させていただいた、そのチャンスに撮影させていただいている。それを国民や世界の人に向かって、本当に素晴らしいのだよと。  僕らは見せるという義務と、伝えるというメディアを持っていますから、このような仕事はやはり続けていきたいなと思います」

(加藤)明日の番組『平安の美ふたたび』ですが、ご覧になるみなさんにはどのようなところに注目して見ていただきたいですか?

(牟田口)「今の平等院は本当に素晴らしいのです。10円玉の表のデザインになっていますから、みんな1日に何回も見ているのだけれども、いざとなったらどんな格好かよくわからないじゃないですか。あらためてもう1回テレビを見てもらって、『こんなに素晴らしいんだ』ということと、昔はもっともっと素晴らしかったということ、この2つを知っていただきたいですね。加藤さんのナレーションで」

(加藤)番組の中では道上洋三アナウンサーが案内人を務めていますので、ぜひあす朝9時55分から1時間、ぜひご覧になってください。

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